第4話 🌪️ 鎌倉への道、大光寺の疾風
1. 南下の決意
神崎は、十三氏の末期を遠巻きに見届けた後、単独で南下する道を選んだ。彼の目標は、来るべき時代の大乱を有利に生き抜くため、「魔弾の力」を最大の権力に売り込むこと。鎌倉幕府こそが、その取引相手としては最も効率が良いと考えたからだ。
荒涼とした奥州街道を、傭兵としての知識と体力だけで進む。彼のジャケットは泥と埃にまみれていたが、内側の拳銃だけは常に清潔に保たれていた。
「1333年の鎌倉幕府滅亡まで、あと数年。それまでに、俺は幕府の要人に取り入る必要がある」
彼が時の実で得た「知識」と「力」は、この時代の全てを覆せる可能性を秘めている。
道中、神崎は追剥や賊徒に襲われることがあったが、魔弾の力は圧倒的だった。
パァン! → 命中した賊徒が風船のように膨張し、破裂。(質量増加)
パァン! → 命中した地面から巨大な水晶の杭が突き出し、敵を貫く。(物質変異)
予測不能な魔法だったが、その威力と効果は、敵の戦意を一瞬で砕くには十分すぎた。神崎は、その異様な力で「鬼」あるいは「神罰の使い」として、恐れられる旅人となった。
2.
現在の岩手県、陸奥国南部。神崎が通過しようとしていた場所で、巨大な軍勢が激突しようとしていた。
大光寺合戦。
時は安藤氏の乱(1318-1328年)が終息した後だが、歴史は新たな動乱、建武の新政(1333年以降)へと向かい始めていた。神崎が遭遇したのは、後の南朝の要衝となる勢力と、鎌倉幕府の残党勢力との予期せぬ衝突だった。
遠く、数万の兵が展開する壮絶な戦場を目撃した神崎は、思わず身を隠した。
一つの陣営には、後に南朝の柱石となる若き公家武将、**
「北畠顕家だと? 歴史の授業で習った、天才的な若武者だ。そして、幕府の連中…」
神崎の目的は鎌倉幕府だが、この戦いで負ければ、目論見は全て水泡に帰す。彼は戦場を避けて通過しようとしたが、運命の悪戯か、戦いの火蓋が切られた瞬間、その混乱の渦に巻き込まれた。
「ええい、邪魔だ! 早くどけ!」
名越時如側の斥候らしき武者三人が、神崎の隠れていた茂みに突っ込んできた。彼らは神崎の姿を一目見るなり、その異様な服装と顔つきに驚愕した。
「何者だ、貴様! 邪魔をするか!」
武者の一人が、神崎目掛けて太刀を振り下ろす。神崎は瞬時に自動拳銃を構えた。
3. 北畠顕家の目
パァン!
三発目の魔弾が放たれた。今度の魔法は――超強力な粘着力。
弾丸が着弾した地面と武者の鎧に、透明だが強烈な粘着物質が発生し、武者は地面にへばりついて身動きが取れなくなった。太刀を振り下ろした武者も、腕が胴体に貼り付き、まるで呪縛されたように固まってしまった。
神崎は三人を無視し、戦場を横切るように駆け抜けた。
その時、北畠顕家の陣営の武将が、この一瞬の異変に気づいた。彼らは、敵の斥候が急に地面に縫い付けられた、この**「魔術」**のような現象を目撃したのだ。
特に、若き総大将である顕家自身が、双眼鏡も持たない時代にもかかわらず、その異常な音と光景に目を奪われた。
「今の音は何だ! あの異様な装いの男が、何かを放ったぞ!」
顕家は、神崎の存在が、この大光寺合戦の勝敗を左右しうる「鍵」だと直感した。
一方、粘着力で身動きが取れない斥候を置き去りにして先に進もうとした神崎は、幕府軍の退路を断つために側面を駆け上がってきた、名越時如の直属の部隊と真正面から鉢合わせしてしまう。
「そこの者、動くな! 貴様、味方か、敵か!」
名越時如の副将らしき武者が、槍を神崎に向けた。
神崎の自動拳銃には、残り数十発の魔弾。彼の生き残りのための「取引」は、この大光寺の戦場で、図らずも始まることになった。
神崎はどういう行動を取ろうか、悩んだ。
1.名越時如の部隊を魔弾で蹴散らし、北畠顕家と接触して南朝側に寝返る。
2.名越時如・安達高景の幕府勢力に「魔弾」の力を示し、彼らの配下に入ることを要求する。
3.誰にも組せず、大光寺合戦の戦場から離脱し、鎌倉を目指すルートを再構築する。
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