生成AIには創れない作品はあるのかという思考実験を、ポ○モンの技名、俳句、小説を例に取り、対話形式で問答する小説である。何やら妖しげな百合小説の体を取っているのだが、登場人物の名前は、どっちも「D野佐浦錠」である。どういうことだ。だが何だか妙にエロい。名前がこんななのに。
で、肝心の思考実験だが、先輩のD野佐浦錠さんの方が悉くAIでも理論上は創れると論証していく。かなり無茶なロジックだが、何となくそうかなという気になってしまうのは作者の力量(力業?)である。期せずしてこんなの生成AIには書けなくね? という気にさせるのだが、それは一旦置いておく。
最後の最後、先輩に論破されっぱなしだった主人公の方の「D野佐浦錠」さんの方が(ああ、ややこしい)、実はこの小説そのものが彼女の記述であり、そしてこの小説全体こそが「生成AIには論理的に不可能な論理」で書かれている小説だと明かす。そのロジックはネタバレになるので明かせないが、今度こそ「なるほど! これはAIには無理だわ!」と納得の論理(非論理!)が展開される。ただこの論理展開はちょっとばかりややこしくて、人によっては「何言ってんだかわかんねえよ、この野郎」と暴れるかもしれない。だが落ち着いて前半を読み返し、その上で最終話を読めばその論理の見事さはわかるはずだ。伏線はしっかりと配されている。(ただしこのロジックの前提が現実の生成AIに当てはまるかには、疑問の余地があることも一応付記しておく)
どうしてもわからなかったら、もう百合小説として楽しんでほしい。実はその描写もよく書けているのだ。名前をのぞいて。
近年、生成AIが良くも悪くもなにかと話題になります。
本作は、そのAIによって文学の未来がどうなるか、二人の女子大生が熱く語り合うという物語です。
二人は先輩と後輩なんですが、とにかくその関係性が尊いです。生成AIに関して肯定派と否定派に分かれて議論するのですが、激しい言い合いになるわけではなく、終始穏やかに会話が進んでいき、尊い百合を存分に堪能することができます。
肝心のAIについての話題も、あるゲームの技の名称の話、ハイコンテクスト化する俳句の話、シンギュラリティが訪れた先の小説の話、と多方面に及んでいて読んでいて飽きません。
また、どれも鋭い分析で、たしかにこういう未来が来るかも……と思わされる内容でした。
これからの社会で、おそらくAIと無縁の生活をするのは不可能です。
AIに対してどのような感情を持つにせよ、どう付き合っていくかを考えることはよりよく生きていこうとする上で重要なことでしょう。
自分の今後の人生やAIについて考え直すきっかけを与えてくれた素晴らしい作品でした。是非ご一読を。