第37話 三貴神召喚
赤の世界を月宮学園の全校生徒が放浪している。
その行く手を阻むように進軍してくるのは悪魔の軍勢。
軍勢の大半は先行しているアゲハの輝く一振りで壊滅するが、死を恐れぬ残党は愚直に突撃を続行してきていた。
「霊装展開――
突撃してくる残党に対して、全校生徒の先頭を進んでいたアゲハそっくりの軍服少女ミズハが光り輝く。すると色鮮やかな着物を何重にも重ね着したような霊装を身にまとい。腰のサーベルを引き抜きながら宣言する。
「三貴神召喚――スサノオ・ツクヨミ・アマテラス」
強大な魂達がこの場に招かれる。呼び水のように彼女が身につけている着物の内、緑と紫と白の色彩が輝けば、同じ色の光柱が降り注ぎ人型を成した。
『なんだぁ? ずいぶんと大人数でお楽しみじゃねぇか! 良く見ればアゲハまで暴れてらぁ! お祭りかぁ!? お祭りなんだな!?』
『うぅ……。ごめんね……。人間より弱い太陽神でごめんねぇ……』
『お姉様、ヘラるのは程々にしてください。我々を召喚したミズハに恥をかかせるつもりですか? お姉さんに良いところを見せたいミズハのために頑張ってください』
現われたのは
身の丈よりも長い太刀を携えた男神は
携えた鏡をジッと見つめる女神は輝く
三柱もの神々を呼び出した代償か、ミズハは胸を押さえながら表情を歪めた。
「うぐっ……
彼女が早口で願いを告げると、神々は快く応じる。
『任せな!
『わたし神様なのに雑魚狩りばっかり得意でごめんねぇ! 雑魚専って呼ばないでね!? 頑張るからね!』
『つれないなぁ。同じく姉を敬愛するモノとして、僕はミズハの気持ちを代弁してあげているのに。ふふふ……お礼は熊屋の
「邪悪をっ! 祓いたまえ!」
快く……重ねての願いに快く応じた神々が権能を振るう。
男神が刃を振り抜けば、いかなる理によるものか悪魔達の手足が平等に一本ずつ切り落とされた。
女神の鏡が輝くと、手足を失った悪魔達諸共に鏡の照らす大地が炎上する。
笑顔を深めた神が禍々しい刃を振るった瞬間、燃えさかる炎が鏡写しのように広がってゆき周辺を焼き尽くす。
「さっすがはミズハ! もう三貴神をまとめて呼び出せるようになったんだね! 凄いよ!」
「前任が前任だったし、一部からは少々舐められているけどね……」
火炎地獄から普通に徒歩で出てきた怪物巫女の称賛に対して、ジト目で応じるミズハ。
その返答に目を見開いて驚き、ゆっくりと目を細めたアゲハは静かに呟く。静かな声音からは絶対的な決定事項を告げる無慈悲さがにじみだしている。
「……少しお話が必要かな。現世に帰ったら十二神参りにいかなきゃ」
「姉さん? 何か言った?」
「この冥界渡りが済んだら旧友の顔を見てこようかなって!」
「冥界渡り……姉さんはハルカと一緒に何度も冥界渡りから生還しているのでしたね」
「ハルちゃんの護衛をしていたら日常茶飯事だったよ! あれ? ミズハはあんまりこっちに来たことないかんじ?」
「訓練として天宮家の協力神に何度か連れてきて貰っただけですね。敵対的な神隠しは
「あぁ~。暗雲は過保護だからね。善意が裏目に出ちゃうところもアイツらしいなぁ」
何かを思い出すように目を閉じたアゲハ。
彼女はウンウンと頷いて、実力ある妹に冥界渡り経験が少ない理由を察したようである。
ようやく前進を始めた生徒達を振り返ったミズハは、眉をハの字にして姉に問いかける。その様子は彼女が持つ力に対して、あまりにも自信がなさげであった。
「姉さん。この人数を連れての冥界渡り、犠牲無しで超えられると思いますか?」
「無理だね。少なくとも百回は死ぬと思うよ!」
「っ!」
酷薄な断言に息を呑んだ妹に対して、アゲハは安心させるように微笑みながら続けた。
「大丈夫! ハルちゃんには奥の手があるからね!」
「姉さん……。流石のハルカでも百回もアレは使えないです。十回……いや二十回ならいけると思いますが、それ以上は……」
「ふっふっふ! だいじょーぶ! お姉ちゃんに任せておきなさい!」
妹の不安を笑い飛ばした彼女は、燃えさかる大地ごと押し寄せる悪魔を切り払いながらズンズン進んでいく。
尽きることない炎に灼かれて
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