第8話 該博《がいはく》のロリエンディル。

「さて、ちゃっちゃと進むアル。深層まで先は長いネ」


 雨琳ユィ・リンが武闘着を着なおし、再びダンジョンの探索に戻ろうとしたときだった。


「待て、どこかから風が吹いていないか?」


 俺はかすかな違和感を感じ、パーティを引き留める。


「? いや、なにも感じないけど……」

「ティックの気のせいアルネ。道草してないで、とっとと進むアルよ!」


 アイリーンと雨琳ユィ・リンがいぶかしがる。が、ロリエンディルは違った。


「ロリたん知ってる。ハーフリングの探知能力は、エルフの3倍、ヒューマンとは10倍以上。きっとティックは、ロリたんたちには探知できない異変を感じ取っている」

「本当アルか? ティック!!」

「ああ。俺たちハーフリングは実感していないが、どうやらそうみたいだな」


 俺の言葉に、アイリーンがにこやかに笑う。


「なるほど、さっそくティックの能力が役に立つわね。パーティに加えた甲斐があるよ」

「褒めるのは、成果をあげてからにしてくれ。言っておくが、ただの隙間風かもしれないからな」


 そうは言いつつも、はっきりとした違和感を覚えている。

 俺は、ゴーレムの残骸が散らばる床に手を当ててみる……なるほど、間違いない。下が空洞になっている。床を注意深く探索していくと、ほどなく、不可思議なくぼみを発見した。


「この窪みに何かセットしろってことだろう。周囲に文字らしきものも刻まれてあるが、そっちは皆目見当がつかん」

「ティック、とってもお手柄。あとはロリたんに任せるの」


 ロリエンディルは懐から3センチほどの緑色に輝く宝玉をとりだし、ためらうことなく床の窪みにはめ込んだ。


 ブワン。


 まばゆい緑色の光がアリの巣のように床全面に走っていく。そして「ガコン」と何かが外れる音がすると、下層へとつづく道が現れた。


「スゴイ、めっちゃ近道アル!」

「ティックお手柄じゃない!」


 雨琳ユィ・リンとアイリーンの言葉に、俺は首を振る。


「手柄を立てたのはロリエンディルだ。俺は窪みを見つけただけだ。なあ、ロリエンディル、君は、ここに階段があることを見越して、俺たちを誘導した。そうだろう?」


 俺の言葉に、ロリエンディルは口の端をわずかにあげる。


「ご名答。どうしてロリたんの思惑に気が付いたの?」

「このダンジョンは、出現して1年以上経過していると聞く。ならば浅層はあらかた探索済みのはずだ。ゴーレムなんて大物が闊歩しているはずがない」


 ロリエンディルはこくりとうなづく。


「その通り。ここのゴーレムは、前回の探索でロリたんたちが深層にあった祭壇から『積翠せきすいの宝玉』を持ち出したから起動したの。たぶんだけど階段は、祭壇までつながっているはず。ゴーレムは、あるじ以外の侵入を防ぐために造られたと推測できるの」

「祭壇って、あの祭壇のこと? ものすごい近道じゃない!!」


 ロリエンディルの言葉に、アイリーンが驚き、雨琳ユィ・リンがつづく。


「さすがは、該博がいはくのロリエンディルだけのことはアルネ!」

「えっへん。もっとロリたんを称えるの!」

「えらいエライ! 戦闘では役立たずだけど、こういう時は頼りになるネ!」


 雨琳ユィ・リンの言葉に、ロリエンディルは頬をまんまるに膨らます。


「それはこっちの台詞なの。ロリたん、今までは、ひとり地道な労働を強いられてきたの。でも……」


 ロリエンディルは、おもむろに俺の腕にからみついてきた。


「これからはティックがいる。ヒューマンの小娘どもとちがってとっても話が合いそうなの。それに夜の相性もとっても良さそう」

「な、何を言ってるんだ!!」


 俺は大慌てで、ロリエンディルの腕をふりほどく。


「恥ずかしがらなくてもいいの。経験豊富なおねーさんがこれからいろいろ教えてあげるの」


 そう言って、ロリエンディルは投げキッスを投げかけてくる。


「バ、バカなこと言ってないで先を急ぐぞ!!」


 赤らんだ顔を築かれたくない俺は、そそくさと階段をかけ降りた。






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