第28話


 そのあとで、アストラ、リジナ、クレア、シェラフィたちとの関係も見直さないとな。

 彼女たちがおかしくなってしまった理由は分かる。


 アストラたちは、俺が考えているよりもずっと俺に重い好意を抱いていたようなのだ。


 だから、俺が死にかけ、精神的に参ってしまった、と。

 そして厄介なのが、なぜか、四人ともに、自分に原因があるとか、責任があるとかも考えてしまっているわけだ。


 そりゃまあ、俺だって自分のミスで自分の大切な人が死にかけたのなら精神的ショックを受けるかもしれない。

 納得だ。

 けど、そうなると、次に浮かんでくる疑問はこれだ。


 なんで俺ってここまで重い好意を抱かれてんだ……?

 そんな好かれるようなことしてねぇぞ?


 人として好かれるような行動はとってきたが、異性として誤解されるようなことは一切していない。


 アプローチをかけたこともなければ、ガチ恋営業なんてした覚えもない。

 例えば、彼女たちが異性からモテなくて、俺がそういう営業をしていたのならわかる。

 しかし、四人ともにたぶん普通の感性していたら全員美少女と言われるような容姿をしていて、わざわざ俺一人に固執するようなことも普通はなさそうなのだ。


 好かれるとしても、それこそ芸能人に対する憧れのようなものならわかる。そう思われるように振舞ってきたのは事実だ。


 ただ、異性としてここまで執着されるようなことをしてきたつもりはなかったというのに……。


 まったくもう、過去の俺の大バカ者めである。どこで俺は間違えていたんだか……。

 俺が求めていたのは、俺の死を乗り越え、託された未来のために再び立ち上がる、美しくも切ない「曇りのち晴れ」な曇らせなんだ。


 というのに……。

 なのに、なんだこのジメジメっとしたものは!

 完全に立ち直れてねぇじゃねぇか! 馬鹿!


 むしろこれなら、死ななくて良かったのかもしれない。

 俺が死んでいたら、もっと酷いことになっていた可能性だってある。

 俺のあとを追って死のうとする奴までいたの……かも。


 考えただけでも恐ろしいな。

 俺が次の死に場所を見つけるまでに、この辺りはうまくやらないとな。


 とはいえ、四人との関わり方については悩む。

 俺は彼女たちに、あくまで適切な距離感を保った仲間として接してきたはずだ。

 それなのに、今の彼女たちの俺に向ける目は、恋人や伴侶……いや、それ以上に重く、湿った何かを含んでいる。


 まあでも、俺が完全復活すれば彼女たちも元に戻るだろう。

 今後、過保護になる可能性はあっても、まずはリハビリだ。

 案外、俺が元気になればケロッとしてくれるかもしれない。


 とにかく、まずは、体を戻す。それだけだ。





 そんなことを考えていた翌朝。俺の病室の扉が開いた。

 アストラ、クレア、リジナ、シェラフィの四人がそこにはいた。

 ……この四人が一緒にいるだけで、ちょっと威圧感がある。

 俺は内心びくっとしていたが、表情は英雄として冷静に視線を向けた。

 そんな時だった。先頭にいたクレアが、ゆっくりと口を開いた。


「フェイン。……今日、退院が決まったよ」


 退院か。

 それは喜ばしいことだ。

 この部屋にいる限り、自由に動くことは難しかった。

 屋敷に戻ればある程度の自由は保障されるだろう。

 これでリハビリも本格的に始められるかな?


「そうか」

「はい、師匠。教会側と話しまして……ご主人様の監視……いえ、療養は管理の行き届く屋敷の方が効率的であると結論が出ました」


 おいアストラ。今監視とか言わなかったか?

 ていうか、教会と話したんじゃなくてそれシェラフィとだけ話して決めたんじゃないか?

 ま、まあいい。監視だろうがなんだろうが、病室よりは屋敷の方が自由なはずだ。

 そう思わせてほしい。


「教会の病室では、人の出入りも多く、あなたが休まりませんわ。その点、あなたの屋敷であれば……わたくしが、あなたの汚染度とリハビリを管理できますわ」

「それはいいんだが……シェラフィはそもそも聖女としての仕事もあるだろう?」

「もしものときは休みますわ。別に、辞めてもいいですわ」

「……そ、そうか」


 圧が凄かった。俺の指摘の一切を受け付けない様子だった。ちょっぴり怖かった。

 俺はもう何も言えないよ。下手にしゃべると、俺の熱量以上の返事をされるんだもん……。

 フェイン、怖い……っ。


 だが、別にいい。シェラフィが訪問看病するということに、異論はない。


「それでは、早速ご主人様をお運びいたしますね」

「いや……リハビリも兼ねて自分で歩くつもりだ」


 ふっ、完璧な流れでの申し出。ここから俺の復活への道が始まる。

 なんて、考えていたのだが――。


「なりません」

「え?」


 リジナは美しい顔に一切の感情を浮かべないまま、俺をじっと見てくる。

 こ、怖いんですけど。

 その視線は、俺の体をいたわっているというより、まるで逃がさんとばかりに鋭い。


「ご主人様に万が一の事があっては問題です」

「だが……それでは――」

「リハビリなど不要です。あなたは、私が守り、管理いたしますから。ですから、私に全てをゆだねてください」


 管理!? 言い方、怖いんですけど……っ。

 ……助けて、アストラ!

 俺が視線を彼女に向けると、アストラはちらとリジナを睨む。

 いいぞっ。何か言ってやれ!


「リジナさん。あなただけではなく、私たち、ですよね?」


 アストラ!? どうしちゃったの!?

 彼女たちの狂気に感染しちゃったの!? くっ!?

 く、クレア! ヘルプミー!




―――――――――――

《あとがき》


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