第3話
はい、高校はかなりサボりがちでした。だって、行こうと思ったら制服に着替えなくちゃいけないでしょう。制服は家にあるんです。さっきも言いましたけど、帰ったら確実に克紀さんがいるので、とてもそんな気にはなれませんでした。ただ単純に、直里のことを避けてたって言うのもあるんですけど。
でも、一日ジムにいるって結構変じゃないですか。
だから、たいてい日中に羽奈とジムにいて、午後からはアルバイトをするようになりました。それでは到底賄えないですけど、ずっと父に払ってもらいっぱなしと言うのも嫌ですし。
どこでしようかな、と思って気が付きました。学区内だとバレるんじゃないかって。サボってアルバイト、なんて当然辞めさせられると思うでしょう。それが学校か、バイトなのかはさておき。
それは不味いと思いました。どこの誰にバレるかは、想像もつかないような話ですから、出来るだけバレると同時に相手の弱みに付け込めるような、そういうグレーゾーンのものを探しました。
見つけたのがとあるクラブです。JK、JDが接待するんですけど、普通に風営法違反のところ。
卓について、お触りアリのちょっとエッチな接待をする人もいれば、下着姿でステージに上がってDJやってる人もいました。話に聞くバブル期も、こんなだったんですかね。年齢層もちょっと高めなのかな。
誰に言われなくても、駄目なところって分かるようなところですよ。そんなところに来てたら、それだけで脅すネタになると思いませんか。
私、初めはちゃんとドリンクを作るだけでした。
でも、結構誘われるんですよ。多分、派手髪とかの明らかにアングラ的な子より、ピアスも開けてないような純朴な小娘が物珍しかったんでしょうね。下卑た視線で全身を見られるんです、気持ち悪いと思いましたけど、自分で選んだわけですし、我慢は簡単でした。
それに、当然と言えば当然ですけど、過激な人ほどお客からのチップが多いんです。どうせ、ここで働いてる時点で駄目なことしてるしな、とも思いました。よく、薬物乱用防止のチラシとかに書いてますよね、一度手を出したら深みにはまっていきますよーって。そんな感じです、きっと。警戒心も何も、片っ端から消えていくんです。
でもまあ結局、際どいコスプレをするに留まりました。克紀さんの件もあって、これ以上男性に手を出されるのは、もう勘弁でしたし。何度も説明して、何とか了解を得られました。無理やり枕させて、SNSで騒がれるのは御免だと思ったんでしょうね。わざわざ私にやらせなくても、そういうのを厭わないキャストはいくらでもいましたから。
オーナーも変な人です。グレーな経営してる癖に、身を削って稼ぐ女の子たちを心配そうに見るんです。
多分、裏で反社会的勢力が糸を引いてるんだと思うんですけど、それに従うことを選んだのは彼自身じゃないですか。女の子たちみたいに害を被る側ならともかく、搾取する側ってことは元々お仲間のはずでしょう。今更、心配する道理なんてないと思いました。
根がいい人ってことでしょうって、そんなこと言われても納得いかないと思いますよ、キャスト達は。オーナーが毎晩、お酒と覚醒剤キメて店の子嬲り犯してるの、見たことない子の方が少ないですよ。
中には、控えで泣いてる子もいました。咲楽ちゃんだったかな、美玖ちゃんだったかな、知らないですけど。あ、亜紀ちゃんでしたか。とにかくその子が半グレみたいなお客と寝た時、クスリを盛られたみたいで。はい、1週間もしないうちに立派なジャンキーになってました。でも切れるといつも泣くんです、もうこんなこと辞めたいって。でも中毒ってやっぱり怖いですよね、クスリくれるお客と会えなくなるとどうなるか分かんないって、泣きながら出勤するんですよ。
そんな、明らかに薬物依存の子に、ちゃんとしたお客がつくわけもないですよね。あ、ちゃんとって言うのも変ですけど、この場合は薬物関連じゃないお客のことですよ。結局、みんな仲良くクスリ漬けのまんまです。
そんなの可哀想ですよね。入口が望まずだったわけですから、彼女には更生の道が与えられるべきだったと思うんです。でも、もう取り返しのつかないところまで依存してるって、相談したお医者さんは言ってました。
だから彼女を、殺そうって思った。
私、ちゃんと考えたんですよ。どの道、このままだと薬から手を引けないって、そんなの見てたら分かります。彼女が一番苦しまない方法を選んでみようと思いました。もし死んだら、お薬はもう打てないし、生まれ変わったところで既に中毒者の身体じゃないんですから、メンタルさえ整えばきっと、って思いませんか。私、その可能性に賭けてみたかったです。
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