◆お弁当屋さんにいる幽霊◆
茶房の幽霊店主
第1話 とある町のお弁当屋さん。
※(マシュマロからの匿名投稿です)
※(プライバシー保護のため地域・固有名詞などは伏せています)
※※※※※
6年間勤めたお弁当屋さんでの出来事です。
町で有名なお弁当屋さんはコロナ禍を乗り越え今年で20年です。
パートとしてこのお店で働いていたのですが、 他のパートさんたちの間で「この店には幽霊がいる」という噂話が されているのは知っていました。〔白い人と黒い人がいる〕〔母親とその子供の幽霊が出る〕というものです。
『白い人はいいけど、黒い人に会ったら事故に遭ったりケガをする』
『〇〇さんは倉庫で、親子の幽霊が手をつないで立っているのを見たらしい』
私は幽霊を信じていないので、他のパートさんたちの言う話を気にも留めず日々業務をこなしていました。
3年ほど経過しましたが何も起こらず、昼のピークタイムが過ぎ、学生アルバイトさんと休憩室で一息ついていた時です。
“トントントントントン!”
厨房からまな板を包丁で叩く音が響きました。
今いるメンバーは私とアルバイトさんだけです。厨房は無人のはずなのです。
強めの音が聞こえてきたので二人で顔を見合わせ様子を見に行くことにしました。当然、誰もいません。
まな板もすべて洗って殺菌してから立てられていますし、包丁も大きなボールに消毒液で漬け置かれています。
『さっきの何?』
『包丁の音がしていました』
『包丁を使うなら仕込みの用意をしておいて欲しいわ!』
二人とも不気味な雰囲気をごまかすため大声で笑い合いましたが、追及しないまま作業に戻りました。
ある年の夏、夕方の16時過ぎ、夜のピークに備えお米の準備をしていた時です。
『すみませーん!』
女性がカウンターの向こうから呼んでいる声が聞こえ、
『はい!少々お待ちくださいませ』と厨房からカウンターへ移動しました。
誰もいません。 確かに女性の声を聞いたはずでしたが姿はなく、再び作業をしていました。
『さっき、すみません、って聞こえなかった?』
大ベテランの△さんが声をかけてきました。
『空耳かと思っていたのですが、△さんも聞こえました?』
『もしかしたら、お客さんが来ていたけど、そのまま帰られたのかも』
『10秒も待たせてないですよ。せっかちですよねぇ』
△さんに逆らうと後が怖いので、会話するのを止めてその日の業務は終わりました。
それから夕方のシフト16時を少し過ぎると必ず、『すみませーん!』と従業員を呼ぶ声が聞こえるようになり、 『はい!』と返事をしてカウンターへ向かうのですが、誰の姿もないことが続きました。
そして、大ベテランの△さんも呼び声を聞いていました。
『店内で流している有線ラジオの音では?』
ラジオ局を変えて音楽のみにしてみたのですが、夕方に一瞬だけ客足が途絶え16時を少し過ぎると、呼び声が聞こえるので不思議がっていました。
お弁当屋さんを辞めるまで声しか聞いたことがなかったのですが、パートさんの間では今も幽霊を見たという噂はされているそうです。
※※※※※
※(ここからは【お弁当屋さんにいる幽霊】の考察です)
『幽霊を信じていない』とはっきり書かれていたのですが、 匿名様から“音”や“声”を聞いたお話をいただきました。
外国でよく、Bar、パブ、カフェなど 、お酒の提供や飲食可能なお店に現れる幽霊のお話があります。
亡くなった元常連さん、もしくは場所が気に入って居座る者など様々なようです。
“ゴースト”がいる飲食店は繁盛する、もしくは細々であっても 潰れることがないと言われています。幽霊が縁起物とされているとか。
このお弁当屋さんも20年商売をされていて、今現在も同じ場所でお弁当を提供し続けているようです。
でも、仕事中に呼ばれるのはちょっと迷惑な気もします。
もしかしたら、その声の主はいつかの元常連さんで、今もお弁当を買いに来ているのかもしれません。
長年お勤めの従業員さんからの被害報告もないようですので、たぶん昔からいるだけなのでしょう。
音や声が何であるかは不明ですが、お弁当屋の一員(?)
として一緒にお店を見守ってくれているといいですね。
◆お弁当屋さんにいる幽霊◆ 茶房の幽霊店主 @tearoom_phantom
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます