10.テル:要るものは知識じゃなくて感情か

 アマノの声に誘われて集まってきた人々。


 その中心で、アマノは得意気にしている。


 いや、表情はいつも通りの柔らかな微笑なんだけど、かもし出す雰囲気が、「頼りにされんの気持ちいい!」感でいっぱいだ。


 あと、人々が前に進もうとしているというのも、雰囲気づくりの一端を担っている気がする。


 真っ暗な闇の中、ここにだけ光が灯っているかのようだった。


「じゃあ説明再開すんぞ!わかんねえことがあったらガンガン聞いてこい!この夜に光を取り戻そうぜ!」


「「「「おおー!!!!」」」」


 いやぁ、盛り上がりが凄い。


 アマノはやっぱり、大人数で騒いでいるのが似合う。


 賑やかな場所が、アマノの真価を引き出す。


 俺とは正反対だけれど・・・だからこそ俺にも役割ができる。


 ・・・暴走を止めるっていうね。


「野郎ども!気合いが足りねえぞー!もっと声張れんだろ!!聞かせろよおまえらの本気ってやつをよぉー!!!!」


「「「「「「「「うおおおおおおおおおあああああああぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!」」」」」」」」


 拳を突き上げて人々を鼓舞するアマノ。


 柔らかい表情と、優しい声色と、勇ましい雰囲気が混同しているけど、逆にそれが魅力的に見える。


「おいおいおまえらの本気ってやつはこんなもんか!?太陽に届くくらい気張ってみせろやぁ!!!!!!!!!!!!!」


「「「「「「「「「「「「ぐおおおおおおおおああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁあああぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!」」」」」」」」」」」」


 ・・・。


 ・・・最後怪獣みたいになってないかな?


 ていうかだんだん人が増えてる。


「やればできるじゃねえか!よおし今の感じでもういっちょ―――」


「はいはい、そこまでそこまで」


 俺は手を叩きながらアマノの静止に入った。


「ちょ、テル!いいところで―――」


「まあ、気合いを入れるのは悪いことではないけどね。気合いを入れることが目的になってないかな?」


「あ。ぬ。ぐ・・・」


 大きく膨らんでいたアマノの雰囲気がしぼんでいく。


「今やるべきことは?」


「カーバイドライト作るための説明・・・」


「うん、その通り。これはアマノにしかできない。頼めるかな?」


「お。おうよ!へへっ!あたしにしかできないもんな!任されたぜ!」


 アマノの雰囲気が少し柔らかくなる。


 一気に膨張したり、突き抜けたり、しぼんだり、柔らかくなったり、感情の忙しいアマノ。


 周りの人々も呼応して高ぶったりしていたけど、今は・・・何だろう、生暖かい視線を感じる?


「おやおや、なんだか父娘みたいだねえ」「でも見た目全然違わなくない?」「じゃあじゃあ!恋人同士とか!?」「年の差恋愛!いやーん!素敵ー!」


 俺には聞こえないけど、なにかひそひそ囁き合う声が聞こえる。


 まあ、悪意は感じないから、放っておこう。


 というかそもそも、この星の人類から悪意を感じたことなんて、ないけれども。


「よっし!仕切り直しだ!まずえーと!・・・どこまで話したっけ?」


「白い石、もしくは貝と、硬い木を材料にした炭が必要だってところまでだね。あと、白い石か貝を、密閉して高温で長時間焼く、というのも聞いたけど、どのくらいの温度なのかとか、どのくらいの時間なのかとかはまだかな」


 最初の方で少し原理的なものも説明してくれたけど、正直よくわからない。


「あぁオッケー!サンキューテル!じゃあ説明すっけど・・・」


 と説明しだすアマノ。


 ふむふむ・・・。


 アマノの説明は、こうだ。




 1.硬い木を石窯の中に入れて密閉し、2日ほど焚火で焼き続ける(これで炭ができる)。


 2.できた炭を使って、半日くらい白い石、もしくは貝を焼き続ける。橙色の火で焼くのが目安(これで生石灰ができる)。


 3.生石灰を石窯の中に入れて密閉し、6時間ほど焼き続ける。白色の火で焼くのが目安。




 ここまでで、たんかかるしうむ?というのができるらしい。


 うーん、そう簡単にできるだろうか?


 焚火ってずっと同じ温度にするのは難しそうだし、白色の火とか見たことないけど・・・。


 周りの人々からも、質問が飛んでくる。



「2日も焼き続けるのかい!?灰になっちまうように思えるよ!」


「普通に焼けばな!でも密閉して空気に触れさせねぇようにすりゃあ灰にならねえんだ!これ料理にも使えるかもだぜ!」



「石を焼く、という発想が凄いですね。石を焼いたところで熱くなるとしか思っていませんでした」


「だから白い石が必要なんだ!他の石だとまあ大抵は熱くなるだけだろーな!つーかおまえ石へのこだわりすげえな!」



「橙色の火、ですか・・・金属を加工する職人の所で見た火が橙色だったと記憶しておりますが・・・白色の火というのは見たことがありませんな・・・」


「めちゃくちゃ高い温度だからな!つーか目で見たら危ねーレベルだ!見てたら目ぇ潰れてるぜおまえ!」



「おぉ・・・木が光の材料に・・・ふはは!木よ永遠に!」


「おめーはなんなんだよ!」



 周囲の人々の質問にひとつひとつ回答していくアマノ。


 ときどき突っ込みも入れたりしてるけど、楽しそうだ。


 ただ・・・。


 恐らくこれは、何度も失敗する。


 アマノの知識は俺の知識の遥か先を行っている。


 だからこそ、文明の差が、牙をむく。


 そんな気がしてならない。


 ・・・まあ、それならば―――俺が支えればいいさ。

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