第8話 自由と旅立ち

 まぶしい光のあと――ふたりが目を覚ますと、そこは見知らぬ街だった。

「……ここ、どこだ?」

 シオンが寝ぼけた声でつぶやく。

「少なくとも奴隷地区じゃないな。空気がうまい」

 ミカエルがキョロキョロと辺りを見回す。

 石畳の道、立ち並ぶ店、行き交う人々。活気がある。

 どうやら異国のようだった。


「亡命成功ってやつか……俺たち、助かったんだな!」

「……というか、シオン。まず確認するべきものがあるだろ?」

「え? なに――あっ!!」

 シオンは急に慌ててカバンを開けた。

「ダイヤは!? 俺のダイヤは!? メルガさんの気まぐれで消えてたりしねえだろうな!?」

 ガバッと開いたカバンの中で、八個のダイヤがキラッと光った。

「ミカエルー!あったぁぁぁ!!おれたちのダイヤぁぁぁ!!」

「よし、まずは四個ずつだな」

 ミカエルが冷静に言うと、

「だよな!持ち逃げはしねえよな!」

 シオンは涙目で笑った。


 その後、ふたりは人生初の“まともな飯”を食べることにした。

「うまっ……!なんだこれ……味がする……!」

「そりゃ味はするだろ」

「いや、“まともな味”だよ!?」

「……言われてみれば俺も泣きそうだ」

 涙ぐみつつ肉をかみしめ、スープを飲み、パンをほおばる。

 奴隷地区では味わえなかった幸福が、そこにあった。

 ひと通り食べ尽くし、満腹になったあと、ふたりはテーブルに肘をついて語り合う。


「なあ、ミカエル。これからどうするよ?ここで別れて、それぞれ好きに生きるか?」

「そうだな……それも一つの選択肢だが……」

 シオンはしばらく天井を見つめ、そしてゆっくりと言った。

「でもよ……見ろよ、この街。俺ら、これまで奴隷地区から一歩も出たことなかっただろ?いきなりこんな都会で一人暮らしとか無理じゃね?」

「まあ……正直、それは思った」

「だろ? だったらさ……二人で組まねえか?」

 ミカエルが目を細める。


「組むって、お前……」

「お前の冷静さと俺の無鉄砲さ合わせたら、けっこう最強じゃね? 冒険もできるし、なんか事業とかも始められるんじゃね?」

「……自覚あったんだな、その無鉄砲さ」

「もちろん!」

「もちろんじゃねぇよ」

 ミカエルは苦笑しながらも、しっかりとうなずいた。

「いい案だ。二人で動いた方が絶対に成功率が高い」

「だよな!」


 シオンはさらに身を乗り出す。

「そしてさ……カルマシオ帝国の奴隷を解放する組織、作らねえか?

 武力じゃなくて、政治だ。

 賢く動いて、誰もが自由に暮らせる国を……!」

 ミカエルは少し驚いた顔で、しかしすぐに笑顔になった。

「シオン……お前、本当に無鉄砲だけど……時々、驚くほど真っ直ぐだな」

「お褒めの言葉として受け取るぜ!」

「よし、やろう。二人で、新しい世界を作ろう」

 ふたりはがっちりと手を握り合った。

 こうして、異国の街角で――

 元奴隷のふたりによる、新たな冒険が幕を開けた。

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運命を超える冒険譚 ー八つの宝石と自由への脱走劇ー 光野るい @kazu5430

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