道化の涙
閒中
道化の涙
私のことは雑に扱っても良い。
何を言っても笑いに変えてくれる。
どんな失礼な冗談も許してくれる。
それが私。
そうやって生きてきた。
そうやって自分を守ってきた。
容姿のコンプレックスは自ら面白おかしく喋り、相手に蔑ろにされても本気で怒ることはない。
好きな人にも好きとは言えず、茶化して誤魔化した。
本気で怒ると、虐められる。
本気で泣くと、引かれる。
私が自分らしくいることは周りから許されなかった。
ピエロは口の上から笑った口を描く。
でも本当にピエロが笑っているとは限らない。
嗚呼、疲れた。
だから自ら命を絶った後も、周りの人たちはこう言った。
「悩んでいるようには見えなかった。」
「相談してくれれば良かったのに。」
「あんなに明るい人がどうして。」
私の本当の顔は誰も知らない。
道化としての役割を全うした私は、幕引きとして最期に、自分の血を指に付けて口の端に笑顔を描いた。
でもそれだけだと悔しいので、目元からも血の涙を描いてやった。
勿論、中指で。
〈終〉
道化の涙 閒中 @_manaka_
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