Ride8 アルバイト

「……アルフレッドさんがどうかしたんですか?」


「ん!? あぁ、いや、なんでもない! なんでもないんだ……」


 やっぱり、アウラさんも……。

 い、いけないいけない! 私には帰りを待っている人が……バイ助君がいるんだから!


「あ、アウラさん! 私、応援しますから!」


「ん? な、何のことだ?」



  △



 その後、私たちは水と食べ物までいただいてしまいました。そして翌日……


「二人とも、だいぶ回復したようだな。早速で悪いんだが、宿泊代金の相談をさせてもらいたくてね」


「で、でも……私たちお金がないんです……」


 宿屋さんはふむ、と頷いて言います。


「わかっている。カストロールに捕えられていたんだから、仕方ない。でも、私も商売で店をやっている。だから代わりと言ってはなんだが……」


 アウラさんが、私の前に一歩出ました。


「……そういうことか。親切なフリをしておいて、下劣なやつめ……!」


 アウラさんの言葉を聞いて、宿屋さんは慌てます。


「い、いきなり何を……?」


「え? どういうことですか? アウラさん」


「結局、私のカラダが目的なんだろう? 正直にそういえばいいものを……!」


 か、カラダって……まさか、そういう……?


「え? ……え、本当なんですか? 宿屋さん」


「い、いや私はただ……」


「くっ……仕方ない……! だが、慰みものにするなら私だけに……」


「アルバイトをしてもらおうと思って……」


 ……アルバイト?


「……そ、そうですよね!? 宿泊代の代わりに肉体関係を強要するなんて、犯罪ですし!」


「ふ、ふん! どうせ、如何わしいことをさせるつもりだろう…!」


 宿屋さんは腕組みをして、少し不機嫌そうです。


「まったく、信用されてないな……。嫌なら、正規の料金を請求させてもらうが……」


 そ、それは困ります……。お金なんて一銭もないんだから……


「あ、アウラさん、失礼ですよ! せっかく好意で泊めてくれるというのに……」


 早くアルバイトを済ませて、元の世界にもどる方法を見つけないと……!


「む……。た、たしかに。少し疑心暗鬼になっていたようだ。すまない……」


 宿屋さんは額の汗を袖で拭いて、事情を話しはじめました。


「いや……いいんだ。実は、雇っていた按摩師あんましが突然辞めてしまってね……。今夜、宿泊客のマッサージをしてほしいんだ」


 ……マッサージ。


「お得意さんなんだ。こんな村だが、マッハドラゴン目当ての冒険者が結構立ち寄るんだよ」


「なぁんだ、そういうことでしたか。アウラさんが変なこと言うから……」


「む……」


 アウラさんはなんとなく不満そうですが、マッサージなら私にもできそうです。よくお父さんの背中を揉んでいましたから。


「それじゃ今夜、頼むよ。それまでは自由にしてて構わないから」


 宿屋さんはそう言って、部屋から出ていきました。



  △



 夜、私とアウラさんはマッサージの準備をしています。専用の仕事着があるというので、着替えたんですが……。


「……っ……!」


 マッサージ師さんが着ている、看護師の服みたいなやつに似ているんですけど……


「見慣れない服だな。しかし、丈が短すぎやしないか? 胸元も不必要に開いているし……」


 アウラさんの言うとおり、スカートの丈が短くて、押さえてないとすぐにずりあがっちゃいそうです。


「……それにこの下着……。カストロールに着せられていた布よりよほど面積は広いのに、逆に扇情的な気がするのはなぜなんだ……」


 そうなんです……。下着も面積が小さくて、角度が……。……この世界でも、男の人はこういうの好きなのかな……?


「着替え終わったかい? おぉ、二人ともよく似合っているじゃないか」


 宿屋さんは部屋に入ると、私たちの姿を見てそう言います。……なんだか嬉しそう。


「本当にただのマッサージなんだろうな?」


 アウラさんが疑わしげに聞きます。


「もちろんさ。……客次第だが……」


「ん? よく聞こえなかったぞ」


「い、いや、なんでもない。さ、こっちの部屋だ」


 私も宿屋さんが言ったことはよく聞き取れませんでした。大丈夫かなぁ……。

 宿屋さんにお客さんの部屋を案内され、アウラさんが先に入っていきました。私のお客さんは、その隣の部屋のようです。


 コンコン……


「し、失礼します……」


 部屋に入ると、男性が椅子に座ってこちらをジロリと見ます。鎧を着て、なんだか強そう……。


「……なんだ、まだガキじゃねえか。本当に嬢ちゃんで俺を満足させるマッサージができるのか?」


 そう言いながら立ち上がって、私の方に歩いてきます。背はそれほど大きくないけど、腕が太くて毛深くて、なんだか迫力があります。


「が……がんばります……」


「ち……宿屋のオヤジめ……。満足できなかったら金は払わねぇからな」


 そう言って、改めて品定めをするように私をジロジロ見ています……。


「……ほんとガキだな。ま、尻だけは立派なもんだが……」


 うぅ……。また言われちゃいました。

 男性は鎧とズボンを脱いでパンツ一枚になり、ベッドにうつ伏せになります。

 毛むくじゃらで、犬のようです。


「言っておくが、俺はマッハドラゴンとの戦いを前にしてたぎっているんだ。半端な仕事は許さねぇぞ」


 うぅ、怖いよぅ……。でも、やるしかないですよね!

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