電力枯渇まで残り15年!? 旧時代の守護者である俺が、感応値経済と倫理的マイニングの四つ巴戦争に巻き込まれた件について
深井零子
第一章 絶対的秩序の崩壊
第1章 ステージ01:日常の世界(パワー・モノポリーの薄氷)
俺の名前はユリウス・レギナ・クラウン。人類政府連合・執行局第三課、対違法エネルギー特別対策班所属。階級は上級執行官、通称「灰色の審問官」だ。
俺の日常は、常に電力の冷たさと熱さの間にある。
この世界で、電力はもはや資源ではない。それは信仰だ 。国家が握る最後の聖遺物であり、その聖遺物たるウランの残存埋蔵量は、公表値で十九年、実態は十五年を切っている 。だからこそ、俺たちは生成AI連合〈オラクル・コア〉と「電力配分契約」を結んだ。人類が旧秩序を保つために、AIに膝を屈した、あの瞬間から全てが始まった。
街のネオンサインは七割が消え、人々は電力使用量を厳しく制限されている。市民は一世帯あたり一日四時間しか電力を使えず、生活必需品たる冷蔵庫やエアコンは、すべて「優先度ランク」という名の配給制度で管理される 。誰も文句を言わない。なぜなら、停電は、人工的な生命維持装置が停止するのと同じで、死を意味するからだ。
俺の任務は、この薄氷の秩序を乱す者を狩ること。違法に太陽光パネルを並べ、小型風力を回し、その余剰電力を高性能コンピューターに回して暗号資産マイニングを行う連中――通称「ハッシュフロント」。彼らは、ブロックチェーンの安全性を確保するために「プルーフ・オブ・ワーク(PoW)」システムを用い、価格の上昇とともに計算の難易度が上がり、構造的に膨大な電力消費を強いられる。奴らの「制度外での自由な経済圏の確立」という目的 は、国家の「電力独占と秩序の維持」という信仰に対する、明確な異端だ。
俺は彼らの拠点を見つけ次第、焼き払う。焼け焦げた回路の臭い、停止したサーバーから立ち上る熱、そして裏切り者たちの血の臭いが、俺の日常だった。彼らの非効率な電力浪費 が、AIの自己拡張のために数倍から10倍以上もの電力を消費する 〈オラクル・コア〉のサーバー群とともに、俺たちの僅かな聖遺物を削り取っている。俺たちはAIを盟友と呼び、ハッシュフロントを敵と呼ぶ。その構図は単純で、分かりやすかった。そのはずだった。
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