第40話 死霊魔導師はピンチです。
「なんで止まらないんだよ!」
シュヴェールトにあったゴブリンダンジョンは、コアを確保したらスタンピードは止まったぞ!
だからここも同じだろうと、ジェイミーに先行させて、コアを手に入れてもらったのにっ!
結界に張り付こうとする魔物たちをヒールショットの連射で数を減らす。
セレスも『なんで止まらないのよー!』と、懸命に剣を振る。
大人が両手を広げ、五人は横並びになれる程広い横幅がある階段がすし詰めだ。
くそっ! この勢いで来られたらヘルヴィの結界も長くは持たないぞ!
『主ぃー、このダンジョンコア、もうマスターが登録されてるっすよー、この騒動はそのマスターの仕業っすねー、たぶん?』
そう念話を送りながら足元の影からジェイミーが戻ってきた。
「ダンジョンのマスター!? どういうこと!?」
ジェイミーの手にはゴブリンダンジョンよりひとまわり大きな水晶玉が握られていた。
『わかんないっすけど、魔物が次々と増えてるっすからねー、マスターがやらなきゃこんなことにはならないっす』
「いやいやいやいや、本当にどういうこと!? そのマスターがやってる!? じゃあその人見つけて止めさせなきゃ!」
マスターがいて、このダンジョンの魔物を増やしスタンピードを起こしたのなら、止められるのもそのマスターだけだろう。
『んー、でも主ぃー、コアのある部屋にも、近くにも人の気配はなかったっすよ? 浅い階層に冒険者はいたっすけど』
「くそっ! 助けなきゃ!」
どうすればいい……現状手が空いてるのはジェイミーだけだ。
どれほどの冒険者がダンジョンにいるのか分からないけど、ジェイミーが一人で行ってなんとかなるとは思えない。
すでにヘルヴィは三回、結界を張り直している。
そう遠くない内に魔力も底をつくだろう。
いや、あきらめるな。
使役している魔物の数も増えてきてる。
デバンとジムにも冒険者救出に向かわせてもなんとかなるはずだ。
「デバン! ジム! ジェイミーと一緒に冒険者たちを救出してきて!」
俺はヒールショットの連射速度をさらに上げ、そう叫んでいた。
『しかし主よ! 我らが抜けてはここが持ちませぬぞ!』
パリン、とまたヘルヴィの物理結界が音を立てて崩れた。
「くっ! 物理結界! ネクロウ! 結界はあと三回が限界だ!」
「俺が何とかする! だから行って!」
「ネクロウ! 剣をもう一本ちょうだい! わたしが二人分頑張ればいけるよね!」
『しかしですな! それでは本当に主たちが――』
『あーもー、分かったっす! セレスの嬢ちゃんあとで返すっすよ!』
『ジェイミー駄目、俺が渡す』
二刀流のジェイミーが剣を渡そうとするが、それをジムが遮り自分のワンハンドソードをセレスに渡した。
「ジムさん有難う! わたしやるよ!」
ジェイミーの二刀流とは比べ物にならない拙い剣技だが、わずかに結界に張り付く魔物の押し込みが弱まる。
『くっ! ならばここは任せましたぞ主よ! ジェイミー! ジム! 我らも行くぞ!』
『えっとっすねー、ま、いいっすか、行くっすよー』
『準備、万端』
何か言いたそうなジェイミーと両手に盾を装備したジムを率いてデバンが影に沈んだ。
「セレス! ヘルヴィ! 入口まで下がるよ!」
「え!? なんで!?」
「なるほどな! セレス! 下がれば外の騎士たちの協力を期待できるぞ!」
「あー! そうだよね!」
その通りだ。一階層に下りる足場の悪い階段で迎撃しなくても、入口前で迎え撃てばヘルヴィのいう騎士の手も借りられるからな。
少しずつ階段を後退すると、背後から日の光が背中を暖め始めた。
「我は出たぞ! 二人も早く!」
「うん! きゃっ!」
「セレス!」
最後の一段でセレスが足を取られ、振り上げた剣の重さと勢いで倒れた。
パリン、と最悪のタイミングで割れた結界を越え、馬程もある大きな虎、ワータイガーの鋭い爪がセレスに振り落とされる。
「させるか!」
飛びかかるワータイガーとセレスの間へ無理矢理体を差し込んだと同時に、爪がクロスした腕に食い込んだ。
「ぐあっ!」
厚手の服を簡単に貫き、腕に爪が食い込む。
レベル補正のお陰か、爪は骨で止まり、腕を失くすことにはならなかったが、吹き出すように血が服を染めていく。
「ぐっ! 痛いんだよ!」
押し返そうとするが、力のは入らない腕ではそれも叶わず、押さえ込まれてしまった。
「ネク、ロウ」
俺の背中から階段ではない柔らかな感触と、肺の空気をすべて吐き出してから出したようなセレスの呻き声が聞こえた。
爪の一撃のあと、狙った獲物が変わったことも気にしないかのように大口を開けた。
食われてっ! たまるか!
まだ自由に動かせた足でワータイガーに蹴りを入れるが動きの阻害すらできていない。
使役したレイスたちを呼ぶが、動きの遅いレイスでは間に合わない。
取り憑き体を手に入れたものも引き返して来ようとするが、間には外に出ようと押し掛ける魔物たちですし詰め状態だ。
すぐにはたどり着かないだろう。
俺が何とかするしかない。
この押さえられた状態ではヒールショットを撃つにしても、両腕が押さえ込まれていては狙いもつけられない。
迫り来るワータイガーの口からドロリとヨダレが降り注いでくる。
このまま食われるのか、今動かせる足でワータイガーの胸を蹴りあげる。
だが、その蹴りはダメージどころかワータイガーの巨体を押し戻すこともできない。
とめどなく滴り落ちるヨダレを舐めとるように、ざらついた舌が右から左へとワータイガーの口を拭う。
なんとも言えない臭い息が近距離で俺の顔にまとわりつく。
こうなったら狙いとか言ってられない。
起死回生のヒールショットで……っ! そうだ!
今まで感じたことのない魔力の流れは、まるで逆流するように足の裏に熱を持って集まって来るのを感じた。
行ける!
「ヒール――――ショットオオオオオッ!」
押し返そうとワータイガーの胸で踏ん張っていた足の裏に集まった魔力を込めて叫んだ。
――――――――――――――――――――
いつも読んでいただき感謝です。
40話目、そろそろ第一部完結に近づいて来ました。
カクヨムコン11の既定文字数も大丈夫そうですし、ここまで書けたのも、読者の皆さんが読んでくれたお陰でモチベーションも保てました。
◆本当にありがとうございます◆
そしてしつこいとは思いますが、どうか皆様の大切なお時間を少しだけ私に下さい。
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