第17話 ​🥊 二つ目の異物、岩手の拳

 1. 政宗への決意と奥州の乱れ

​ 神崎亮平は、野辺地戦争での片倉小十郎の勝利と、津軽為信の独立を見届け、自らの役割を伊達氏の**「龍の牙」**へと定める決意を固めた。彼は、**梵天丸(伊達政宗)**を指導し、その天下統一の野望を加速させることで、自らの生存と未来への帰還の道筋を確保しようとしていた。

​ 神崎は、米沢城へ戻るため、奥州街道を南下していた。彼の腰には、ニキータの銃の部品と自らの拳銃の部品を統合し、「二丁拳銃」の製作を目指すための素材が収められている。

​(津軽も、もう大丈夫だ。為信は俺の教えを使いこなすだろう。次は政宗だ。奴の野心と、俺の知識があれば、織田信長が死んだ後の天下は、奴のモノになる)

​ しかし、奥州は一刻の猶予もないほど混乱していた。津軽での戦闘が終結した天正年間、南部氏と伊達氏の勢力圏の狭間、陸奥と出羽の国境では、小さな戦が日常茶飯事となっていた。

 2. 岩手からの跳躍者、武蔵坊猛

​ 神崎が、現在の岩手県付近を通過していた時、山間の小さな砦を巡る伊達勢と南部氏に味方する豪族との激しい戦闘に遭遇した。

​「チッ、まただ。こんな小競り合いに時間を割いていられるか」

​ 神崎は戦闘を避けようとしたが、その時、戦場の真ん中で、異様な光景を目撃した。

​ それは、南部勢の最前線。一人の男が、刀や槍を持たずに、素手で、伊達勢の武者たちを次々と打ち倒していた。

​ その男は、神崎と同じく現代の服装――着古したTシャツとカーゴパンツのようなもの――を纏っており、髪型は短く刈り込んであった。体躯は神崎よりも一回り大きく、分厚い胸板と、異様に発達した肩と腕の筋肉を持っていた。

​ 武者の槍を軽々と払い、甲冑の上から放たれた強烈な拳打は、武者を数メートル後方に吹き飛ばす。まるで人型の重火器のようだ。

​「まさか、また…異物か?」

​ 神崎は驚愕した。ニキータに続いて、また一人、未来からの人間がこの時代に現れたのだ。

​ その男は、伊達勢の武者を打ち倒すたび、荒々しい息遣いで、かすれた声で叫んだ。

​「くそっ! いつまで経っても、この時代に慣れねぇ! ボクシングは、こんなもんじゃねえだろ!」

​ 男が、岩手訛りの混じったような荒々しい言葉で**「ボクシング」**という現代のスポーツ名を口にした瞬間、神崎は確信した。

 3. 武蔵坊猛との接触

​ 神崎は、自動拳銃を構え、戦闘の混乱に乗じてその男に接近した。

​「おい、そこのボクサー! お前、未来から来たんだろ!」

 神崎は現代の日本語で大声で問いかけた。

​男は、神崎の姿と、彼の口にした**「未来」**という言葉に、驚きで動きを止めた。

​「あんだ、だれだ(お前、誰だ)…その変な銃、持ってるってことは…まさか、おめもか(お前もか)!」

​ 男は、自らが岩手出身の元プロボクサーで、名を**武蔵坊 むさしぼうたける**と名乗った。

​「俺は神崎亮平。お前と同じ、時代の迷子だ。なぜこんなところにいる」

​ 武蔵坊猛は、額の汗と血を拭い、荒々しい息を整えた。

​「おれは…時の実なんてモンじゃねぇ。ボクシングの試合直前に、稲妻に打たれて気が付いたらここにいたんだ。なんでか知らねぇが、体力が尽きねぇ! 打たれてもすぐ治る! だからよ、飯を食うために、南部勢の用心棒をしてるんだ」

​ 武蔵坊猛は、時を跳躍した原因は不明だが、その代償として驚異的な自己回復力と無尽蔵の体力という、超人的な身体能力を得ていたのだ。彼の肉体は、この戦国時代においては、**最強の「生体兵器」**そのものだった。

​「チッ、今度は肉体系のチート野郎か…」

​ 神崎は、魔弾という外部兵器の力を持つ自分と、肉体そのものが兵器である武蔵坊猛という、対照的な二人の「異物」が、奥州で邂逅したことに、運命的なものを感じた。

​「猛。俺は伊達氏の客将だ。お前は南部側にいる。俺と組むか、それとも、この場で未来の同胞として戦うか、決めろ」

​ 神崎は、二丁拳銃製作の素材である拳銃を抜き、武蔵坊猛に向けた。

 承知いたしました。物語に新たな登場人物、岩手出身の元ボクサーの傭兵、**武蔵坊 猛(むさしぼう たける)**を投入します。

​神崎亮平は伊達政宗への指導を決意し、彼が「龍の工房」へ向かう途上、奥州の新たな戦場で、二人目の「未来からの異物」である武蔵坊猛と遭遇する展開を描きます。

​🥊 第十七章:二つ目の異物、岩手の拳

​1. 政宗への決意と奥州の乱れ

​神崎亮平は、野辺地戦争での片倉小十郎の勝利と、津軽為信の独立を見届け、自らの役割を伊達氏の**「龍の牙」**へと定める決意を固めた。彼は、**梵天丸(伊達政宗)**を指導し、その天下統一の野望を加速させることで、自らの生存と未来への帰還の道筋を確保しようとしていた。

​神崎は、米沢城へ戻るため、奥州街道を南下していた。彼の腰には、ニキータの銃の部品と自らの拳銃の部品を統合し、「二丁拳銃」の製作を目指すための素材が収められている。

​(津軽も、もう大丈夫だ。為信は俺の教えを使いこなすだろう。次は政宗だ。奴の野心と、俺の知識があれば、織田信長が死んだ後の天下は、奴のモノになる)

​しかし、奥州は一刻の猶予もないほど混乱していた。津軽での戦闘が終結した天正年間、南部氏と伊達氏の勢力圏の狭間、陸奥と出羽の国境では、小さな戦が日常茶飯事となっていた。

​2. 岩手からの跳躍者、武蔵坊猛

​神崎が、現在の岩手県付近を通過していた時、山間の小さな砦を巡る伊達勢と南部氏に味方する豪族との激しい戦闘に遭遇した。

​「チッ、まただ。こんな小競り合いに時間を割いていられるか」

​神崎は戦闘を避けようとしたが、その時、戦場の真ん中で、異様な光景を目撃した。

​それは、南部勢の最前線。一人の男が、刀や槍を持たずに、素手で、伊達勢の武者たちを次々と打ち倒していた。

​その男は、神崎と同じく現代の服装――着古したTシャツとカーゴパンツのようなもの――を纏っており、髪型は短く刈り込んであった。体躯は神崎よりも一回り大きく、分厚い胸板と、異様に発達した肩と腕の筋肉を持っていた。

​武者の槍を軽々と払い、甲冑の上から放たれた強烈な拳打は、武者を数メートル後方に吹き飛ばす。まるで人型の重火器のようだ。

​「まさか、また…異物か?」

​神崎は驚愕した。ニキータに続いて、また一人、未来からの人間がこの時代に現れたのだ。

​その男は、伊達勢の武者を打ち倒すたび、荒々しい息遣いで、かすれた声で叫んだ。

​「くそっ! いつまで経っても、この時代に慣れねぇ! ボクシングは、こんなもんじゃねえだろ!」

​男が、岩手訛りの混じったような荒々しい言葉で**「ボクシング」**という現代のスポーツ名を口にした瞬間、神崎は確信した。

​3. 武蔵坊猛との接触

​神崎は、自動拳銃を構え、戦闘の混乱に乗じてその男に接近した。

​「おい、そこのボクサー! お前、未来から来たんだろ!」神崎は現代の日本語で大声で問いかけた。

​男は、神崎の姿と、彼の口にした**「未来」**という言葉に、驚きで動きを止めた。

​「あんだ、だれだ(お前、誰だ)…その変な銃、持ってるってことは…まさか、おめもか(お前もか)!」

​男は、自らが岩手出身の元プロボクサーで、名を**武蔵坊 猛(むさしぼう たける)**と名乗った。

​「俺は神崎亮平。お前と同じ、時代の迷子だ。なぜこんなところにいる」

​武蔵坊猛は、額の汗と血を拭い、荒々しい息を整えた。

​「おれは…時の実なんてモンじゃねぇ。ボクシングの試合直前に、稲妻に打たれて気が付いたらここにいたんだ。なんでか知らねぇが、体力が尽きねぇ! 打たれてもすぐ治る! だからよ、飯を食うために、南部勢の用心棒をしてるんだ」

​武蔵坊猛は、時を跳躍した原因は不明だが、その代償として驚異的な自己回復力と無尽蔵の体力という、超人的な身体能力を得ていたのだ。彼の肉体は、この戦国時代においては、**最強の「生体兵器」**そのものだった。

​「チッ、今度は肉体系のチート野郎か…」

​神崎は、魔弾という外部兵器の力を持つ自分と、肉体そのものが兵器である武蔵坊猛という、対照的な二人の「異物」が、奥州で邂逅したことに、運命的なものを感じた。

​「猛。俺は伊達氏の客将だ。お前は南部側にいる。俺と組むか、それとも、この場で未来の同胞として戦うか、決めろ」

​ 神崎は、二丁拳銃製作の素材である拳銃を抜き、武蔵坊猛に向けた。

​ 猛の脳内に3つの選択肢が出来た。

​ ①神崎の提案を受け入れ、伊達氏に合流する。彼の超人的な肉体と神崎の知識が融合する。

​ ②神崎の誘いを蹴り、南部の用心棒としての戦いを継続し、神崎と敵対する。

​ ③第三の勢力として、南部氏からも伊達氏からも離反し、自らの力を利用して岩手に独立勢力を築く。

 

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