第三話 リクとアナリスの夜。オークとの戦闘

「リク、レベルアップしたのね」

「うん。アナリスのお陰だよ」

「私は手伝ったけど、リクが頑張ったのよ。でも――感謝は嬉しいわ」

 アナリスの言葉は最後まで聞こえなかったが悪いことを言っているわけではなさそうだ。


「じゃあ僕は食事の準備をするね」

「食材持ってるの?」

「うん。パーティーの料理番だったから調味料と食材は持ってるんだ」


 リクが取りだしたのはスープに入れると良い出汁が出る星型のキノコ。通称星キノコだ。


 まず、リクが覚えた水魔法で水を出し、焚火で沸騰させて星キノコを煮込む。

 出汁が取れたら星キノコを取り出し、ナイフで切れ目を入れる。

 星キノコは一回煮込むと柔らかくなる。肉厚でジューシーなキノコになる。


 香草を入れて、干し肉と根菜を入れて一時間ほど煮込めば完成だ。


「助けてくれたお礼だよ。召し上がれ」

「うん……わぁ! これとっても美味しいわ!」

「そうでしょ、黒パンを浸しながら食べてみて」


 星キノコの出汁はとてもまろやかで丸みのある味だ。

 それと合わさった香草がいい加減に効いていてとてもうまい。


「これなら毎日でも食べれるわ! キノコを使うのはちょっと、って思ったけど旨味がすごく感じられる」

「へへへ。元雑用係だからね。料理はちょっと自信があるんだ」


 その後、アナリスはその細い体のどこに入るんだというくらい食べ始め、明日の朝用に作ったスープは綺麗になくなってしまった。


「リクはこんなに料理が上手だったのに追放されてしまったの?」

「うん。雑用以外は何もできなかったからパーティーから疎まれてたんだ」

「ふーん。酷すぎる人達ね」


「アナリスはエルフの里から来たの?」

「うん……私も実は疎まれてたんだ」

「え? 何で?」

「鑑定が使えるでしょ? それで皆の役に立ってたつもりだったのに、勝手に人のスキルを盗み見る不届きものだって言われたの」


「それはひどいね。それでカミスの街に来たんだ」

「うん。何か気になる気配があるなと思って探っていたら、リクが追放されるところを見ちゃったの。でも気になって鑑定したらとんでもないスキルだってわかって貴方の後を追ったの」


 その後はアークフォレストの森を先回りして、スライムの核を置いてくれたらしい。

 アナリスは優しい子だね、と言うと顔を赤くしながらもじもじするアナリス。


「その嬉しい……今まで私が気を回しても無駄なことをするなって怒られてたの」

「そんなことないよ。アナリスはとっても素敵な女の子だ」


 それをリクが真面目な顔をして言うと頬を染めて、リクに顔を背けながらも嬉しそうにガッツポーズしていた。


 だがリクはふと、アナリスは何歳くらいなのか、聞こうとしたところで……。


「リク? 何か変なことを考えたかしら?」

「言え滅相もございません」


 危うく、ドラゴンの尻尾を踏みかけたとリクは顔を青くして押し黙る。

 アナリスの顔はとてもにこやかだったのに目は一切笑っていなかった。


 リクは平身低頭で謝りまくって事なきを得る。

 女性に年の話をしてはいけないと学んだ瞬間だった。



 **



「それにしても、こんなにいい匂いがしていると魔物が寄ってくるかも」

「あ、ごめん。それは考えてなかった」

「全く、リクは――北東の方角から大きな魔物が寄ってくるわ!」


 どすどすと闇夜に森に響く足音。

 これは――まさか。


 焚火に照らされた緑色の丸々とした腹をした人型の魔物。三メートルほどの巨体。

 紛れもなくオークだ。


「オーク! どうしよう、僕、オークなんて倒したことないよ」

「リク! 落ち着いて。深呼吸して」

「スゥ―、フゥー」


「考えてみたら、リクの力を試すチャンスよ」

「うぅ、そうだね。やるしかないよね」


 落ち着け。僕は勇者パーティーの元雑用係。これより強い相手なんていくらでも見たことある。


「そう、リクいい面構えになったわね。私がサポートするからリクが頑張るのよ」

「うん。今までのスキルを全部使う!」


 リクはまず、体に身体強化(小)をみなぎらせる。

 オークは背の小さいリクを見て、ゲラゲラと笑っている。


 僕は戦闘経験さえ少ないけど、落ち着いてやれば勝てるはず!

「ゴミ拾い」の能力からゴブリンの棍棒を取り出す。


 そしてその次の行動は……ウォーターボールだ!

「ウォーターボール! ウォーターボール!」


 リクから発射された水の玉はオークを衝撃で動かすほどの威力だ。

 だが、オークは顔をしかめると手で払いながら突進してくる。

 すごい迫力だけど――遅いよ!


「俊敏(小)! 後ろに回り込んでからの棒術(小)!」

 オークの足元に滑り込み、足に棍棒で一撃!

 ウォーターボールで地面はぬかるんでいるため、オークは滑って転んでしまう。


「リク! やっちゃえ!」

「身体強化(小)からの、棒術(小)! 溜め攻撃からの一撃!」


 オークは脳天にガツンと棍棒の一撃を喰らい、倒れこんだまま動かなくなる。

「私もやるわ! ウィンドカッター! ウィンドアロー!」

「更に溜めて、フィニッシュブロー!」


 オークの頭にアナリスの風魔法がヒットし、血が流れ出したところをリクの棒術(小)が決まる。


「グオオオ……」

 オークはぼふんと煙になって消えて、オークの肉とオークの棍棒を残して消えた。


「やった! リク、貴方すごいわ!」

「アナリスが励ましてくれたおかげだよ。僕一人じゃ勝てなかった」

「途中までサポート無しであそこまで動けていたのよ。リク、貴方には戦闘の才能があるわ!」


 二人は焚火が照らす光の中でハイタッチする!

 リクとアナリスは満面の笑みだった。








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