第22話 長篠の戦い
長篠城を徳川軍が奪還した合図の狼煙を合図に武田勝頼は合図を出す。
「全軍かかれ!織田と徳川はここで仕留める!」
武田軍は一斉に織田徳川連合軍に向かって突撃してくる。光秀も合図をする。
「総員、火縄銃を構えろ!私が合図したら撃て。」
武田の騎馬隊が近づいてくる。光秀は冷静に距離を押しはかる。
「まだだ、まだ引きつけろ。」
武田の騎馬隊が射程圏内に入った。光秀が合図を出す。
「今だ、撃て!」
光秀が合図をすると鉄砲隊が同時に発射する。しかしそれと同時に勝頼も合図した。
「総員今まだ!放て!」
武田軍も矢と火縄銃を放つ。両軍相打ちになる。
「ぐああ!」
織田軍も武田軍も死者が出る。しかし光秀達は怯まない。
「構うな!第二陣放て!」
また火縄銃が轟音をあげて武田軍に襲いかかる。
しかし、武田の騎馬隊は構わず突っ込んでくる。
「柵を壊せ!」
武田の将が怒声を放つ。織田軍の中にはその迫力でパニックになる者も現れる。
「ひいい!武田が来た!」
武田の一部の騎馬隊は柵を壊して陣内に侵入した。織田軍はあっという間に混乱する。合図もないのに火縄銃を発砲する者も現れる。
「うわああ!来るなあ!」
そんな中、秀吉が声を上げる。
「総員、侵入した武田軍を切り伏せろ!」
秀吉の声を合図に足軽達が武田軍に切り掛かる。両軍もみ合いになる。
そして後方から指揮を取る信長に伝令がくる。
「信長様、我が陣の両端から武田が攻めて来ました。」
信長は思わぬ事態にも冷静に対応する。
「家康、陣の左端に向かえ。光秀は右端じゃ。武田軍を抑え込め。」
2人は急いで向かう。家康が光秀に言う。
「光秀殿お願いします!忠勝、向かうぞ!」
「家康殿、御武運を!」
2人は別れた。そして先に辿りついたのは家康であった。目の前に武田四天王の1人、山県昌景がいた。柵を回り込もうとしていた。
「柵を回り込むぞ!徳川を叩け!」
家康も負けずと号令を出す。
「怯むな!武田軍を食い止めろ。全員ここは死守するのだ!」
家康は自ら先陣を切って武田軍に向かっていく。
声を上げる家康を昌景は見逃さなかった。
「あいつが家康か。覚悟しろ!」
昌景は家康に向かって馬を走らせる。そして槍を振りかざす。
「徳川家康、覚悟!」
しかし、横から本多忠勝が割り込んでくる。
「殿に手出しはさせん!」
忠勝は昌景の槍を弾く。昌景は慌てて体勢を立て直し、両者向かい合う。
「ほう、お前が本多忠勝か。三方原の本多忠真の息子だな。流石の風貌よ。」
忠勝は槍を前に突き出す。
「武田軍の山県昌景殿とお見受けいたす。我と一騎打ちせよ。」
昌景も歴戦の猛者。忠勝の誘いに武者震いを隠せない。
「上等、最強と名高い武勇を我に見せてみろ!」
忠勝と昌景は一斉に馬を走らせる馬上で数合打ち合う。その激しい戦いに敵味方問わずに見た者を圧倒する。
「あれが武田四天王の1人か。忠勝様相手に渡り合うとは。」
「昌景様!あの者を討ち取ってくだされ。」
そして忠勝は槍を片手に持つ。昌景も猛者。何かを察し槍を水平に構えて受けの体制を取る。
「ふん!」
忠勝は槍を思いっきり振り下ろす。昌景も受け止めようと力を込める。
「何のこれしき!」
昌景が忠勝の槍を受け止める。しかし、
「ぐ、ぐう。」
昌景が苦しそうな声を上げる。忠勝は更に力を込める。
「これで終わりだ!」
忠勝は強引に槍を振り下ろす。その圧倒的な腕力を前に昌景の防御は崩れ去り、忠勝の槍が昌景を一刀両断に切り裂いた。
「がはああ!」
昌景の体は二つに分離し馬上から落ちた。武田軍の兵士に動揺が走る。
「昌景様がやられた!バケモンだ!」
武田軍が怯んだ隙を家康も逃さない。
「総員、武田軍が怯んだぞ!1人残らず斬り伏せろ!」
徳川軍の士気は益々高揚する。
こうして徳川軍は武田軍が陣内に回り込むことを防いだ。
そして一方、明智光秀も陣の端に到着する。光秀の目の前には同じく、武田四天王の馬場信房がいた。
しかし光秀が来た時にはもう織田軍は圧倒されていた。
馬場信房が声を上げる。
「ここから回り込め!押し切るのだ!」
光秀は必死に武田軍を食い止めようとする。しかし、
「くそ、騎馬隊が早い!押されている!」
しかし暫くして信長が大声で命令する。
「全軍、武田軍はもう抑え込めない!撤退せよ!」
信長の声を合図に織田軍は柵の後ろの山をめがけて撤退を開始する。
光秀は驚きを隠せない。
「なぜ撤退するんだ!?」
そんな光秀に羽柴秀吉と秀長、そして信長の長男の信忠が駆け寄る。信忠が光秀に言う。
「父上が撤退と申しているのだ!早く撤退しますぞ!」
信忠は光秀に声をかけると2人で山を目指して撤退する。
武田勝頼はそんな織田軍を見て合図をする。
「織田が撤退したぞ!追い込め!必ず信長と家康を打ち取るのだ。」
武田軍が織田軍を追いかける。柵は全て倒され、武田軍も織田軍を追いかけ山に入っていく。
そして光秀達が山から降りきった瞬間だった。
信長の声が響きわたる。
「火矢を放て!」
信長の声を合図に山に大量の火矢が放たれる。
光秀と秀吉は慌てて後ろを見る。光秀が叫ぶ。
「待て!まだ味方が中に!」
しかしもう遅かった。山はたちまち火の海に包まれる。
「ぎゃああ!熱い、熱い!」
「味方だ!やめてくれ!」
「逃げろ!逃げろ!」
敵味方問わず山中は混乱に包まれた。秀吉はその光景に絶句する。
「武田を滅ぼすためとは言え、ここまでやるのか?」
光秀は慌てて戻ろうとする。しかし秀吉と秀長に止められる。光秀は馬上から下ろされる。
「離せ!まだ中に味方が!私の部下達がいるんだ!」
秀吉が光秀に向かって怒鳴る。
「もう間に合わぬ!諦めるのだ!」
秀長も必死に光秀を抑える。
「光秀殿、お気持ちは分かります。抑えてください!」
そんな光秀を見た信忠は光秀の頬を叩く。
「うるさいぞ!武田勝頼を討つには仕方ないのだ。父上の作戦なのだ。諦めろ。」
叩かれた光秀は信忠を睨みつける。しかし信忠は怯まない。流石は信長の息子である。
信忠は指示を飛ばす。
「秀吉、秀長はこのまま光秀を抑えよ!他に動けるものは勝頼を討つ。私に続け!」
信忠はそう言うと兵を率いて光秀から遠ざかっていた。
光秀は大声を上げながら、その後ろ姿を無力に見送るしかできなかった。
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