にこあい〜ふたごとふたごの日常〜

宮来らいと

第1話 転校生

――――鶴崎マリの視点――――


 春の風が気持ち良い朝。あいつの声で目が覚める。


「おーい! 姉ちゃん!」


「なによ……。人が眠っているのに…………。」


 私の名前は鶴崎つるさきマリ。高校1年生の女の子だ。


「もうすぐ7時だよ。寝てないで身支度しないと。」


 こいつの名前は鶴崎つるさきマコト。同じ高校に通う、双子の弟。


「そんなことで起こさないでよ。もう…………。」


「なにがそんなことだよ。姉ちゃんが起こしてって言うから起こしただけじゃん。」


 それもそうか…………。そう言われると、申し訳ない感じもする。


「仕方ないわね…………。起きるか…………。」


 下の階に降り、リビングに向かう。


「おはよう。マリ。マコト。」


 母親が挨拶をしてくれる。…………ウインナーを真っ黒にしながら。


「おっ、おい! ウインナー焦がしているぞ!」


「あらいけない! どうしましょう!」


 お父さんが指摘すると、お母さんは火を止める。


「全く…………しょうがないな。」


「うふふ…………。」


 お母さんとお父さんは仲が良い。喧嘩をすることがほとんどない。


「マリ。マコト。朝ご飯を食べたら、ゴミ出ししてね。」


「はーい。」


 朝ご飯を食べ、ゴミ出しに向かう。葉桜はざくら高校に向かう途中に捨てに行こうと思い、私は制服に着替え、葉桜高校に向かった。



――――ゴミ捨て場。



「ゴミ出し終わり。マコト、行くわよ。」


「うん。」


 マコトが頷くと、周りをウロウロする人間がいた。私は不思議に思い、声を思い切ってかけた。


「ねえ、そこにきみ。何しているの?」


 よく見ると、その人は学生なのか同じ制服を着ていた。


「えっ…………いや、少しね。」


「ふうん…………。」


 するとそこに同じ学園の女子が私の前に立ちはだかる。


「ちょっと。気安く触らないで。」


「な、何よ! 急に出てきて、その言い草は!」


「ちょっと、姉ちゃん!」


 私はついカっとしてしまう。近所のおばちゃんたちが集まりそうになったところで我に返る。


「行くよ。ケイ。」


「ええ。」


 その2人はゴミ捨て場から離れる。


「姉ちゃん。」


「わかっているわよ。行こう。」


 ふてくされながら、高校に向かう。



――――葉桜高校 1年3組。



 登校をした私は自分の席に座り、イライラしていた。


「ねえ。マリ。どうかしたの?」


 話しかけてきたのは、早坂はやさかチヅル。私の大事な友達の1人だ。


「ちょっとね…………。変な女子に絡まれちゃった。」


「大丈夫? せっかく今日、転校生が来るのに…………。」


「転校生? 新学期始まってから、3週間よね?」


「親の都合なんじゃないかな? ほら。先生来たわよ。」


 先生が来る。先生は早速、転校生を紹介する。


「今日は転校生がやって来ました。さ、入って。」


 先生の合図で転校生が教室に入る。


「あっ! あいつ…………!」


 入って来たのは女子。それも…………。


「はじめまして。亀原かめはらケイです。よろしくお願いいたします。」

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