Hollow.
@meito1219
第1話
私が不死身になったと気づいたのは、病気を克服してからすぐだった。
ウイルス流行の報道があってから、私の家族はほとんど家から出なかったし、外部と関わることはなかった。
でも、なぜか母が罹り、父も罹り、弟も罹った。
私も罹った。私は自室にこもっているうちに家族は死んでいた。
たまたま気分がいい日だったから、誰もいなくなった街に出た。
よく散歩していた港まで歩いた。
飛び込んだ。
病気で気分が悪い日は辛くて辛くて。
どうせ家族もみんな死んだから、私だって死んでやろうと思った。
息をしたら肺に水が入ったけど、痛くはなかった。
少しずつ水面が遠のいていったけど、これでよかった。
それで死ぬつもりだった。
けど、いつまで経っても意識がぼやけることもなく、苦しくもなかった。
しばらくぼーっとしてから、陸に上がった。
肺に水が溜まって重かった。
できるだけ吐き出した。
それから死ぬのは諦めて家に帰った。
家族は自分で庭で火葬した。
もうどこにも人はいなくて、戸籍も犯罪もクソもなかった。
それから、近所で1番高いビルに登ってみた。
身を乗り出して、飛び降りた。
やっぱり傷ひとつつかなかった。
死ねなくなっちゃったのかな。
早くもそんな結論に至れた。
街に生存者がいないか探し歩いた。
どれだけ歩いても疲れることはなかった。
三日三晩飲まず食わず寝ずで歩き続けたけど、どうってことなかった。
ただ、誰もいなさすぎて気が狂いそうだった。
生存者は山のほうにいるのかもしれない。
そう思ったのは海に飛び込んでから1ヶ月くらいが経った頃だった。
高い山に登り、煙や人の影はないか探した。
案外近くに生存者が作ったキャンプのような村があった。
そこで少し過ごすことにした。
食事を出してくれるが、排泄器官が機能してないらしく、かろうじて胃までは通っても、あとはそこで腐敗するだけだった。
海に入った時の海水が残っていて、肺がかびてしまったのか、変な匂いがしたので、思い切ってエタノールを吸ってみた。
効果があったのかはわからないが、カビのような匂いはしなくなった。
ある日、いつものように村人の農作業を手伝っていると、違う地域から来たという男女が訪れた。
男が私を見るなり、話しかけてきた。
「君がレイだね?」
男は私の名前を知っていた。
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