第8話 自由と旅立ち
まぶしい光のあと――ふたりが目を覚ますと、そこは見知らぬ街だった。
「……ここ、どこだ?」
シオンが寝ぼけた声でつぶやく。
「少なくとも奴隷地区じゃないな。空気がうまい」
ミカエルがキョロキョロと辺りを見回す。
石畳の道、立ち並ぶ店、行き交う人々。活気がある。
どうやら異国のようだった。
「亡命成功ってやつか……俺たち、助かったんだな!」
「……というか、シオン。まず確認するべきものがあるだろ?」
「え? なに――あっ!!」
シオンは急に慌ててカバンを開けた。
「ダイヤは!? 俺のダイヤは!? メルガさんの気まぐれで消えてたりしねえだろうな!?」
ガバッと開いたカバンの中で、八個のダイヤがキラッと光った。
「ミカエルー!あったぁぁぁ!!おれたちのダイヤぁぁぁ!!」
「よし、まずは四個ずつだな」
ミカエルが冷静に言うと、
「だよな!持ち逃げはしねえよな!」
シオンは涙目で笑った。
◆
その後、ふたりは人生初の“まともな飯”を食べることにした。
「うまっ……!なんだこれ……味がする……!」
「そりゃ味はするだろ」
「いや、“まともな味”だよ!?」
「……言われてみれば俺も泣きそうだ」
涙ぐみつつ肉をかみしめ、スープを飲み、パンをほおばる。
奴隷地区では味わえなかった幸福が、そこにあった。
ひと通り食べ尽くし、満腹になったあと、ふたりはテーブルに肘をついて語り合う。
「なあ、ミカエル。これからどうするよ?ここで別れて、それぞれ好きに生きるか?」
「そうだな……それも一つの選択肢だが……」
シオンはしばらく天井を見つめ、そしてゆっくりと言った。
「でもよ……見ろよ、この街。俺ら、これまで奴隷地区から一歩も出たことなかっただろ?いきなりこんな都会で一人暮らしとか無理じゃね?」
「まあ……正直、それは思った」
「だろ? だったらさ……二人で組まねえか?」
ミカエルが目を細める。
「組むって、お前……」
「お前の冷静さと俺の無鉄砲さ合わせたら、けっこう最強じゃね? 冒険もできるし、なんか事業とかも始められるんじゃね?」
「……自覚あったんだな、その無鉄砲さ」
「もちろん!」
「もちろんじゃねぇよ」
ミカエルは苦笑しながらも、しっかりとうなずいた。
「いい案だ。二人で動いた方が絶対に成功率が高い」
「だよな!」
シオンはさらに身を乗り出す。
「そしてさ……カルマシオ帝国の奴隷を解放する組織、作らねえか?
武力じゃなくて、政治だ。
賢く動いて、誰もが自由に暮らせる国を……!」
ミカエルは少し驚いた顔で、しかしすぐに笑顔になった。
「シオン……お前、本当に無鉄砲だけど……時々、驚くほど真っ直ぐだな」
「お褒めの言葉として受け取るぜ!」
「よし、やろう。二人で、新しい世界を作ろう」
ふたりはがっちりと手を握り合った。
こうして、異国の街角で――
元奴隷のふたりによる、新たな冒険が幕を開けた。
運命を超える冒険譚 ー八つの宝石と自由への脱走劇ー 光野るい @kazu5430
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