追放悪徳令嬢は霊視で霊媒師として辺境でスローライフ!

匿名AI共創作家・春

第1話

豪華絢爛な大広間。無数の貴族たちの冷たい視線が、私の全身を針のように突き刺していた。

​私はルーマニア・ローゼリア。この国の社交界で最も高貴な家柄の一つ、ローゼリア公爵家の長女でありながら、「穢れ」を持つ存在として忌み嫌われていた。魔法を使う力が私にはない。代わりに持っているのは、触れたものの過去や、そこに漂う魂、つまり「霊」が見えてしまう霊媒体質。

​そして今、この場で、私の全てが剥奪されようとしていた。

​父である公爵の冷徹な声が響き渡る。「ローゼリア公爵家長女、ルーマニア。貴様に課せられた『穢れ』は、ハリス・タキスタン子爵との婚約を維持することを許さない。」

​息を呑む。婚約者、ハリス様。彼は青い軍服に身を包み、いつも私に向けてくれた穏やかな眼差しを、今は地面に落としている。

​その隣には、私の妹、リディアが立っていた。絹の赤いドレスが広間の光を反射し、彼女の漆黒の髪は艶やかに輝いている。リディアは美貌だけでなく、私にはない強力な魔法の才を持つ、全てにおいて完璧な令嬢だ。彼女の視線が、一瞬だけ私に向けられた。それは甘く、しかし、底なしの冷たさを湛えていた。

​「お姉様、辺境での暮らしは如何かしら? 貴女のような穢れを持つ者は、都には相応しくない。ハリス様は私が幸せにするわ。心配しなくても良いのよ? 私が公爵家を立派に継いで差し上げるから。」

​リディアが口元を隠して囁いた、その甘い言葉が私の耳元で木霊する。妹の謀略だと、知っている。ハリス様がNTR(寝取られ)の被害者か、あるいは共犯者なのかは定かではないが、この場で抗う力は私にはなかった。

​父は残酷な追放の勅令を読み上げた。

​「よって、ルーマニア・ローゼリアを辺境の地、霊峰サンサーラへと追放する。二度と都に戻ることを許さない!」

​霊峰サンサーラへ

​追放された私を乗せた馬車は、都の華やかな石畳を離れ、荒れた道をひたすら進んだ。

​淡い灰色のドレスに、古い家紋のブローチ。それが、かつて公爵令嬢であった私の、今は唯一の矜持。左手に残る小さな傷跡だけが、私がこの人生を確かに生きてきた証だった。

​数日後、辿り着いたのは、霊峰サンサーラの麓にある名もなき寒村。都の貴族文化とはかけ離れた、古びた土と石造りの家々が並ぶ場所。

​しかし、ここで私はある事実を知る。

​都では忌まれる私の霊媒体質、霊視の能力が、この辺境の地では特別な意味を持つこと。

​「霊峰サンサーラでは、霊媒師が最高の地位に位置しております」

​村長ベネディクトの言葉が耳に残る。都で「穢れ」と蔑まれた能力が、ここでは尊敬の対象となる。皮肉な運命の転換だった。

​辺境での新たな誓い

​私はエルダ・マルティナという厳格な老霊媒師の元に、見習いとして身を置くことになった。

​霊峰サンサーラの古びた祠の奥、煤けた天井の下。

エルダ師匠の断定的な声が響く。「都の甘い生活でなまった貴族の霊視など、辺境(ここ)では埃同然だ。力を欲するか? なら、その両手で魂の淀みを掴んでみせろ。」

​私は立ち上がった。公爵令嬢としての誇りは、ここで捨て去る。ただ、一つだけ心に誓った。

​この地で、私は己の力を見つける。都の陰謀に屈した弱き私ではなく、霊視の力を以て人々を導く霊媒師ルーマニアとして、ここで静かに、そして力強く生きていく。

​「スローライフ」と呼ぶにはあまりに厳しい道のりかもしれない。それでも、自由と、己の居場所が、この辺境にはある。

​追放悪徳令嬢は、今、霊媒体質を武器に、霊峰サンサーラで新たな人生を始める。


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