創作落語[時皿]

狸穴亭銀六

　モノの数え方は千差万別様々ございます、中でも明治より昔の時間ってのは西洋から時計ってのが入るまでは日の長さで[明け]と[暮れ]を分けておりやして、なんでも[不定時報]と言うんだそうで。

　それを明けに6つ、暮れに6つ。それぞれ十二支の干支をあてがいやして、そこから更に4つに分けたそうですわ。今でも30分を四半時（しはんとき）と言いますな。

　一刻（いっこく）が約2時間程度でどんくれぇかと言いますと、日の変わる暮れ九（ここの）つ子（ね）を例にとりますと今で言う23時から明け1時になりやす。そこから4つに分けやして、子の3つの入りが今で言う深夜0時になりますな。そしてご存知「草木も眠る丑三つ時」なんてなぁ深夜の2時を現やしやす。

　干支の刻は子（ね）の九つから八つ七つと減っていき、四つになったら三つに行かずにまた午（うま）の九つから減っていく。なんだったら三つ二つ一つと数えりゃ良かったのにねぇ？(笑)

　そして昔の人ぁ丑三つ時より怖がった時間帯がありましてね、暮れ六つ酉（とり）の刻、逢魔（おうま）が時と言いやして、この世のモノじゃあねえのが出てきたり。または黄昏時（たそがれどき）と言いやして、今みたいにLEDの街灯なんて在（あ）りゃあしません。

薄暗く

　お前だれだと

　　誰（だれ）そ彼（かれ）(黄昏)

　なんて柄にも無ぇ俳句なんぞ読んだりしちまいましたが、昔の人ぁ暗さを恐れていたんでごぜぇやす。

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