第十一話:地球での「視察」と「地球最高の快楽」
――東京・新宿・超高級理髪店
ダイキチの旅の目的は戦略的撤退という名の「横着と贅沢」による日本への旅行なのだ。
その第一歩として、ガンドの「快適な男」への改造手術が、新宿の超高層ビル最上階に位置する会員制メンズグルーミングサロンで始まる。
ガンドは理容椅子の感触に戸惑っているが、ダイキチは隣の椅子に腰を下ろしてガンドに語り掛ける。
「おい、ガンド。ここは『男性の美容サービス』が極まった場所だ。異世界の貴族どもの美容術など、この地球の洗練された快楽の前では、石器時代の呪いみたいなもんだ。心ゆくまで堪能しろ」
ガンドは理容師の巧みな技術に目を丸くする。
「は、ははっ…主さまの故郷は、本当に魔力なき『チートの王都』で驚きますぜ」
最新のシェービング、ヘッドスパ、フェイシャルケア…熟練の技術は、戦闘奴隷として凝り固まったガンドの全身を解きほぐしていく。
一時間後、鏡に映ったのは、もはやゴリラのような髭面ではない、精悍で洗練された、高級スーツが似合う男だ。
「よし、完璧だ。これで、最高の『文化体験』に連れて行ける。シーナとミリアもたのしんでるかな?」
――新宿・高級デパート&エステティックサロン
同じ頃、シーナとミリアは、ダイキチから与えられた無制限のクレジットカードを手に、新宿の老舗高級デパートの外商専用フロアで、地球の「美」を徹底的に研究し、体験していた。
二人の目的は、『サロメ』で提供する美容技術を完璧にするための「視察」である。
「このブランド品の布地と精巧な裁縫技術…。異世界の王都の貴族服が、子供のお遊戯に見えるわ」
ミリアが高級ドレスの仕立てに感心する。
「ええ。そして、この美容院の技術です」
シーナは、最新のトリートメントで艶を取り戻した髪を指で梳いた。
「若返りの秘術(地球の最新美容機器の応用)に、この一流のハンドテクニックとサービスを組み合わせれば、貴族の奥方様はもう『サロメ』なしでは生きられなくなります」
その後、二人はスイート仕様の高級エステティックサロンへ。
「地球最高の若返り技術の体験」という名目で、最新の美容機器と熟練セラピストによる贅沢な施術を心ゆくまで受けた。
「ふふ、これで『若返りの秘術』が、さらに強力となるわ。ダイキチ様に依存する貴族が増えれば、面倒な刺客の動きも鈍るでしょう」
ミリアとシーナは、贅沢な体験とブランド品の買い物を楽しみながら、ダイキチの緩い生活を守るための戦略的な情報収集を怠らなかった。
―― 新宿・極上の夜の社交場
夜。仕入れを終えたダイキチは、変貌したガンドを連れて、都内随一の超高級な夜の社交場へと向かった。
案内されたのは、誰にも邪魔されない洗練されたプライベートルーム。
ダイキチは極上のサービスに深く感銘を受け、ガンドに語りかけた。
「おい、ガンド。驚いたか? 正直、異世界の娼館も悪くない。荒っぽくて生命力に溢れている」
「は、はい。ですが、ここは……まるで夢のようですぜ」
ダイキチは目を細め、興奮を隠さずに続ける。
「日本の風俗は最高だ! といっても俺もこんな超高級なのは初めてだったわ。異世界では、娼館は『生活の手段』でしかない。だが、ここは『快楽の追求』と『完璧なサービス』を追い求める純粋な科学であり芸術だ!」
ダイキチは、頭の中で新しい楽しみを構築し始めていた。
「よし、決めた! 異世界の男たち、特にガンドのようなむさい連中にも、この『最高の快楽』を味わわせてやりたい。この地球の洗練されたノウハウを応用して、超高級な夜の快楽を提供する店を異世界に作るぞ。異世界を最高の快楽で満たしてやる!」
ダイキチは、チート能力強奪を企む国家の刺客の存在すら忘れ、新たな「ビジネス」の青写真を描くことに夢中になっていた。
だが、ダイキチも一緒に遊んできたことをミリアとシーナに知られ、計画は破棄された。
それをダイキチに聞いたガンドは、咽び泣いたという。
――東京・秋葉原・秘密の「仕入れ」
翌日ダイキチは、昨日の快楽の余韻を楽しみながら、異世界で販売する商品の仕入れを行った。
場所は、昨夜の快楽とは真逆の、秋葉原の電気街だ。
「さあ、お遊びは終わりだ。王都の騎士団や暗殺者が相手なら、物理的な戦闘力は俺の『災厄の賢者』の魔法で事足りる。だが、『面倒』を避けるためには、科学の目が便利で簡単だ」
ダイキチがアイテムボックスに収納したのは、シーナとミリアの助言に基づいた対刺客用チート機器だ。
監視ドローン: ログハウス周辺の上空を自動巡回し、魔力探知と熱感知を行う。
ポータブルセンサー網: 赤外線、超音波を組み合わせたセンサーで、ログハウス周辺の侵入者を察知する。
超高性能ソーラーパネルと蓄電池: 異世界での電力供給を完璧にするためのセット。
「これで、ログハウスは『見えない魔法と、科学の目』で守られた、難攻不落の横着要塞となる。刺客どもがフロンティアに着いた頃には、俺は温泉でビールでも飲んでいるさ」
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