File 14:施主ブログ「幸せな我が家」

ブログタイトル:あんずのほっこりリノベ日記

記事タイトル:【ご報告】新しいお家で、幸せな日々を始めました!

投稿者:あんず(是枝 杏奈)

投稿日時:202X年12月24日


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みなさん、こんにちは。あんずです。


前回の更新からずいぶん時間が経ってしまいましたが、お久しぶりです。


ご心配をおかけしましたが、あの古い家のことは、もうすべて終わりました。

工務店さんがとても親身になってくださり、あの土地はすべて更地にして、手放すことができました。今はもう、何も残っていません。


そして、私たち夫婦は、新しいお家に引っ越しました。

都心から少し離れた、築浅のマンションです。20階建ての最上階なので、日当たりも最高。大きな窓からは遠くまで見渡せて、とても開放的な気分になります。


もう、古い木材の匂いも、湿った土の匂いも、変な鼓動のような音も、何も聞こえません。

鉄筋コンクリートの壁に囲まれて、本当に安心しています。


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トオルは、あの家で、自分のやりたいことをやり遂げて、今はやっと自由になれたと思っています。

彼の最後のメッセージ(File 11)は、私には少し難しかったけれど、彼はあの家に隠された秘密を暴きたかっただけなんです。彼は、あの家にとらわれていた誰かを、解放してあげたかったんだと信じています。


だから、私は、彼の残したノートをすべて閉じました。

もう、古地図も、登記簿謄本も、カセットテープ(File 04)も、すべて燃やしてしまいました。

新しいお家には、過去のものは何も持ち込まない。それが、トオルとの新しい約束です。


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このマンションはとても快適です。

特に気に入っているのは、リビングの隅にある、たった一本の化粧柱です。

構造上は特に必要ないらしいのですが、デザインとして残されているそうで、とても立派です。

夜になると、その柱の根元あたりが、ほんのり暖かく感じるんです。


トオルならきっと、「この柱こそが、この家を支えている本当の核だ」って言って、目を輝かせたでしょうね。

彼は本当に、家の構造が好きでしたから。


最近、私、ちょっとした趣味を見つけました。

リビングの化粧柱の影に、時々、小さなお供え物をするんです。

飴玉とか、新しい鉛筆とか。


誰に?って聞かれますよね(笑)。


ええと、誰というわけではないんですが、新しい家で暮らす私たちを見守ってくれている小さな守り神さまがいる気がして。

私が新しいお家に来てから、ずっと、リビングの隅で私を見つめている女の子がいるんです。

髪が長くて、いつも白いワンピースを着ている、本当に可愛らしい女の子。


誰かの見間違い?って思うかもしれませんが、彼女はいつもそこにいます。

あの古い家での工事中、近隣のMさんが「誰もいないはずの二階の窓から覗き込んでいる人を見た」って言っていたけれど、たぶん、その子だったのかもしれませんね。


彼女は、トオルが開放してあげたミナミちゃんじゃないかな。

私はそう思っています。


ミナミちゃんは今、この安全なマンションの20階で、ようやく自由になって、私たち夫婦の新しい生活を見守ってくれています。

おかげで、この新しい家は、世界で一番幸せな我が家になりました。

そして、この家は、もう、誰にも壊せない。


今日も、化粧柱の影に、新しい飴玉を置いて、感謝を伝えます。


これからも、あんずのほっこり日記をよろしくお願いしますね!

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