第2話


(さて、ほぼ詰み掛けである事は認めるしか無いとして…)


 いやはや、一体どうすれば良いものやら…?

 空を見上げる。木の奥には、雨雲が見えた。人だった頃は憂鬱でしか無かったけれど…草になったせいで考えが変わったのだろうか。雨雲が嬉しくて堪らない。

 人生、どう転ぶかは案外分からない物である。…俺はもう草だが。

 

(…って、そうだよな。どう転ぶかは…分からねぇよなぁ…)


 人生は、偶然の連続である…と、どこかの偉人が言ってた気がする。

 同時に、ふぉるとぅな、が何とか?とか、べくとるぅ、が何とか?とか…確か、要するに、何かすれば多少は人生変わるぞ、的な話だった気がする。

 まぁ、そんな小難しい話はどうでも良くて、俺にとって今最も重要なのは、何かしないと、何もしないまま普通の草として人生を終える事になる、と言うことじゃなかろうか?


(いや、そうに違いない(反語))


 そうならば、ならば。

 非力な植物の身でもできることをしなくてはならない。幸い、どこぞの羅生門の下人と違って、明日飢え死にする様な身ではない。雨は降ってくれるし、ここは日も当たる。土の中の栄養も…きっとあるだろう。

 さぁ、考えねば。


(つってもなぁ…)


 この森は、異常だ。いや、俺が森を知らな過ぎるだけかもしれないが、俺は今まで、虫を一匹も見かけれていない。つまり、こう言う植物転生系あるあるで言う所の、食虫植物スタートとかは難しい。

 いや、俺はまだ生後1時間だから、偶然目に入ってないだけかも知れないんだが。

 で、似たような理由で、小動物も見かけていない。いや、動物自体を見かけてはい

る。しかし、最低サイズが鹿だったので無理だと諦めた。

 最大?

 

(キン○コン○レベルのゴリラとか、四足歩行する茶色いゴ○ラモドキとか、そんな

 んもうじゃうじゃ居るよ…)


 まぁ、考えるだけ無駄である。つまり、少なくとも現段階において、何かを食べて進化する、という道は完全に閉ざされた事になる。

 さて、ここまで来たところでようやく思考は次の段階へと移った。


(とゆーか、そもそも俺って食虫植物的な奴の仲間なのか…?)


 異世界転生あるある的なので、自分も食虫植物的な事ができると思っていたが…よく考えたら、これは無理な可能性が高い。虫とかの他の動物を栄養にしようと思ったら、寄生系の草になるか…あるいはハエトリグサのデカい版になるか、くらいだが…どちらも当然ながらそんなに多い種ではない。


 あるあるとしては…根を抜いて死体に刺す?


(いや…無理でしょ)


 流石に危険極まる。根は、植物としての生命線だ。根さえ残っていれば、上全部が食われたとしても、復活はできる。

 だが、根が抜かれたら?根が他の生物に食われたら?

 もはや、復活の余地もない。あるのは、覆しようがない死、だけだろう。やはり、平凡極まる植物として一生を生きるしかないのだろうか…?



 悩む。空を見上げると、いつの間にか夜で、しかも、夜ももう更けようとしていた。…雨雲も、近いが。

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