僕が幼馴染を殺しちゃう日

猫の集会

わかっていたけど…

 僕の名前は、長谷部はせべ 真守まもる

 

 僕は、中学三年生のどこにでもいる普通の学生だ。

 

 まあ、どちらかと言えば…ぼっち寄りの普通なんだと思う。

 

 クラスでは、わりと…いやメチャクチャ大人しいオタクだ。

 

 それに比べて、僕とは対照的な幼馴染の白崎しろさき 蓮奈れんなは、とても明るく皆から親しまれた俗に言う陽キャだ。 

 

 こんな非対称な二人は、どんどん幼馴染仲間から、他人に進化しつつある。

 

 小学生までは、同じ登校班だったこともあり、蓮奈が班長で僕が副班長だったこともあり、まだかろうじて繋がっていた…そんな状態だった。

 

 だけれども、中学に入学すると…もうなんの接点すらなくなるのだ。

 

 幸いなことに、うちの両親と蓮奈の両親が仲が良いので、うちの庭でバーベキューをやるときなんかは、蓮奈もうちにきてワイワイするのだ。

 

 

 中学に入ってからは、もう僕の家に蓮奈が来ないんじゃないかって、不安にもなったが普通に笑顔でおじゃましまーすって入ってきたときは、心臓が飛び跳ねるくらいに、キタ‼︎キタ‼︎と、心の中で喜んだものだ。

 

 僕しか知らない、蓮奈のゆいつのラフな部屋着的な姿。

 

 これをみれるだけで、学校の男子たちも僕を羨むだろう。

 

 まぁでも、僕たちが幼馴染だってことを知っている人もあまりいないだろう。

 

 それを知ったところで、は?だから何?ってな状態だろう。

 

 蓮奈のことを好きだという男子は、結構いる。

 

 ライバル同士でメラメラ空気が伝わることも、多々ある。

 

 しかし、僕なんかが蓮奈と奇跡的に学校で話したとしても、だれもなんとも思わないのだ。

 

 モブは、モブなので…

 

 

 そんなモブ扱いの僕が、まさか…まさか…

 

 

 

 

 中学三年生ともなると、大体の人が部活を引退して、勉強モードに突入する。

 

 なので、基本放課後は塾がない限りは、ダラダラと教室で群れて女子会、男子会が教室のそこらで行われ…なかった。

 

 なぜか皆、さようならの号令とともにバッグを背負い、さっさと下校する。

 

 あれ?

 

 そう…なんだ?

 

 みんな学校から帰って、なにをするんだろう?

 

 僕は、もちろん大好きなパズルやゲームに没頭するんだけどさ。

 

 まあ、でも…たまに女子が放課後下駄箱のところで、友達を待っていて、たむろっていたりもする。

 

 僕は、もちろんたむろする友達もいないので、階段をのろのろと降りていた。

 

 すると、女子の声がどこからともなく聞こえてきた。

 

 

「ねぇ、蓮奈ってさ長谷部と幼馴染なんだって?長谷部ってさ、モヤモヤ族だけど見た目は、そこそこじゃない?付き合わんの?てか、付き合ったことあんの?」

 なんて声がした。

 

 モヤモヤ族?

 

 なんて思っていると、蓮奈の甲高い声が聞こえた。

 

「はあ?真守がそこそことか、マジありえないでしょ。あんなのと付き合うなら死んだ方がマシだわ」

 って。

 

 

 …

 

 聞こえてしまったから、階段をおりずらい…けど、上の方からわちゃわちゃ男子がおりてくる…

 

 でも、足が…前に進まない。

 

 

 …

 

「でさぁ、昨日よーオレがボールけって、スカッてカラぶって転んでさ、マジ笑えたー」

「みたかったわー」

 

 ギャハハ

 

 と、笑いながら陽キャ男子がおりてきて…

 

「おい、真守邪魔ー」

 と、軽くおされた。

 

「ご、ごめん…」

 陽キャに背中をおさてれ、僕は蓮奈が話しているところに到達してしまった。

 

 気まずい…が、仕方ない。

 

 身を隠すように、からだを気持ちまるめて、蓮奈の方を見ずに、そそくさと逃げるようにその場から立ち去った。

 

 そりゃ…わかっては、いたことだ。

 僕と蓮奈が釣り合わないってことは。

 

 でも、実際に直で聞いてしまうと…

 

 やっぱり傷つく。

 

 

 蓮奈の言葉が、僕の心をチクチクと傷める。

 

 チクチク、チクチク。

 

 家に帰って、僕は気が狂ったかのようにキムチを口に頬張った。

 

 チクチクするのは、キムチのせい。キムチのせいなんだって言い聞かせて、とにかく口にキムチを頬張った。

 

 

 それから我にかえり、部屋でパズルに没頭した。

 

 パズルは、かわいい白と薄ピンクと水色のかわいいキャラクターのパズルだ。

 

 蓮奈の好きなキャラクター…

 

 蓮奈の好きな…

 

 

 …

 

 

 僕は、もうすぐ完全間近だったパズルをグワーっとして、バラバラにした。

 

 

 こんなの…こんなの完成したからって…なんになるんだよ…。

 

 

 パズルは、全部バラバラにして箱にしまった。

 

 蓮奈への気持ちを封印するみたいに…。

 

 

 

 続く。

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