第11話 合コン
珍しくアイツ以外の友人と外で食事をすることになった。相手は俺が大食いなのを知っていたのでボリューミーな大衆食堂に連れていってくれた。メニューを見て山盛り唐揚げ定食に決めた俺はさっさと注文をして相手が悩んでいるのを眺めていた。
「お前、なんで即決できたんだよ」
「さあ?美味そう!ってなったから?」
メニューにある写真を見て一番お腹が膨れそうだと思ったのも一つある。しかし、それは俺が大食いだからできることであり、普通はできないのだろう。相手は俺から見れば少食で細い。もう少し食べたら良いのに、とは思う。言わないけど。
「ところで水翔は元気か?」
「水翔?あぁ、元気だよ」
「モテてるんだろ?」
「まあまあ」
アイツは初見では怖がられることもあるが、基本的にすぐに打ち解ける。コミュニケーション能力が高いのだろう。
「で?そんなことを聞きたくて呼んだわけじゃないだろ?」
「おう。な、今度合コンやろうぜ」
ようやくメニューが決まったらしく、おばさんに注文した相手は少し身を乗り出した。
「合コン?」
「そ!俺と水翔と大星で!」
「え、ヤダ」
相手はぱかっと口を開けた。そのタイミングで山盛り唐揚げ定食がやってきた。割り箸を割って手を合わせる。
ほくほくの唐揚げを一つとって口に運ぶ。歯を入れればじゅわりと肉汁が溢れ、肉をさいていく。やば、美味い。
食べかけの唐揚げを皿に戻してご飯を口に入れる。これは白米に合うちょっと濃いめの下味だ。白米は甘くて粒立っている。これは無限ループだ。
そばにあった小鉢にあった白菜の漬物に手を伸ばす。口に入れれば唐揚げの油をまるごとさらっていった。次に端で鎮座していたみそ汁を口に入れる。具はない。ほうっと息を吐くほど安心する味だった。
なるほど、唐揚げを中心にご飯、漬物、みそ汁を回るコースのようだ。ちゃんと考えられている。
「ほんっと美味そうに食べるよなぁ」
「ん?」
唐揚げを口に入れてご飯を詰め込んでいたら相手はそう言ってじっと俺を見ていた。
「お前、そこまで大きくないのによく食べるな」
「うるひゃいな」
ごくんと飲み込んで文句を言う。身長が伸びなかったのは仕方ないことだ。
「でさ。話を戻すけど。合コン、数合わせだと思えば良いって!俺がおごるし二人分!」
「……ちゃんと食べ放題のところを選べよ?じゃないとすごい食費かかるぞ」
「おうよ」
結局、おごるという言葉に負けた俺は合コンに参加することになった。それをアイツに言ったら、合コン前日は立てなくなるぐらいめちゃくちゃにされた。当日はなぜか相手の女性たちが俺を少し遠巻きに見ていた。なんでだろ、と思っていたら首筋に真っ赤な花が咲いていた。アイツのせいだ。
「しばらく触んの禁止だから」
帰り道、アイツにそう言ったら少し悲しそうな顔はしていたが、どこか満足げな顔もしていた。なんでだ、分からん。
「俺にとっては大星だけで良いから」
「馬鹿言うな」
ぐっしゃぐしゃに髪をかき回してイケメンを台無しにする。さっきまでイライラしていた気持ちが薄くなったのを感じた。
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