やきにく

Pokój

保健室

ぼくたちは、消毒液のにおいが立ち込める病室のような部屋に案内された。白衣を着た養護教諭が、ぼくたちを丸い椅子に座らせた。

ここは保健室。みんな「授業つぶれてラッキーじゃね?」といった話しかしていない。そう、ぼくたちはいろいろな検査をさせられている。モルモットのように、次から次へと、いろいろな部屋を回らされる。いろいろな数値がぼくたちに紐づいていく。

身長は130センチ、体重は40キロ。これが平均とどのくらい距離があるのかは、誰も教えてくれなかった。聴力には問題無し。背骨も曲がっていない。これは良いことなのだろう。

最後に残されたのが、視力検査と色覚異常をはかる検査だった。

視力検査と色覚異常検査は、なぜか3人一組で行われる。「これ見えるかな?」と先生がランドルト環を見せて、「右!」とみんなで答える。

先生側の手間を最小限にするため、といった口実が通用したのは、それがはるか昔のことだからだ。ぼくたちはおとなになった。背が伸び、体重も増え、最近はおなかも出るようになった。ビールの飲み過ぎなのか、それともストレスのせいなのか、それともなにか病気があるからかはわからない。

とにかく、あの3人でやらせる色覚検査のせいで、ぼくは中学生活を灰色にさせられた。

クラスの中でぼくだけが、色覚異常があると言われたからだ。

「お前、頭壊れてるんとちゃう?」「あんた、色覚病がうつるから、俺に話しかけんなよ」「お前の母も父も、なんでこんな失敗作を産んだんだろうな」検査終了後、ぼくの近くにいたクラスメートは、ぼくのことを笑っていた。ぼくはあいつらのことを、嘘でも「友だち」とは呼ばない。昨日まで「友だち」だった彼らは、ぼくにとって、灰色の人間になった。

当時は遺伝とか、障害とか、そんなのはぼくたちのはるか遠くにあった。世の中に車椅子のひとがいることも、白杖を使うひとがいることも知っていた。ただ、彼らはぼくたちの視界に入ることはなかった。この学校に、「欠陥品」はぼくだけだったのだ。

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