鈍色の浸蝕者
加持稜成
プロローグ
私は何故、生かされた?
私は何故、この世界に戻されたのか?
奴らは何も言わない。
だけど奴らは私をずっと監視している。
その証拠に私の視界の隅には、何かの黒い点が常に映り込んでいる。それがいつからそこに居たのか分からない。そもそもずっと居続けていて、それに私が今頃になって気が付いたのか、或いは、あの日を境に視界に潜り込んだのか、今となっては知る由もない。
澄み渡る青空、肌にそよぐ優しい風。どんなに心地よい陽射しが大地を包んでも、それは私にとってはただのまやかし。この現実にとって、私は『現実』ではない。あくまで異端。
その優しさは私へ向けられたものではない。
柔らかな風と共に、不意に下腹部に傷みが走る。その痛みに私は戦慄する。
薄れ行く記憶の狭間に、確かに存在する不安と恐怖。それはきっと永遠に晴れる事は無い。
私は独り、その恐怖に唇を噛みしめる……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます