意味がわかると怖い話

朔舞璃月

第1話 - 地縛霊

学生ってさ、お金がないもんでしょ?


いくら親に仕送りしてもらってるって言っても、結構、生活がカツカツなんだよね。


まあ、バイトでもすれば、いいんだろうけど、やっぱ、面倒くさいし。


となれば、やることは一つ。


出費を削減することだ。


そこで思いついたのは、家賃が激安のところに引っ越すというもの。


で、偶然、ビックリするくらい安い所を見つけた。


前のところと比べて、2万も安いんだよ。


学生の身分からすると、月2万円浮くのは、かなり嬉しい。


だけどさ、そういうところって、あれなんだよね。


そう、事故物件。


俺が借りた部屋は、かなりヤバいらしくて、何人も亡くなってるらしい。


でもさ、幽霊なんて結局は気持ちの持ちようでしょ?


気にしなければいいんだからさ。


それに近くの人に聞いてみたんだけど、部屋に出るっていう幽霊が、住む人によって違うっていうんだ。


ある人は、髪の長い若い女っていてて、その後は、中年の男、その次は子供だってさ。


うーん。これはもう、嘘以外ないでしょ。


そんなにコロコロ変わるわけないじゃん。


ってことで、俺は気にせずに生活してたってわけ。


まあ、そりゃ、時々、変な音がしたり、物の場所が変わってたりしたけど、無視してたんだ。


別に物凄い害があるわけじゃないし。


でもさ、それが段々、無視できなくなってきたんだよ。


変な音も、眠れないくらいうるさくなってきたし、物が無くなったり、買った覚えのない物が出てきたり。


寝てるときに上から物が落ちてきたときは、正直、死ぬかと思ったね。


だから、あるとき、友達の知り合いに霊能力者がいるっていうから、格安で見て貰ったんだよね。


そしたら、やっぱり、地縛霊がいるんだって。


その人がいうには、なんか特殊な地縛霊らしくて、誰かを身代わりにするまで、その場に縛られて、成仏ができないらしい。


だから、この部屋に住んでる俺を、あっちに誘おうとしてるって話。


さすがに安い料金じゃ、除霊まではしてくれなかったけど、霊から身を守る方法は教えてもらった。


それをすれば、しばらくは大丈夫だから、その間に新しい部屋を探しなさい、だってさ。


でもさ、それをやれば大丈夫なら、引っ越す必要はないんじゃね?


とにかく、俺はその夜、さっそく、その方法をやってみることにする。


まずは、体を清めるってことで、体に塩を塗り込んでからシャワーで流す。


で、次に……って、あ、バスタオルねーや。


とりあえず、ハンドタオルでささっと拭いて、と。


次は部屋の中央に日本酒と盛り塩を置く。


最後に部屋を真っ暗にして、祈ればいい。


簡単だ。


だけど、テレビが付けっぱなしだった。


だからリモコンを探したんだけど、見当たらない。


ちょっと、イラっとして、テレビのコンセントを引き抜いてやった。


そしたらさ、いきなり、バチンって音がして、部屋の中が真っ暗になったんだよね。


多分、ブレーカーが落ちたんだと思う。


まあ、真っ暗にしなきゃならないからちょうどよかった。


で、幽霊に、手出しするなって祈ったんだ。


そしたらさ、ビックリするくらい止んだわけ。


変な音もしないし、物が無くなったりもしなくなった。


いや、ホント、快適。


もっと早くやればよかった。


……って、思ってたらさ。


再開したわけ。


今度はさ、ハッキリと姿も見せてくんの。


俺くらいの年の男。


はー、面倒くせえ。


また、あの除霊をやらないとなぁ。

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