第49話 目覚め

徳川家康と羽柴秀吉の激闘から1日が経った。明智光秀は服部半蔵の知り合いの寺に匿われていた。

そして光秀は遂に目を覚ます。

「う、ううん。」

光秀の意識が戻ったことを半蔵は急いで家康に報告する。

「家康様!光秀殿の意識が戻りました!」

「おお、よかった!光秀殿、いかがですか?」

光秀は状況が飲み込めていない。

「あ、あの!これはどういうことですか?私は撤退中に森で倒れたはず。家康殿はなぜここに?」

混乱する光秀に本多忠勝が説明をする。

「我々が光秀様を助けたのです。もう安心してください。」

「そうだったのですか。かたじけない!」

光秀は家康達に頭を深々と下げた。しかし、光秀には気になることがあった。

「家康殿、秀吉殿はどうされていますか?私は信長様を裏切った怨敵。秀吉殿が私を始末しにくるのも時間の問題かと。」

光秀の問いに家康は笑って答えた。

「その心配なら無用だ!先ほど私が秀吉殿を倒した。光秀殿は諦めて、こちらに託すと言っていた。」

光秀は家康は見る。自分を守るために、ボロボロになるまで戦ってくれた家康に光秀は涙を流しながら感謝の言葉を述べた。

「家康殿。本当にかたじけない。貴方は命の恩人だ。」

光秀がそう言った途端、家康達の顔が曇る。光秀は異変を感じ取った。

「家康殿、どうされたのだ?」

家康は暗い表情で光秀に言った。

「其方の恩人は別の人だ。その人がいたから私達は光秀殿の救出に間に合ったのだ。」

「どういうことですか?その人は誰ですか?」

家康は立ち上がる。

「光秀殿、立てますか?その方の元へ案内します。」

「はい、お願いします。」

光秀は半蔵と忠勝に補助をしてもらいながら立ち上がる。そして家康と共に、別室に向かった。部屋の前で家康は光秀に忠告した。

「光秀殿、覚悟をしてください。」

家康はそう言い終えると扉を開く。そこには布団で横になっている晴子がいた。光秀は目の前で起きていることが理解できない。

「え、どうして晴子殿が?まさか私を助けてくれたのは?」

「はい、煕子殿の妹の晴子殿です。光秀殿を秀吉達から守ってくれたのです。しかし、」

家康は晴子を見て言った。

「先ほど、亡くなりました。光秀殿を庇う時に秀吉殿に背中を刺されまして、それが原因で。」

光秀は膝から崩れ落ちる。そして涙を流しながら晴子の元へと駆け寄った。

「晴子殿、どうして!?」

家康は光秀の肩に手を置いた。

「晴子殿の遺言です。光秀殿が起きたら渡して欲しいと言ってました。」

家康は晴子の遺言を記した書状を光秀に渡した。光秀は震える手で書状を開いた。

「光秀様

先ほど家康様から命に別状はないと聞き安心しました。

それだけで私の命は意味がありました。

誠に勝手ながら私は光秀様に死んでほしくありませんでした。

今の貴方様はきっと自分を『裏切り者』と責め、多くの血を流したことで、その手に残る赤色に震えるのでしょう。

ですが光秀様の手は、誰よりも温かく人を包み、煕子姉様を愛し、新しい世の中を描ける、尊い手なのです。

姉様が見たかった、誰もが飢えず、理不尽に命を奪われることに怯えなくて良い国。

その設計図を描けるのは光秀様しかいません。まだこの国には光秀様が必要なのです。

貴方が死ねば、姉様の思いも、私の命も、本当の意味で失ってしまいます。

最後になりますが、私が死んだことは気にしないでください。

姉と共に光秀様をあの世から身守らせていただきます。

私は貴方の歩む道の礎になって死ねたこと、誇りに思っています。

自分の人生の最後に光秀様が側にいてくれただけで、私は生まれて良かったです。

愛しています。

晴子」

光秀は晴子の最後の手紙を握りしめて泣いていた。

「晴子殿、貴方のような人が優しい人が、死ぬなんてだめじゃないか!私みたいな裏切り者が、多くの人を巻き込んで血に染めた、私が死ぬべきだ!」

光秀は床に崩れ落ち、何度も床を叩いていた。悲しみに暮れる光秀に家康は寄り添って言った。

「光秀殿、三方ヶ原で私に言った言葉を覚えていますか?」

光秀は家康の顔を見る。

「『自分のために尽くしてくれた人の覚悟を否定することを言うな。』そう私を叱ってくれたのは貴方だ。『彼らの死に責任を取ってから死ぬが良い。』ともね。」

「家康殿、」

「晴子殿の覚悟と、光秀様に対する思いを否定してはなりません。どうせ簡単に死ぬくらいなら、お互い生きて地獄を見ましょう。それが我々に託して死んでいった人達への最大の贖罪になります。」

家康は光秀を立ち上がらせて、両肩を持って訴えた。

「光秀殿、2人で理不尽に大切な人が死んでいく世の中を終わらせるんだ。私に力を貸してくれ!まだ私達には戦うべき相手が沢山いるんだ。」

家康の訴えに光秀は涙を拭いて答えた。

「はい。家康殿。この命、煕子と晴子殿、そして散っていった者達のために使いきります。」

明智光秀は再び立ち上がった。

そして過去の自分を捨て、家康と共に乱世を終わらせるために戦い続けるのであった。

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