比類なき最強はループする~ある少年の成長と後悔の記録~
A1n_06
本編
第1話 後悔の始まり
一周目 双葉 20歳
その時の俺の強さは歴代の人間と比べてもTOP5には入り、現代に限定すれば最強と言えるほどだった。
その事実に驕る事無く出来るだけ謙虚に慢心する事無く過ごしてきたつもりだったのだが… 心のどこかで自分が一番だと、自分さえいれば他に誰もいなくともどうにかなる。そう思っていたのだろう。
その自信…いや、慢心が生んだ俺の判断ミスによって事件が起きた。
全てが無くなった。俺達の結婚式に来ていた両親、馬鹿な事で笑い合う親友、当時精神的に弱っていた俺を助けてくれた人物、皆大事な人だった…だが、俺のせいで全員死んだ。勿論、俺の最愛も……
襲撃を受け、血や臓器がそこら中に付いている式場。無残にもモンスターに食べられた遺体。そして、彼女を看取った花畑の風景。
その事を忘れた事は一度も無い。これから先も自分への戒めとして忘れる事は無いだろう。
この俺にとって最悪な事件の良い所を無理やりにでも挙げるとするならば、相手がこちら側の最高戦力である俺を潰す為に手持ちの高位のモンスターのほぼ全てをこちらに差し向けた事だろう。 これによって勝ち筋が出来た。俺がその場のモンスター全てを短時間で殺し、他の場所に救援に行くと言う勝ち筋が…
結果を言おう。俺は負けた。
他の場所に救援に行くと言うならば、例えAとSランクで構成されたモンスターの軍団とは言え、俺はある程度余力を残した状態で勝たなければならなかった。
だが、彼女の遺体を守りながらでは1050の内1048しか殺せず、残りの二体は止めを刺す前に逃げられてしまい、その二体は救援に来た二人に討伐されてしまった。
各地で裂け目の氾濫が起きている以上、瀕死とは言えこのレベルのモンスターを倒せる君達が来るべきはここじゃないと言いたかったが、その二人が最愛の友人で、彼女の安否確認に来たと分かった事で俺は何も言えなくなった。
彼女の遺体を見た二人は驚き、固まってしまった。当たり前だ。つい一時間前までは談笑していた友人がウェディングドレスを纏った晴れ姿のままの息絶えているのだから。
幸か不幸かその二人が来た事で…彼女の遺体を任せられる人が来た事で、俺は少しだけ気が抜けてしまった。
…そして、緊張が解かれた事でそれまで何とか紛らわせていた痛みと疲労が急激に襲って来た。
背骨を砕かれ、筋繊維が断裂し、アキレス腱が切れ、心臓が止まり、肺が潰れ、肋骨が折れて、関節が逆方向に曲がる。……この痛みだけならばまだ耐えられる。
だが、今の俺の体には酸素も血も水も…体を動かす為に必要な何もかもが足りない。
こんな状態だとしても最高戦力である俺がここで倒れる訳にはいかない。
俺が高位のモンスターの大群を倒し、他の戦線に合流する意味を忘れるな。
俺が立ち続けている事が何より重要であり、それさえ出来ない役立たずになる事は俺自身が許さない。
先程からずっと体の感覚は無い。意思の力だけで動いている。だが、無理をすれば動かせる。少し休めば戦う事だって――――――
「双葉さん。彼女は…舞は幸せだったんでしょうか」
必死に保っていたその意思は嗚咽交じりのその
彼女は死んだんだと、もう会うことは出来ないのだと、改めてそう実感させられた。
認めていなかった…認めたく無かっただけかもしれない。彼女が死んだと言う事実から目を背け、人々の希望たる英雄になろうとしたが、俺には無理なようだ。
現実から逃げようとしても、俺の目の前には彼女の遺体と言う分かりやすい証拠がある。
…もう良いか。
そう思った時、俺の体は前へと倒れた。
◇―――あとがき―――◇
ここまで読んでいただきありがとうございます。
もっと双葉君の曇らせが見たい!
これからの展開が楽しみ
作者に人の心は無いんか?
などと思って頂けたなら、
★評価とフォローをお願いします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます