美少女探偵・是永旭の恋愛事件簿

🌸桜廻

1話「探偵と助手の恋は一方通行」

サクラ学園には探偵クラブがある。

その部室にて、部長である是永旭(これながあさひ)は今日も依頼が来るのを待ちながら寛いでいた。


「あー、眠い……」


太陽の光を浴びてふわぁ、とあくびを一つ。


旭は青みがかった黒髪を肩まで伸ばした端正な顔立ちの美少女だ。

探偵らしく格好はセーラー服の上にインバネスコートと帽子(正式名称はディアストーカーハット)。


「旭様!眠いのなら、膝枕をしましょうか」


そう名乗り出たのは、茶色の髪に背の高い男子生徒、犬飼夜道(いぬかいよみち)だ。

こちらも顔立ちは整っているが、その表情はなにやら興奮気味である。


「いや、遠慮しとく」

「なっ……何故ですか!?」


すぱっと断る旭に、ショックを受けたように後退りをする夜道。


「だって鼻の穴膨らませててキモいし」

「これは、旭様の感触と匂いを間近で味わえるのかもと思い、興奮しているだけです!」

「ますますキモい。夜道、頼むから一回自分を顧みてくれ」


冷たい表情でばっさりと切り捨てる旭。


「では、お茶を淹れましょうか?」

「いいよ、もう3杯飲んでるし」

「じゃあ肩を揉みましょうか?」

「いいよ、鼻の穴膨らませんな」

「な、なら!宿題を代わりにーー……」

「いいって。そんなに尽くされても困るよ」


若干、鬱陶しそうに言う旭。

夜道はしょんぼりと項垂れる。


「……はぁ」


そんな夜道に旭は小さく溜息をつき、その頭をぽんぽんと撫でた。


「いつも助かってるよ、あんがとさん」

「………!あ、旭様!」

「ど、どうしたよ落ち着け」


感激したように方を震わせる夜道に、旭は目を瞬かせる。

その手を優しくぎゅっと掴み、もう何度目かも分からないプロポーズをする。


「結婚しましょうーー今すぐに」

「断る」

「な、何故です!?僕になにか不満があるのなら言ってください!貴方の好みに全身余すところなく変えますから!」

「それが重いって言ってんだよ……おまえは恋人にするにはちょっと面倒臭すぎる」

「っ……!そんな冷たいところもかっこよくて良いっ………」


と、二人が言い合っているその時だった。


コンコン。


探偵クラブのドアがノックされた。


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