短編。

@rufuma

幼馴染と、いつも通りじゃない日常。

 放課後、家に帰ると、美羽は当然のように俺の部屋に居た。

 ゲーム機を勝手に起動し、勝手に座り、勝手にくつろぐ。


「続き、やりにきたよー。」

「……おまえさぁ、家に帰れよ。」

「やだよ、遠いじゃん。」

「お前んち、すぐ隣だろ。」

「その分、歩かないとじゃん?」


 そんな、くだらない事を言い合う毎日。

 これがいつもの日常だ。


 美羽はコントローラーを持ったまま、じっと画面とにらめっこをしている。


 俺はベッドに寝転がりながら、何気なく呟いた。

「⋯⋯彼女ほしーなー。」

「へー……。」

「⋯⋯へーじゃないだろ。」

俺がツッコむと、美羽はしばらく黙った後、

「⋯⋯だってさぁ、アンタに彼女ができたら、ここ来れなくなるじゃん。」

 と言った。

 普通に不満そうだ。


「じゃあお前も、彼氏作ればいいじゃん。お前、結構男子から人気あるぞ?」

「……。」


 美羽はしばらく黙っていた。

 次の瞬間、何かを思い立ったように立ち上がり、すっと俺の方へ来る。


 そして、そのまま俺の膝の上に座った。


「ちょ、おまっ……!」

「いいじゃん別に。減るもんじゃないし。」


 背中越しに小さく息を吐いて、彼女はぽつりと言う。


「私はさぁ、⋯⋯あんたと遊ぶ時間のほうが大事なの。」


 それだけ言うと、美羽はまたコントローラーを握り、淡々とゲームを再開した。

 俺の膝の上に座ったまま。


 鼻をくすぐる、甘い香りが。


 コイツ、こんなに小さかったのか。


 俺は、気を紛らわせるように言った。


「⋯⋯画面が見えねぇ。」

「何か問題あんの?」


 俺は、大人しくする他なかった。


 ふと見ると、美羽の耳が真っ赤に染まっていた。

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