第52話 死霊魔導師の初護衛依頼完了と謎の○○。

「なっ、なぜ俺たちが捕まるんだよ!」


「黙ってついてこい。今回は未遂のようだが、調べはついている。色々と余罪もな」


「何を言って――くっ! こうなったら――」


 Dランクパーティーの面々は、腕の折れた者以外が暴れ始める。


 だろうね。そうくると思ってたよ。


 怯んだ隙をついて騎士たちの壁に体当たりした勢いのまま、囲いを抜けて逃げようとする。


 予想通りの展開なので、焦ることもなく足の甲を狙い撃つ。


「ヒールショット」


 五本の軌跡が狙い違わず五人の足の甲を貫いた。


「ギャッ!」

「グガッ!」


 短い悲鳴をあげ、逃走の次の一歩は地面を踏むことはなかった。


「今だ! 取り押さえろ!」


 一人に対して二人がかりで倒れた男たちに飛びかかり、呻き声を上げ制圧はあっという間に完了した。


「ご協力感謝いたします」


「いえいえ当然のことをしただけです」


「さすが英雄伯爵。お見事でした」


「英雄伯爵?」


「なんだネクロウ、王都ではそう呼ばれているのだぞ、知らなかったのか?」


 あきれ顔で、『はぁ』と長い息を吐くヘルヴィ。


「そうだよー、ヘルヴィが英雄姫でー、私が英雄姫騎士なのー」


 ふんすと鼻息荒く、腰に手を当てふんぞり返るセレス。


 知らなかった……そんな呼ばれかたとか……恥ずかしいんだが……。


 というか、知ってたなら教えてよ二人とも……。


「では、皆様、私共はこの者共を連行いたしますね」


 騎士たちは、苦笑いで俺を見てる。


 いつの間にか近くまで来ていた商隊のリーダーさんと、カルバンさんたちも『なんで知らないんだ?』って顔だ。


 そうか、パレードしたもんな。


 多くの人が知ってて当然なんだよな……。


 自分の無知で顔が赤くなるのを押さえ込みながら、ロープで拘束した五人を引きずり離れていく騎士たちの背中を見送った。


「では、少々ゴタゴタしましたが、荷物の検査も終わったようですので、皆さん進みましょうか」


 野次馬で集まってきていた商隊のみんなも持ち場に戻っていく。


「最後尾にはうちから二人向かわせるから、君たちはそのまま真ん中を頼む」


 王都内といっても、商会に到着するまでが依頼された護衛の内容だ。


 良く考えたら、ここで俺たちが抜けるわけにはいかない。


 家に帰るまでが遠足と言われるように、しっかりと目的地に商隊を送り届けるまでが護衛依頼だ。


 一組減った穴は、カルバンさんたちが先頭と最後尾を埋めてくれるようだし、気を抜かないよう、最後まで依頼をこなそう。


「わかりました」


 馬車に乗り込むとすぐに、ガタガタと石畳と車輪が音を奏でながら馬車が進み始める。


 結局、騎士たちは俺たちを迎えに来たのではなく、陛下がDランクパーティーを捕まえるために、門に配置してくれた騎士だった。


「ふりだしに戻ったな」


「そうだねー」


「考えるのは後だ、今は護衛依頼中、最後まできっちり終わるまで気を引き締めていこう」


 木箱の上に乗った時、荷物が動いたのか、ゴトン、足元から音が響いた。


 なんの音だ? 乗った衝撃で何か崩れたかな?


 そんな疑問は、すぐに消え失せた。


 石畳の隙間を車輪が通過した音と同じだったからだ。


 乗った時の衝撃で動き、ちょうどハマったんだな。


 木箱から前に視線を向けると、光の魔道具が壁と天井から光を降らせている。


 分厚い街壁を貫いたトンネルを抜け出すと、門前広場の喧騒が耳に届いた。


 大通りの遠く先に王城の尖塔が見える。


 捕まえた奴らのことも気になるけど、それは陛下たちの仕事だ。


 それよりも助けた子供たちは大丈夫かな。


 親のところに早く帰れるといいんだけど……。





 商会に到着すると、馬車から荷がどんどん下ろされ倉庫へ入れられていく。


「皆さん、最後に色々とありましたが、無事にたどり着けました。お疲れ様でした」


「ああ、今回の護衛は魔物に遭遇することもなく、楽に依頼をこなせたから、お疲れ様と言われるほどじゃなかったぞ?」


「あははは! 確かにカルバンさんの言う通りですな! では、忘れないうちに依頼完了証です」


「おっと、あまりの楽さに忘れるところだったよ、また、護衛が必要なら声をかけてくれ」


「はい確かに」


 依頼完了証を受け取った時、俺たちが乗ってきた馬車がそのまま一緒の倉庫ではなく、隣の倉庫へ入っていくのが見えた。


『ジム、もしかすると、あの馬車の荷物って擬装?』


『ちょっと、見てくる』


 気になった馬車のことをジムに任せて、俺たちは今日までの出来事や、王都の門で捕まった奴らのことで話が盛り上がった。


『中身、聖女』


『えっと、聖女?』


『そう、聖国の聖女』


『……でもこれで誰を護衛してきたかわかったけど、聖女と言えばコラプト聖国……なんでシュテルネ王国に?』


『不明』


『だよな……気になるけど、今は手が足りない』


『団長殿、手が空く』


『あ、そっか、キンダフィッカ伯爵はトリューガーを追いかけてるならジェイミーに任せれば』


『そう、問題ない』


 念話でデバンを呼んだのに、ジェイミーが戻ってきた。


 まあ、見張ってもらうんだし、どちらでも大丈夫なんだけどさ。


『あー、やっぱり主の近くは魔力が気持ちいいっすねー』


 俺の魔力と繋がってるんだから、離れていても一緒だと思うんだけど、違うらしい。


『それなら、離れてやってもらう時は、時々配置交換するようにしようか』


『そうしてくれると嬉しいっすね』


『了解。じゃあジム、聖女を頼める?』


『了解。ネクロウ様の嫁候補、しっかり護衛』


『いやいやいやいや! ジム、久しぶりの長文で何言ってるの! 二人で十分だからね!』


 いや、本当に。

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