大好きな彼女を僕は知らない

SAKURA

始まり

第0話 桜舞う日に...

」なんて言葉は、もっとキラキラした特別な人間たちのためにあるものだと思っていた。 少なくとも、僕 ―― 橋本 翼(はしもと つばさ)の人生には、無縁の響きだと信じていたのだ。






2025年、4月。

新しい元号の響きにもすっかり慣れ、地元では超エリート高校である透花大学付属高等学校に見事合格し、僕たちは高校生になった。 満開の桜が風に舞い、新しい制服に身を包んだ新入生たちが、期待と不安の入り混じった顔で校門をくぐっていく。


「おい翼! 何しけたツラしてんだよ。今日から華の高校生活だぞ?」


背中をバシッと叩かれ、前のめりになりかけた僕を支えたのは、眩しい笑顔の男だった。 青山 陽介(あおやま ようすけ)。 中学からの付き合いで、サッカー部のエース。背が高くて、爽やかで、性格もいい。

すれ違う女子たちが


「あ、今のカッコよくない?」

「かっこいいなー。私にもやってほしい!」

「キャー!」


と囁くのが聞こえる。

……神様はだ。僕のような「いたって」の顔面とスペックの人間と、彼のどこがどう違ってこうなったのか。全く見当がつかない。


「痛えな陽介。お前と一緒にすんなよ。俺は帰宅部で平穏無事に過ごすんだから」 「またまたぁ。そう言って、本当は新しい恋とか期待してんだろ?」

「興味ないね。色恋沙汰なんて、疲れるだけだろ」


僕が心底面倒くさそうに答えると、陽介は呆れたように肩をすくめた。 その時だった。


「もー! 翼ってば、またそんな可愛げのないこと言ってる!」

「……本当。翼のその鈍感さと無関心さは、高校になっても変わらないのかな」


甘い香りと心突き刺す痛みと共に、二人の少女が僕の左右に並んだ。 その瞬間、周囲の男子生徒たちの視線が、一気に突き刺さるのを感じる。


右側に立ったのは、姫野 萌香(ひめの もか)。

中学時代から「学校一可愛い」と評判だった美少女だ。大きな瞳に、ふわりとした茶髪、非常に短い丈のスカート。明るくて人懐っこい性格で、誰からも好かれる太陽のような存在。


左側に立ったのは、秋本 愛梨(あきもと あいり)。

萌香と並んで「二大美少女」と噂される子だ。黒髪のロングヘアが似合う、清楚で少し大人びた雰囲気。でも、僕たちに見せる笑顔はとても柔らかい。


二人とも中学からの腐れ縁で、なぜか僕と陽介のグループによく居座っている。


「なんだよ二人とも。高校初日から派手だな」

「派手ってなによ! せっかく翼と同じ高校に入れたんだから、もっと喜んでよ」


萌香が頬を膨らませて抗議してくる。その距離が近すぎて、僕は思わず身を引いた。

周りからの視線が強い....。


「そうだよ翼。……私たち、クラスも離れないといいけど」

愛梨が上目遣いで僕を見る。その瞳の奥にある光に、僕は気づかないふりをして視線を逸らした。


「ま、クラスが違っても昼飯くらい一緒に食えばいいだろ」

「そういう問題じゃないの!」

「……翼のバカ」


二人の美少女に同時に睨まれ、僕は溜息をつく。

一方、陽介がニヤニヤしながら

「お前、本当贅沢だよな」

と小声で言ってきたが、何のことだかさっぱり分からない。

それどころか周囲からの突き刺すような目線が怖い。もはや恐怖でしかない。



僕はまだ、知らなかった。

この平穏な日常が、どれほど奇跡的なバランスで成り立っているのかを。

そして、僕に向けられている「」、「」、「」の正体を、僕はまだ何ひとつ知らない。



これは、2025年の春から始まる、と、の、

長く複雑な恋の物語。













〈あとがき〉

読者の皆様こんにちは。作者のSAKURA(サクラ)と申します

記念すべき初投稿、初話です!

これから長編の恋愛小説がスタートしていきます

2日程度の定期的に投稿していきますので、是非楽しんで読んでいただけると幸いです

これからよろしくお願いいたします

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