第7話 賢者と戦士はコボルトを連れて帰る
「コボルトが何故ここに?」
「ど、どうするのです?」
コボルトは犬型の魔物だ。二足歩行で素早く動き、道具を使える賢さもある。スライムだらけの場所に近づくとは思えないが。
「もしかして、スライムに捕まってたのですか?」
「橋を覆っていたからな……下の方にいれば分からないか。」
恐らくスライムが取り込んでいたのだろう。奴が動いた事で地面に落とされた、という訳か。
「ゼェ、ゼェ……」
「びしょ濡れで呼吸も乱れてるのです!」
「分かった、回復させよう!」
カードを1枚抜き、コボルトの胸に当てる。ハイヒールで足りるといいが……。
「ハイヒール!」
身体中に魔法をかけるが、呼吸は乱れたままだ。俺はもう1枚、カードを取り出す。
「ならこれを試そう。キュア!」
「な、何ですかその魔法!?」
「不調を癒す魔法だ。全身をクリーニングすれば助かるかもしれない!」
「そ、そんな魔法まで使えるのですか……。」
俺達はカードを胸に押し当て、しばらく待つ。
「ケホッ、ケホッ!」
「スライムの粘液が喉に詰まってたんだ、もう大丈夫だぞ!」
「がう?」
「やったのです!でもセージさん、このコボルトはどうするのですか?」
「そうだな……。」
体調は良くなったが、まだまだ油断はできない。しばらくは面倒を見た方が良いかもしれないな。
「君、ちょっと聞いてくれ。」
「がう。」
「分かるかな……君は怪我をしてたんだ。俺達が治したが、まだ様子を見る方が良い。どうだ、しばらくは一緒に行動しないか?」
「がう?」
「君の体調が完全に良くなるまで一緒にいようと思うが、どうだ?」
コボルトはじっと考え込んでいる。勿論住処に帰るならそれでも構わない。自然の中が一番だからな。
「がう……がう!」
「ん?伝わった様だな。俺達と来るなら手を乗せてくれ。帰るならこのまま離れても良い。」
「がう!」
コボルトは迷わず手を乗せた。なら決まりだな。
「分かった。じゃあ一緒に行こう!俺はセージ、よろしく頼む!」
「えっ!?自己紹介するのですか!?」
「しばらくは一緒だ、言葉も通じるし挨拶位は必要だろう?」
「わ、分かりました。私はアリスなのです、よろしくなのですよ!」
「がう!がう!」
納得してくれて何よりだ。さて、早く報告を済ませよう!
「と言う事があって、無事にスライムは倒しました。これで依頼は完了です。」
俺は爆散したスライムの核を村長達に確認してもらう。普通のスライムよりも大きいから、これが証拠になるだろう。
「こんな大きいスライムを倒してくれたなんて!これでまた明日から新鮮な水を用意できる、村の生活が戻って来るんだ!」
「定期的に見回りもお願いします。スライムも小さいうちなら対処は簡単ですから。」
「ありがとうございます!本当に、本当に助かりました!」
村長さん達は次々にお礼の言葉を言ってくれる。ちょっと恥ずかしいけど、喜んでもらえたなら俺達も嬉しい!
「アリスもそう思うだろう?」
「えっ、何の話ですか?」
「す、すまん。……皆が笑っていて良かったと言う話だよ。」
「はい!私もそう思うのです!村の人達のお役に立てたのですよ!」
「がう?」
「ん、そこにいるのはコボルトですか?」
皆の楽しげな声に惹かれたのか、アリスの後ろからこっそりと顔を出すコボルト。それを見た村人達はちょっとびっくりした様子だ。
「はい。コボルトもスライムに襲われていたのです。まだ体調が不安ですから、しばらく俺達で面倒を見る予定です。」
「そうなのですね。一応相手は魔物です。気をつけて下さい!」
「ええ。では、少し休んでから帰りますね。アリス、コボルト、ちょっと休憩だ。結構疲れたよ。」
「はーい!」
「がうー!」
◇◇◇
「すっかり暗くなっちゃったのです。」
「村を出たのは夕方近かったからな。のんびり歩けばこんな物だろう。」
「がう?」
「気にしない気にしない。俺が好きで背負ってるんだ。」
「言葉が分かるのです?」
「何となく雰囲気でね。」
俺達はまた来た道を戻って街へ帰還、今日中で全部終わらせてしまおう。早く報告だ!
「ただいま戻ったのですー!」
「失礼します。依頼が終わったから報告したい、誰かいないか?」
「はーい!私が対応します!ってアリスさんとセージさん!もう終わったんですか?」
「早速確認を頼む。スライムの核は確保済みだ。」
核を提出すると、受付さんがじっと観察する。すると突然大きな声を上げた。
「これは、普通のスライムよりも大きいですよ!?もしかして大型?」
「ああ。俺達で倒したよ。」
「す、素晴らしいです!初の依頼で大手柄ですよ!おめでとうございます!」
「やったのです!これで私達の実績が一つ増えたのです!」
「ありがとうアリス、またよろしく頼む!」
「はいなのです!」
「それでは報酬をお渡ししますから、ちょっと待っててくださいね!」
「早めに頼むよ。まだ夕食を食べてないんだ。」
「後で何か買うのです!今回は奮発しちゃうのです!」
ガチャン。
入り口の扉が開いたな。俺達と同じ様に報告……
「よお!クソガキ共!随分景気が良さそうじゃねぇか!俺にも見せてくれよ!」
この男は……サイモン!
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