おじさんハーフリングのモテ受難。~ダンジョンに出稼ぎに来たら美少女冒険者たち言い寄られまくるのだが~
かなたろー
第1話 おっさんハーフリング、店を地上げされる。
「ティックさん、この店、今日中に畳んでくれないか?」
ハーフリングの集落『ウッドチャック』の有力者クロノピースさんは、鍵職人を営んでいる俺の店を訪れると、開口一番、とんでもないことを言い放った。
「そ、そんな、突然ですか?」
「悪いが決定事項なのでね。ここ一体の店をとりづぶして、巨大な総合商店をつくる予定なのさ。さ、とっとと出て行ってくれ!」
「……はい、わかりました」
俺は、いそいそと自分の荷物を片付けて、あらためてクロノピースさんに頭を下げた。
「今まで御世話になりました」
「はいはい、ご苦労さん」
クロノピースさんは、めんどくさそうに返事をする。
「悪いね。ティックさん。で、アンタ、これからどうするおつもりで?」
「食いつないでいく必要があるのでね。
「ふはw 正気ですか?? 俺たちハーフリングの背丈はせいぜい3シャーク半(約105センチ)。文字通り
アンタが俺の店を地上げしたからだろうが! 俺は口元まで出かかった言葉を飲み込むと、ヘラヘラとにやけ顔を浮かべるクロノピースさんの質問に答える。
「先週、店にやってきた旅人からきいたんですが、なんでもダンジョンはトラップだらけだそうで。武勇を鳴らした冒険者たちも攻略に難儀しているのだとか。だったら、俺の鍵職人としての腕前も、需要があるんじゃないかと思ったんです」
「なるほどw それならパーティに加えてくれるもの好きもいるかもしれませんねぇww ま、せいぜい頑張ってくださいよ」
「はい、死なない程度に頑張ります。じゃ、これで失礼します」
店を出ていく俺に、クロノピースさんはごくごく小さな声で、しかしハッキリと、「死ねばいいのに」と、俺の背中に吐きつけた。
俺は家に戻って書置きを残すと、最低限の荷物をまとめて集落をあとにした。善は急げだ。なくなった食い扶持について、くよくよと悩んだって仕方がない。悩んだところで、誰かがおめぐみをくれるわけでもないからな。
徒歩や道行く貨物馬車に相乗りをさせてもらいながら、南へ進むこと一週間。南の都へとたどりつく。
十年ぶりに訪れた南の都は、想像以上に活気にあふれていた。
「さあ、さあ、ご立会! コイツは大陸の東で採れる、『地面から生える羊』の毛でできたベストだよ! こいつを着こめばドラゴンブレスもへっちゃらさ!」
「帰ったばかりの商戦から仕入れたばかりのスパイスだよ! 薬草の調合にいかがかね?」
南の都は、古くから港町として栄えてきた、国有数の大都市だ。南端の岬に、ダンジョンが出来た噂を聞きつけた商人が、舶来の品を冒険者たちに売りつけている。
いや、商人たちだけじゃない。町のいたるところに見慣れない服を着た冒険者たちが居る。おそらく、一攫千金を夢見て国外から来た冒険者達だろう。
「フッ、考えることはみんな同じってことか……」
これならパーティを組んでくれる冒険者も見つかるかもしれないな。俺は意気揚々と、冒険者が集う酒場へと足を踏み入れた。
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