落ちるブルースター 〜虐待の末に死亡し奴隷に転生した少女はしあわせを求めて復讐を誓う〜

@Nanoha4649

第1輪 咲いたスイセン


私はいつも長袖を着ています。




ソレは季節に関係なく着ています。だって半袖を着ると腕にある傷や痣が目立ってしまうからです。それにお洋服もお母さんが長袖しか買ってくれないのもあります。




私は学校には行っていません。


詳しく言うと今はです。昔は通っていました。でも、私のお家は貧乏だから給食費が払えなくてその事で酷くからかわれたり、お母さんのお仕事を馬鹿にされたり、物を取られたり、叩かれたり…。





私は学校に行くのが怖くなってしまいました。




私はいつも平日は図書館で過ごします。


図書館はすごくいいところです。


だってお金を払わなくても本がたくさん読めます。


私は暇な間、本をずっと読みます。


中でもおとぎ話が一番好きです。お姫様の話がとても好きなのです。


彼女たちは辛い出来事を乗り越えて幸せを掴み取る……そんなお姫様たちに私は憧れました。




こうして昼間の時間を図書館で潰すと家に帰ります。


帰り道に猫が集まる公園があってそこ寄り道してから帰るのがいつものルートです。




猫は好きです。温かくてもふもふしていて、とても可愛いのです。


いつも茶色の猫が私を迎えてくれます。


名前はコデマリです。


かれこれ会ってから2年たちます。私の唯一のお友達です。


コデマリは顎を撫でてあげると気持ちよさそうにゴロゴロ鳴くのです。




コデマリは私の話を静かに聞いてくれます。


辛い時は指を舐めて慰めてくれます。 




コデマリは私の事をどう思っているのでしょうか?


友だちだと思ってくれてると嬉しいなぁ。




そして家に帰ります。


私の家はアパートであまり広いとは言えません。


「……。」


静かにそっとドアを開けます。


だってお仕事で疲れているお母さんが起きてしまうかもしれないからです。




お母さんは夜のお仕事をしています。


夜はおめかしして出掛けて、朝になるとクタクタで帰ってくるのです。




お母さんは稼いだお金をよくわからない宗教に使ってしまいます。




でも、私はお母さんが大好きです。




だって、私を育ててくれて優しかったからです。それに、いつかお母さんは昔のお母さんに戻るかもしれません!




私はお母さんを起こさないように押し入れに入ります。




ここは私の部屋です。暗くて狭いけど私には十分過ぎるお部屋です。




じばらくすると私はウトウトしてきて眠くなってきました。


まだ、夜じゃないけど少し眠ろうと思います。




















「おい!!!オトメ!!いるなら出てこい!!!!!」




私はハッと目を覚ましました。


今のはお父さんの声です。


私は急いで押し入れからでないといけません。




「こ、ここにいます!ごめんなさい…。」




「なんだ、押し入れにいたのかオトメ。


ハハッ。お前はかわいいなぁ。」




そう言うとお父さんは私の頭をワシャワシャ撫でます。髪はぐしゃぐしゃになるけど私はお父さんに頭を撫でられるのが好きです。




「なぁ、オトメ。お前は昔の母さんに似ていてとても、かわいいなぁ。」




「あ、ありがとうございます…。」




気づくとお父さんは私の隣に寄ってきました。お父さんは私の肩をつかんで耳元で喋りかけてきました。




「お父さんと一緒にお・風・呂・入ろうなぁ。」




「え、あ、あの。えっと!」




「いいよなぁ!!おい!」




お父さんは私の耳を引っ張って私の体を持ち上げようとします。


耳がちぎれそうになってとても痛いです。




「ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!は、入ります!」




「うん。いい子だなぁ。じゃぁ入ろうか。」




「………。」




こうして私の1日が終わるのです。




知らない人から見ると私はとても不幸な女の子に見えるかもしれません。




でも、そんな事はありません。


だって好きな事ができて、お友達もいて、両親もいて、住むところに食べる物もあります。




これ以上何を望めばよいのでしょうか?


そうです。だから、私はしあわせなのです。


そう、しあわせ……。








ある日、図書館で本を読んでいるとある素敵な物語と出会いました。




その物語のお姫様は、お母さんやお姉さんからイジメられてもめげる事なる頑張り続けてその頑張りをみていた妖精に舞踏会に連れてってもらって王子様と結ばれるというものです。




とても感動しました。


私もきっと頑張ればしあわせになれるのでしょうか。


よし!今日は私は少し勇気を出そうと思います。




夕方になり、いつもの公園に寄ります。


しかし、いつも来るはずのコデマリがいません。




「…?。コデマリ!コデマリ!」




呼んでも出てきません。


私はコデマリを探します。ベンチの下や木の上も。




生い茂る雑草をかけ分け私は必死にコデマリを探します。




「…?!」




そこにコデマリはいました。


コデマリの茶色の毛は血に濡れ赤く変わっていました。コデマリの尻尾はまるでハサミで切られたかのようになくなっていて、全身の傷もなんだか人為的なものに見えます。




「コデマリ、…コデマリ。」




私の奥からなんだかグツグツとした感情が湧いてきました。でもこの感情には蓋をしないといけないのです。


だって、誰も助けてはくれないのですから。




これは仕方のない事なのです。だから…。




「…コデマリ。」




私はコデマリを抱き上げ静かに涙を流しました。涙が私の悲しみやグツグツとした気持ちを流してくれるかもしれないから私はたくさん泣くのです。




私はコデマリを土に埋めました。 






私の友だち…。唯一の…。




私の居場所…。




なんだか足がうまく動きませんが頑張って歩きます。




お母さん。




お父さん。






私は朝読んだ物語を思い出しました。


辛い時こそ頑張ろうと。




家に帰るとお母さんはもういませんでした。


代わりにお父さんがいました。




「オトメぇ〜。遅いからお父さん心配したぞぉ。」




「ご、ごめんなさい。」




「じゃあオトメ…一緒にお・風・呂・に入ろうか…」




い、言わなきゃ。


頑張って。


勇気を出して。


頑張れ!頑張れ!




「……す。」




「あ?…聞こえなかったなぁ。」 




「嫌です!!」


その時、私の体は宙に浮いていました。


畳の上に大きな音をたてて着地します。




全身が着地の衝撃でジンジンと痛みますが、その中でも、ほっぺたがとても痛いです。




殴られた…。




服に赤い染みが付いていて、顔を触ると血が付きました。




「おいッ。…お前さぁ。父親にそんな事言っていいと思ってるのか?」




「…ッひ」




喉が引き攣ってうまく声がでません。




殺されると思いました。




逃げようにも体が動きません。


なんだかグラグラするのです。


地面がなくなったみたいな、そんな。




「…畜生。……クソ。お前まで俺を馬鹿にするのかァァァアアアッ!!!!」




お父さんの太い手が私の首を掴みました。


その手はじょじょに力が入っていって私の首を絞めます。




「!!…ぃやぁ!…ぁ、ああ!」




うまく息ができなくて手を外そうとジタバタ動くのですが、うまく動けません。




だんだん、息ができなくなって頭がクラクラします。




「うぁぁアアアアアアアアア!!!!」




下半身がじんわりと温かいのを感じました。


お漏らししちゃったのかな?


そう思いました。




もう目も見えなくなって私は自分の首が折れる音を聞きました。
















神さまお願いします。神様。


私はしあわせになりたいのです。


お願いします神さま。助けてください。












「……!……ぶ…」




冷たい。


それになんだかジメジメしてるなぁ。




「ね‥‥‥お‥て!」




何処からか声も聞こえます。




「…!」




私は目を開けました。


…?。ここはどこ?


あれ?なんで?


私、生きてるの?




「よかった、君生きてた。」




男の子が私の近くにいました。


なんだか、とても綺麗で見惚れてしまう美しさがある少年でした。




金髪で目がとても綺麗……。


目の色が2色あります。海の色と夕方の色‥。




「ね、ねぇ君大丈夫?」




「あ!‥、はい。大丈夫?です。」




「僕の名前はアネモネ。君、自分の名前は分かるかな?」




「私は…えっと、オトメっていいます。」




「へぇ、変わった響きの名前だね。でも、いい名前だね。」




アネモネさんはそう言うと微笑みました。


その姿がなんだか花が咲いたみたいで、私は見惚れていました。




「…もしかして、まだ意識がハッキリしない?あまり、清潔とは言えないけどあそこの水溜りで顔を洗ってきたらどうかな?」




そう言われ、私は水溜りのそばに移動しました。




水溜りに自分の姿が反射しました。




しかし、それは私ではありませんでした。




「え!!」




私は驚き全身をこまなく触って確かめました。




そこにいたのは腰まであるウェーブのかかった綺麗な白髪。くりくりの目に雪のような肌。




そんな、綺麗な女の子でした。




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