第12話 地獄の門(後編)

「……こいつは、リンフォン。極小サイズに凝縮された地獄の入り口だ」


・リンフォン!?

・極小サイズに凝縮された地獄!?

・その物語聞いたことがあるかも

・地獄の門だと言っていたね

・さっきの変なコメントも地獄からのものだったのか


 コメントの反応を見ながら大岡は考える。呪物の正体が分かった今、次にやるべきはこれがどういう物語をもつ物体なのかを説明する必要があるだろう。で、あればと大岡は自信をもって語っていく。


「リンフォンの物語はネットの掲示板が発祥だと言われているな。とあるカップルがアンティーク店で見つけた正二十面体。その正体は、私がさっき言った通り地獄の門だったわけだけど、彼らはそのことを知らない」


・マニアちゃんのお話始まった

・物語解説助かる

・ネットロアってやつか

・お店で売ってた呪物の話か~

・怖い話?


「正二十面体はRINFONEという名前で、クマの形、次に鷹の形、そして魚の形へと、変形させることができるそうだ。この正二十面体が魚の形にまで変形した時、地獄の門は完全に開くってわけだ。この話の中でカップルがどうなったのか……それは……」


・それは

・それは?

・ドキドキ

・どうなるんだ?

・ワクワク


「それは……気になった人たちで調べてほしい。ネタバレにも配慮できるマニアちゃんだぞー」


・ズコー

・話さんのかいっ!

・まあ、こういうのは自分で調べるのも楽しいよな

・俺はマニアちゃんから話を聞きたかったが

・うええー話してよー


 コメントからつっこまれると、少し申し訳ない気持ちになる。とはいえ、そういうニーズにも答えるつもりではいる。


「まあ、待つんだぞ。そういう声もあると思って、鑑定配信とは別に、怖い話を語る動画とかも出していくつもりなんだ。というか、動画をやりたいから、今回はここまで語るにとどめておくってわけ。怖い話を聞きたいって人は、ぜひそっちの動画を見に来てくれよなー」


・なるほど

・リンフォンの話は別で用意しておくってわけだね

・それなら安心だ

・マニアちゃんの怖い話期待してるからねっ

・でも気になることもあるってばよリンフォンの名前の意味とか


「リンフォンの意味か。ここがお話のキモみたいなところはあるんだが……そうだな……ヒントを語ると、こいつの名前そのものがヒントだよ。その辺も含めて、詳しくは後日公開の動画を見てくれよな」


 ひとまず、リンフォンについては、ここまでだ。大岡はその呪物をケースにしまう。時間を確認すると、配信を始めてからそこそこ経過しているのが分かった。パズルの組み立てで、結構な時間を使っていたようだ。この辺で配信をやめても良いが、少し寂しい気もする。そう思うと、大岡はまだ配信を続けたかった。


「……よし、ここからは雑談タイムだぞー。この機会にマニアちゃんに聞きたいこととか、どんどん答えちゃうからな!」


・おお!

・おおー

・質問タイム来た!

・マニアちゃんにあれやこれやを聞いても良いのか

・何でも聞いて良いんですか?


「常識の範囲内でなら大抵のことに答えるぞ。質問を募集しちゃうぜ!」


・まじか

・怖い話とか鑑定の他にも考えてるコンテンツってある?

・ゲーム配信とかやる予定ありますか?

・マニアちゃんのスリーサイズ

・質問となると迷うな


「おっと、センシティブな質問には答えないからな。で、コンテンツとか、ゲーム配信についての話なんだけれど、呪物の中にはゲームの形をしたものなんかもあるんだ。そういう変わりダネの紹介を兼ねて、呪いのゲーム実況なんかはするかもなー」


・呪いのゲーム実況w

・なんか怖そう

・ホラゲ実況よりホラーしてそう

・呪いのゲームって例えばどんなものがあるんだ?

・プレイするだけで死ぬゲームとかあるのかな?


「触るだけで死ぬ系の呪物ね。あるよ。そういうのは確かにある。有名なのだと、ゲームじゃないんだけど、見たら一週間で死ぬビデオとかがあるな。昔、映画にもなってて、知ってる人も多いと思う」


・あー

・あれか

・有名だよね

・あそこまで有名だと知ってる人も多いよね

・その映画見たよ。怖かった


「うん、あれ怖かったよね。で、呪いのゲームなんだけど、そうだな……リビアスとか……紙……あとは……スフォーチュンとか……有名なのはその辺かな」


・し、知らない……

・すまない。どれも聞いたことない

・それ一般に発売されたゲーム?

・マニアちゃんの有名は俺たちとは違う時がある

・やってみたいけど、怖そう


 大岡は、自分が有名だと思っていたゲームが世間では知名度が低いらしいことを知りショックを受けた。配信を始めてから度々、世間とのギャップを感じることがある。それは嫌というほどではないし、むしろ刺激的に思えるけれど、こういうギャップが次第に減っていけば良いなと思うのだ。


 その後も、大岡は配信を通して、リスナーとのやり取りを楽しんだ。そんな時間は日を跨ぐころまで続き、流石にそろそろ、ということで配信を終了する。別れの挨拶をする時まで、大岡にとっては充実した時間だった。


 配信の終了後、大岡はパソコンにメールが届いていることに気付く。確認すると、それは大岡にとっての先生から送られてきたものだった。

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