水玉ミシン

一二三ケルプ

カタ、カタ、カタ、カタ、カタ♪

 ウチの中学には、ちょっと変わった人がいる。

 同じクラスの水玉みずたまくんだ。


 水玉くんは、いつも静かで、なんだか少しダークな雰囲気。

 フツー、そういう人って、みんなあんま近寄らないものじゃない?


 だけど彼、意外と人気があるんだよね。


 水玉くんって、すっごく不思議な感じなんだけど、ケッコー人に親切。

 さりげなく、困ってる人のお手伝いをしてあげたりする。


 おまけに彼、顔が大人っぽいから、一部の女子には大人気。

 よく見ると、かなりのイケメンだし、女子の何人かは、そんな彼にZOKKON。

 で、そんな水玉くんなんだけど……じつは彼、ちょっとマジで変わったところがあるのです。


 彼って――なんと裁縫さいほうが得意らしいの。


 こういうとこも、なんかめちゃくちゃ変わってない?

 フツー、男子って裁縫とかやらないよね?


 そんな彼、じつは男子で唯一の手芸部部員なんだ。

 しかも超マジメ。

 誰もいない放課後、旧校舎の奥にある部室で、いつも一人で古い足踏みミシンを踏んでる。


 カタ、カタ、カタ、カタ、カタ♪


 手芸部前の廊下にひびく、なんだかアンティークな音。

 これ、みんな『水玉ミシン』って呼んでるみたい。

 水玉ミシンの規則的な音は、中一の夏休み前の段階で、すでに校内でも有名。


 そんな水玉くんのこと――じつは最近、私も気になっている。

 べつに好きとかそういうんじゃなくて、単純に、めちゃくちゃ不思議な人だから。


 水玉くんって、一体どんな人なんだろう?


 そして、この物語は――そんなヘンな人・水玉くんと、私・柿崎かきざきりおの、なんだか謎すぎる日々の記録なんだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る