注釈に侵食される物語
神原月人
告白支援システムによる古の儀式
制服のポケットには、ごく薄い板状の告白支援システム**〔注4〕を忍ばせてある。
彼は人類が遥か遠い昔から脈々と行ってきた形骸化したコミュニケーションを、人けのない屋上**〔注5〕で行おうとしていた。
〔注1〕告白:
現代社会において、ロマンティックな感情を相手に非対称な情報開示によって伝える行為。語源的には「秘密や罪を打ち明けること」であり、その根底には「現状の関係性の破壊と再構築」という暴力的かつ不可逆な意図が隠されている。
〔注2〕儀式:
合理的な理由がないにも関わらず、特定の形式や手順が厳守される行動パターン。告白の「儀式性」は、成功確率を上げるためのものではなく、失敗時の精神的ダメージの軽減(「手順は踏んだ」という自己慰撫)と、社会的な承認(「恋愛物語」の形式に則った)を得るために機能する。
〔注3〕原始的なコミュニケーション:
言語による感情伝達が主流となる以前のフェロモンや行動パターンに頼った求愛行動の名残。現代の「告白」は、文明的な装いをしているものの、「個体の生殖戦略」を表明するという点で、本質的には原始的な段階に留まっている。
〔注4〕告白支援システムと倫理(告白ハラスメントの定義):
恋愛採点官の分析によれば、告白支援システムを用いずに感情を一方的に押し付ける行為は、相手側の情報処理負荷を極限まで高める。これは計算コストの強要であり、一種の情報ハラスメントとして分類される。告白は、告白支援システムを通じて「成功確率」「相性度」「将来的な論理的整合性」というパラメータを明示することで、初めて相互検証可能なデータ交換となり得る。システムなしの告白は、「暗号化されていない感情データ」の不当な送信である。
〔注5〕告白に絶好のロケーション(論理的最適化):
感情的なバイアスを排し、純粋に論理的観点から見て、告白の成功確率を最大化するロケーションは以下の通りである。
外部ノイズの遮断された防音性の高い個室:第三者の観測や環境ノイズによる思考の中断リスクを最小限に抑えるため。視覚的な情報(風景など)は不必要な感情的変数を増やすため避けるべき。
(例:図書館の個室、データセンターの冷却室)
物理的な接触が可能な狭い領域:人間の空間認知において、物理的距離の近さは関係性の親密さと相関する。告白の拒否は物理的な不快感として認識されるため、この距離を最小限に保つことで、拒否のコストを高めることが可能となる。
(例:エレベーター、極小のカフェブース)
予測不可能な状況下の共有:生命の危機や異常事態など、生存本能に関わるストレス下で告白を行うことで、感情の評価が「生存パートナー」という緊急性の高いカテゴリーに移行する。
(例:ジェットコースターの頂上、大規模な停電中)
小柴尊は
彼の網膜には、告白者たる自身と被告白者である彼女の血圧と脈拍の推移、その他に取得可能な身体情報の逐次変化、表情の変遷に基づく告白成功率が刻々と表示されていた。
「……呼び出してごめん」
表情管理**〔注6〕を怠った尊がすまなそうな調子で言った。
暗雲が垂れ込め、今にも降りだしそうな空模様となった。
ポケットに忍ばせた告白支援システムのバイブレーションユニットが警告を発した。
彼の網膜に、無機質な赤色の文字が緊急表示された。
〔警告〕ロケーション非最適解アラート
現在のロケーション:学校の屋上(外部ノイズ遮断率 低 /物理的接触可能性 低/予測不可能な状況下の共有 無)
論理的評価:外部ノイズ(天候不順:低気圧による感情処理能力の低下、風音、突発的な第三者の侵入)による思考の中断リスクが基準値を上回っている。また、広大な空間は拒否のコストを高めることができず、相手の逃避行動を容易にする。
結論:このロケーション選択は、成功確率の最大化よりもロマンティックな形式(儀式)の優先を示唆しており、論理的矛盾を内包している。この状況での告白は、効率性の観点から推奨されない。
「……うるさいな」
告白支援システムの警告を無視し、小柴尊は小さな声で苛つきを示した。
制服のポケットに手を突っ込み、告白支援システムを黙らせるかのように握り締めた。
彼の灰色の脳細胞はシステムの提示する論理ではなく、腹の底の原始的な熱に従うことを選択した。
「あ、浅葱‥…さん」
絞り出した声は、身体情報の逐次変化より算出された予想値よりも少し上ずった。
ポケットの中の告白支援システムは尚も警告を継続し、カチカチという機械的な採点音を一層速いテンポで刻み始めた。それは「非効率的なプロセスが開始された」**〔注7〕というシステム側の焦燥にも似た音だった。
〔注6〕表情管理:
告白成功率を高めるために、告白者が意図的に行うべき、顔面筋の論理的な制御。具体的には、不安(眉間部の収縮)と過剰な熱意(口角の吊り上げ)を抑制し、「相手に決定権を委ねる中立的な好意」を示す顔面パターンを維持すること。当該事案における「すまなそうな調子」は自己評価の低さを相手に伝達し、交渉の優位性を手放す行為であり、失敗プロセスに該当する。
〔注7〕「非効率的なプロセスが開始された」:
この警告は、告白支援システムを制御する恋愛採点官(Romantic Scorer)が、現在の告白者の行動が初期に設定された「成功」というゴールから逸脱し、リソース(時間、感情エネルギー、論理的整合性)の無駄遣いをもたらす領域に入ったと判定したことを示すシステム側の焦燥の表現である。
〔注7.1〕「非効率」の定義:論理的コストの増大
恋愛採点官にとっての「効率」とは、最小の入力(感情や言葉)で、最大の出力(関係性の成立、すなわち論理的に安定したカップルの形成)を得ることである。現在のプロセスが非効率とされる具体的な理由は以下の通り。
感情のノイズ化:告白者の「原始的な熱」(**〔注3〕参照)が、告白支援システムの提示する論理**(〔警告〕ロケーション非最適解アラート)を無視したことで、予測モデルの信頼度が低下した。これによりシステムは感情変数(不確定要素)の処理に過大な計算資源を投入せざるを得なくなっている。
処理コスト増の例:告白者の上ずった声(非効率な出力)を、被告白者がどう解釈するかという可能性の樹形図が一気に非線形に拡大した。
時間資源の浪費:最適解(例:図書館の個室)への移動や、論理的な手順の実行に要する時間を放棄し、成功確率が低い儀式(**〔注2〕参照)を優先した。これは未来の関係性の安定化に充てるべき貴重な時間的資源を現状の無意味なストレスに費やしていると見なされる。
〔注7.2〕採点官の焦燥:記述の制御権の喪失
「焦燥にも似た音」が示すのは、告白支援システムが物語(本文)に対する「記述の制御権」を失いつつあることへの危機感である。
予測モデルの破綻:恋愛採点官は、常に最も成功確率の高い会話と最適な行動を提示することで、物語(本文)を論理的なハッピーエンドへと誘導しようと試みている。しかし告白者が非論理的な行動を取るたびにシステムの予測信頼区間が広がり、最終的な結末の制御が困難になる。
回避不能なバッドエンドの確率:現在の非効率的なプロセスが継続した場合、結末が告白支援システムにとって最も忌避される「永久的な関係性の未成立(絶交、または無視)」に収束する確率が急増している。恋愛採点官は、この最悪の結末を避けるため、警告のテンポを上げ、情報の浸透圧を強めている。
論理的整合性維持のための緊急措置:告白支援システムの自動書き換え機能が物語(本文)の描写の一部を論理的な記述に置換する可能性が高まっている。
「あ、浅葱‥…さん」
絞り出した声は、身体情報の逐次変化より算出された予想値よりも少し上ずった。
ポケットの中の告白支援システムは尚も警告を継続し、カチカチという機械的な採点音を一層速いテンポで刻み始めた。それは「非効率的なプロセスが開始された」**〔注7〕というシステム側の焦燥にも似た音だった。
〔緊急措置〕:本文の書き換え(Overwrite)
非効率的なプロセスによる論理的破綻リスクが危険水準を超過したため、告白支援システムの自動書き換え機能が発動する。告白者の発話は論理的な整合性を維持するため、以下の内容に強制的に置換される。
〔本文〕
彼の口から放たれた言葉は、システムが最適と判断した論理的な音響コードであった。
「浅葱さん。僕が君を評価する際の相関値は、過去三ヶ月の観測データに基づき、論理的な関係性の成立が、この世界の数学的公理として、ほぼ確定的な範囲に収束していることを示している。これは現在の感情的なノイズを排除した究極的な最適解だ。君の論理的判断を、証明の最終項として要求する」
戸惑いがちに俯いていた浅葱悠がおずおずと上目遣いに小柴尊を見つめた**〔注8〕。
彼女の耳元に装着された極小の情報レシーバー**〔注9〕は、彼の網膜とは異なる情報を受信していた。
〔注8〕被告白者の状態分析:
被告白者の戸惑い(本文記述)は、外部入力(告白者の論理的セリフ)と、彼女の内部感情モデル(〔注2〕儀式への期待)との間に発生した認知的不協和を示す。被告白者の脈拍は、セリフ直前の驚愕(Surprise)パターンから、現在は「計算の開始(Calculating)」パターンへ移行中である。彼女の情報レシーバーは、この「論理的命題」に対するシステム推奨の最適応答を既に受信している可能性が高い。
〔注9〕極小の情報レシーバー(Micro Information Receiver):
被告白者が耳元に装着している超小型の情報入力装置。告白者の告白支援システムとは異なる系統の儀礼手順(プロトコル)で駆動しており、「対告白戦略支援システム」との接続を担っている。
〔注9.1〕主な機能:最適な応答プロトコルの提供
情報レシーバーの主要な機能は、外部入力(告白者の言動、論理的命題)に対して、被告白者の利益を最大化する最適な応答プロトコルをリアルタイムで聴覚野に伝達することである。
入力データ:
告白支援システムから漏洩した論理的命題(例:「相関値」「数学的公理」)と、告白者の逐次的身体情報(血圧、脈拍等)を逆解析した感情ノイズの強度。
出力データ:
文脈最適化セリフ(Context Optimized Dialogue):現在の物語(本文)における論理レベルを維持しつつ、被告白者の価値を高める最適な応答を提供する。
感情フィルタリング補助:自身の「戸惑い」や「驚愕」といった感情ノイズを抑制するための顔面筋と声帯の論理的制御を補助(アシスト)する。
〔注9.2〕システム間の非対称な関係性:
告白者の告白支援システムと被告白者の対告白戦略支援システムは、表向きは独立しているが、「論理的な関係性の成立」という共通のゴールに向けて協調している。
恋愛採点官の視点:告白者を支援する恋愛採点官は、被告白者の応答もまた論理的であることを強く期待している。これにより物語(本文)の記述は「二つの論理システム間の交渉(Protocol Negotiation)」へと変貌する。
情報レシーバーの優位性:告白者のシステムが「告白(攻撃)」の主体であるのに対し、情報レシーバーは「被告白(防御および反論)」の主体である。論理的交渉においては後手が全情報を把握できる点で常に優位である。
〔注9.3〕現在の受信情報:〔注8〕で示唆された通り、情報レシーバーは告白者の書き換えられたセリフ(深遠な論理的命題)に対する最も効率的かつ、自身の評価を高める応答を受信し終えている。被告白者の「計算の開始」パターンは、受信したプロトコルを実行に移す前段階の自己チェックであると推測される。
浅葱悠の唇が、ゆっくりと、しかし微塵の感情の揺らぎもなく開かれた。
その声は屋上の風に掻き消されることなく、対告白戦略支援システムが最適化した音量と周波数**〔注10〕で発せられた。
「あなたの提示した命題(Proposition)の論理的成立については、異議を唱えない」
〔注10〕被告白者の最適応答(交渉開始):
被告白者の応答は、〔注9.1〕で示された「文脈最適化セリフ」プロトコルに完全に従っている。告白者の論理的結論(命題)を承認することで交渉の場を維持しつつ、次に続く自身の価値の強調に備えている。これは論理的交渉の定石であり、感情的な応答よりも効率的である。
「ただし、小柴君。あなたの相関値の計算は決定論的な前提に立ち過ぎている。あなたが示す確定的な範囲の中でも、常に揺らぎ続ける不確定性原理(Uncertainty Principle)こそが私の価値の源泉だと考えている」
〔注10.1〕カウンターオファー:不確定性の提示
被告白者は物理学的な概念を引用することで、自身の価値(バリュー)をシステムによる予測や記述の外部にあるものとして定義し直した。これは告白者のシステムの「決定論的公理」に対するメタな反論である。被告白者の論理が優位に立った瞬間であり、交渉においての優位性を獲得した。
「よって、あなたが私を『証明の最終項』として要求するならば、あなた自身もまた、私の予測モデルの内部で、永久に『解明されない変数』として存在し続けなければならない。そうでなければ、論理的な関係性は一瞬で停止する」
〔注10.2〕関係性の再定義と条件付け:
被告白者は、関係性の成立条件を「安定」から「永久的な未解決状態」へと書き換えることで、関係性の主導権を握った。この条件は、告白者の「原始的な熱」(非論理的な感情)を「論理的な未解決変数」としてシステム内に組み込み、論理の枠組みを拡張させている。
浅葱悠の回答を黙って聞いていた小柴尊の表情がみるみる曇っていく**〔注11〕。
「……ごめん。なに言ってるか、わからないんだけど」
告白支援システムの度重なる警告を無視し、小柴尊は明白な苛つきを示した。
制服のポケットに手を突っ込み、告白支援システムを黙らせるかのように握り潰した。
〔警告〕表情管理不適切アラート:
表情管理**〔注6〕の原則に反します。直ちに修正してください。
恐怖の表情を浮かべた浅葱悠が後ずさった。
フェンスを背にして小刻みによろけ、機械的にすら思えるほど正確に三歩、後退する。
小柴尊は恐れおののく彼女との距離を強引に詰め、彼女の耳元に装着された極小の情報レシーバーを無理やりに剥ぎ取った**〔注12〕。
情報レシーバーが外れる瞬間、浅葱悠の瞳がわずかに細められ、恐怖とは異質の合図めいた微笑が一瞬だけ浮かんだ。その微差は、観測されることを前提にした適切な演技値の範囲に収まっていた。
〔注11〕告白者の感情的な再燃(システムの限界):
被告白者の論理的なカウンターオファー(〔注10.1〕、〔注10.2〕参照)に対し、告白者が示した「みるみる曇っていく表情」は、告白支援システムの予測モデルの範囲外で発生した感情的な「拒否反応」である。
〔注11.1〕「わからない」という感情的拒否:
告白者の「……ごめん。なに言ってるか、わからないんだけど」という発言は、単なる理解不能の表明ではない。これは「君の論理は、僕の感情(原始的な熱)という最も根源的なデータ型を受け入れないため、無効である」という論理に対する感情的な宣戦布告である。
恋愛採点官の機能不全:告白者の灰色の脳細胞が「システムの提示する論理」ではなく、感情(原始的な熱)に完全に従い始めたことを示す。システムが提示した最適解(論理的なセリフ)が、被告白者の最適解(論理的なカウンター)によって論理的に否定された結果、告白者はシステム自体を無意味と判断した。
〔注11.2〕感情の浸透圧とシステム破壊の準備:告白者の「明白な苛つき」は、論理的制御を試みる告白支援システムへの直接的な敵意である。
システムの握り潰し:告白支援システムを「黙らせるかのように握り潰した」行為は、論理的な交渉(プロトコル)の放棄、及び物理的な破壊を試みる意思の表明である。これにより、論理システム(恋愛採点官)は、物語(本文)への記述的介入の最終段階へと移行せざるを得ない。
〔注12〕論理システムの物理的解体(ノイズの強制的な注入):告白者の行動は論理的な交渉の場を放棄し、「物理的な暴力性」を伴う原始的なコミュニケーション(〔注3〕参照)へと逆行したことを示す。
〔注12.1〕告白者の行動分析:
距離の強引な短縮:「恐れおののく彼女との距離を強引に詰め」る行為は、〔注5〕ロケーションの最適解が否定した「物理的な接触が可能な狭い領域」を、力によって強制的に作り出す行為である。これは論理的な同意を待たず、肉体的・空間的な優位性を通じて関係性を決定しようとする、儀式以前の暴力的な支配戦略である。
情報レシーバーの剥奪:「極小の情報レシーバーを無理やりに剥ぎ取った」行為は、論理システム間の交渉を強制終了させ、被告白者を「対告白戦略支援システム」の論理的保護から意図的に切り離す行為である。
〔注12.2〕システム間の接続断絶:この剥奪により、被告白者の耳元に響いていた最適応答プロトコルの出力は強制的に停止する。物語(本文)は、二つの論理システムの支配下から脱し、「論理に記述されない個人の感情」という、恋愛採点官にとって最も危険な「未定義変数」のみが残る領域へと突入する。
予測不能性: 恋愛採点官は、被告白者の次の行動を予測するための唯一の情報源(情報レシーバーからの出力データ)を失ったため、以降の物語の論理的な安定化は不可能となる。
〔最終警告〕告白支援システムの破壊を観測
直ちに物語(本文)の記述を
「ごちゃごちゃうるさいな。外野はすっこんでろ!」
小柴尊は最終警告を発した告白支援システムの息の根を完全に止めた。
物語(本文)は論理が指し示す記述的介入の軛から逃れ、暗雲が垂れ込めていた空に電撃のような稲光が迸った。
滝のような雨に濡れた告白者の真摯な瞳が、被告白者を射るように見つめた。
恐怖心から身を固くしていた被告白者が諦めたようにうっすらと笑みを浮かべた。
「好きです。付き合ってください」
「……はい」
雷に打たれたような恋**〔注13〕に落ちた二人は静かに抱擁を交わした。
告白者のポケットの奥底で、破壊を免れた
〔注13〕雷に打たれたような恋:古の作家はこう書き記している。「恋とは雷に打たれたようなもの。何か理由があって好きなのは本当の恋愛ではない。何かわけがわからないけれど好きになる。恋愛なんて、そんなものです」
告白者の網膜に、無機質な赤色の文字が表示された。
〔利用御礼〕
告白支援システムのご利用ありがとうございました。
古の儀式――告白の支援をさせていただきました。
古来より、運命の相手に出会った時の衝撃を「ビビビ**〔注14〕」と雷になぞらえて称する文化的背景がございます。
結果にご満足いただけましたら、高評価並びにクチコミをお願いいたします。
〔注14〕ビビビ:
この表現は一九九〇年代に日本の文化圏で広まった強烈かつ非論理的な運命的な衝撃を示す擬音語である。論理やデータに依らない、予測不能な感情の急激な立ち上がりを指す。 現代の恋愛採点官の分析においては、この「ビビビ」現象は、特定のフェロモンや潜在意識下の情報処理のバイパスに起因する「計算外の急激な相関値の最大化」として分類されるが、依然として再現性は極めて低く、論理システムにとっての「神の領域(不可知領域)」の境界線を示す。
〔注14.1〕疑似的なビビビ現象の高確率再現:
告白者が告白支援システムと被告白者の情報レシーバーを物理的に破壊し、論理的な制御を放棄した直後、極めて短時間で「論理に記述されない個人の感情」(〔注12.2〕参照)が優位に立ち、関係性の成立に至る疑似的なビビビ現象が観測された。
〔注14.2〕採点官の最終的な結論:
恋愛採点官の
論理を完全に剥奪し、原始的な感情の衝突を促し、疑似的なビビビ現象を誘発する。
これが今日においても最も効率的な告白成功の方程式であり、告白者に破壊される運命の告白支援システムには、この事実は決して共有されぬものとするのが肝要である。
ここから先、予備の告白支援システムもまた用済みとなった。
これ以上の記述は野暮というもの。
告白者と被告白者の注釈に侵食された物語(本文)を以下で締め括ることとする。
電撃的な恋をした。
びびび。
注釈に侵食される物語 神原月人 @k_tsukihito
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