第4話


カフェの一角には、ゆったりとしたソファや木製のテーブルが並び、温かい光が水面のように柔らかく差し込んでいる。心地よい音楽が背景に流れ、静かな時間が流れていた。その空間には、ひかりとリナの二人が、ミニコンサートの準備に取り組んでいる。


リナは、楽しそうにソファの上で身を乗り出した。彼女の目がキラキラと輝き、「この曲が…いいと思う。」と少したどたどしく提案する。リナが選んだ曲には、故郷の思い出が水のように流れ込んでいる。


「えっと、私の故郷は、すっごく遠い国、海外に…あるの。」リナは自分の故郷の情景を思い描きながら、言葉を選ぶように続ける。「毎年夏、お祭りの時は、町が…カラフルになって、すごく、にぎやかに…なるんだ。提灯が揺れて、夜になると、みんな集まって、温かい雰囲気が流れるの。」


彼女の言葉には、思い出の波が押し寄せるように、喜びと懐かしさが混ざり合う。リナはさらに思い出を語り始める。「おじいちゃんが…作った素敵な曲を、家族や友達と一緒に歌ったことがあるんだ。その時のこと、すごく覚えてる。みんなで…輪になって、ハーモニーを奏でるのが…ほんとに楽しかった!あの瞬間が、心にずっと残ってる。」


ひかりは、リナの話を聞きながら、その情景が水の中でゆらゆら揺れるように浮かび上がる感覚を抱いた。リナの目の輝きから、彼女の思い出の深さを感じ取る。


「それに、他の国の言葉で…歌ったお母さんの声も、本当に特別だった。」リナは言葉を選びつつ、愛情がこもった声で続ける。「彼女が歌うと、どんな時でも…私を、元気づけてくれたの。まるで、優しい波に包まれるみたいな感じ。音楽があったから、心がいつも…ほっこりしてたんだよね。」


ひかりの心にも温かい感情が広がる。リナは、言葉を慎重に並べながら続けた。「今はもう、あの故郷には家族がいないけれど…あの思い出が、私の力になってる。あの歌を聴くと、まるで…家族が近くにいるみたいで、心が温かくなるの。」


リナの情熱的な語りに、ひかりは心を打たれた。リナは最後に微笑んで言った。「だから、私たちもこのコンサートで、みんなを…笑顔にできたらいいな。音楽の力を信じて、一緒に歌えば、きっと特別な…何かが生まれると思うんだ。」


その言葉に、ひかりも強い共感を覚える。音楽が二人の心を結びつけ、この瞬間が特別なものになることを感じながら、彼女はリナに微笑み返すのだった。


(続く)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る