第十六話 勇者パーティーの失墜

「あ? ババロの街に来てるの勇者様じゃねえか」

「ババロの街はくさいんじゃなかった? あんたに売るものなんてないね」


 盗賊が逃げた後、勇者クリスのパーティーに待っていたのはババロの街の住民の冷たい目だった。勇者パーティーにはろくに調理や雑用をする者もおらず、魔法使いのサラに全部押し付けていたのだ。


「リクの偉大さが分かった」

 小声でぼやくサラの呟きはクリスには聞こえていたもののスルーする。


 クソッ! リクが抜けてからうちのパーティーは崩壊ほうかい寸前だ!

 なんだって、あんな奴が抜けたくらいでこうなるんだ。

 四人は街の住民や冒険者たちの冷たい視線を感じながら、冒険者ギルドに向かう。


 冒険者ギルドに入った途端に威圧的な視線を感じる四人。

「おい。お前が盗賊ガルダをだまして使ってたっていう勇者パーティーか」


 背の高い盗賊の頭領と言われてもおかしくない顔の男がクリスをにらんでいた。

「なんだ。その態度は! 俺は勇者パーティーのクリスだぞ!」

「ああ? なんだあ、勇者ってのは冒険者ギルドマスターの俺より偉いのか?」


 ま、まずい。冒険者ギルドのマスターは敵に回してはいけない。

 勇者クリスは途端に媚びた顔になる。


「! い、いやギルドマスターなら問題ない。な、何の用ですか?」


 見ると後ろに盗賊のガルダの顔もある。

「あっしを騙してこき使ってたのはこいつらで間違いないでさあ」

「そうか。端的に言うが、ババロの街の冒険者ギルドを出禁とする」

「な⁉ 横暴ではないか!」


 勇者クリスはそれだけはまずいと抗議する。

「ああん! なら募集要項を騙って雑用係にしてもいいのか?」

「そ、そんなことはないが……どうせ低ランクの盗賊だろう。結果的に雑用係にしたとしても仕方ない」

「へーあっしの事を知らないでさあ?」


 勇者クリスが盗賊ガルダをなめていると……。

 盗賊ガルダは銀色のランクのチェーンを見せる。

 ランク別にチェーンの色が決まっていてAランクで金色、Bランクで銀色、Cランクで銅色だ。その後のランクは赤銅色と決まっている。


 つまり……。


「な! ただの盗賊がBランクだと⁉」

「そう言うことでさあ。あんた達は自分より上のランクの冒険者を雑用係に使っていたんでさあ」

「……」


 勇者クリスと聖騎士オルキッドは冷や汗をかく。

 聖女ミナミは顔を真っ青にしていた。

 魔法使いサラはもうこのパーティーに希望を感じていなかった。


「そこの聖騎士様はあっしの罠解除が遅いと武器まで突き付けましたでさあ。これは殺害未遂と同じでさあ」


「そういう事だ。そこの聖騎士様は牢屋に連れていく。奴隷落ちまではいかんが……まあ冒険者資格ははく奪だろうな」


 オルキッドはプルプルと顔を震わせ、怒っているようだ。


「さあ、お縄につくでさあ」


 他の冒険者たちに連れられて行こうというところでオルキッドは肩を掴まれるが強引に払い、冒険者ギルドを飛び出す。


「ふっ、逃げたかオルキッドは指名手配だな」

「お、俺たちはどうすればいいんだ」

「そんなの知らん。まあ、ババロの街の冒険者ギルドはもう出禁だ。出ていけ」


「ああ、そういえば、お前さんたちが追放した「ゴミ拾い」のリクはオークキングを単身で倒したらしいぞ。GランクからDランクになったらしい」


 何だって? あの戦闘力のないリクがオークキングを倒しただと?

 勇者クリスと聖女ミナミと魔法使いサラは驚く。


 詳しい話を聞こうとするが、聞かせてもらえず冒険者ギルドを叩き出される三人。


 出ていけ、クソ勇者!

 性格悪いクソ聖女なんていらないわ!

 この街じゃ誰からも相手にされねーよ!


 勇者と聖女ミナミと魔法使いサラは罵詈雑言を浴びながら冒険者ギルドを後にする。

 ババロの街の肉屋やパン屋で食料を買おうとするも誰からも相手にされない。


「わたくし、このパーティーを抜けますわ」

「私も抜ける。リクに謝る」

「わたくしはあんな「ゴミ拾い」のリクには謝りませんわ。別のパーティーに拾ってもらいますわ」


 そんな! 今この二人に抜けられたら俺のパーティーは終わりだ!


「頼む! 一緒にカミスの街に戻ろう! そしてリクを引き戻せばいいんだ!」

「お断りしますわ」

「私ももう限界。ミナミにもクリスにも」


 聖女ミナミはババロの次の街へ、サラはカミスの街に戻る道を進んで行く。


 勇者クリスは考える。何が悪かった。どこで間違いをしたと。

「ハハハハハ! 全部リクのせいだ。リクをまた雑用係にすればみんな戻ってくる!」


 その顔に勇者らしさはもうなかった。クリスは狂った笑顔でカミスの街に戻り始める。

 勇者クリスは狂っていた。


 そして、それを陰から見つめる視線が一つ。


「あいつの闇は濁っているがいい具合に使えそうだね」

 かつて、リクが戦った魔王軍幹部のヴァンパイア、ウォーリーだった。








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