第9話 セリナの香水:月の花
幻の香料フレーバー狩りから
十月十日後。
僕はダイヤの子供を産んだ。
その日、『月に花が咲いているかもしれない』と報道があった。
「どんな香りがするんだろう?機会があったら、香水にしたいな」
生まれたばかりの娘をだっこしながら、
僕はダイヤにそう言った。
「これも何かの縁だと思って、ベイビーの名前を、月の花にあやかりたい」
「どんな名前?」
「ゲッカ」
「それにしよう」
「香料狩りについて、そろそろ落ち着いてくれよ。俺の嫁になったんだから」
「結婚届、いつ出すの?」
「ん?もう出してきたぞ」
「ええっ?」
「いいじゃん、別に」
「うん、まぁ、いいんだけど・・・月の花がラフレシアみたいだったらどうしよう?」
「きっと美しい花だと思う。最悪、笑い話にでもしよう」
「それはいいのか・・・?」
「香料の話ばっかりだな」
「調香師の免許も今からだけど、きっと奏香師になるんだ」
「わかった、応援する」
「うん」
僕はこのあと子育てをしながら、奏香師になった。
のちに『香水界の神』と後輩たちにあがめられて
一般人に「セリナの香水」が有名になるのは・・・
少し先の話だ。
奏香師:そうこうし 猫姫花 @nekoheme_hana
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