13話

阿李猫を一掃したあと、

静寂が、公園に落ちた。


鉄の匂い、血の匂い、湿った土の匂い。

まだ喧嘩の余韻が空気に残る。


「……終わりか」


海聖が息を吐く。

瑠維は周囲を確認しつつ、眉を寄せた。


「……ユイ、どこだ」


その時、

公園の奥──薄暗い遊具の陰が、かすかに動いた。


ギッ……と鉄の柵が鳴る。


視線を向けると、

そこから“二つの影”がゆっくりと姿を現した。


ひとつは、血で真っ赤に染まったパーカーを羽織り、

足を引きずるように歩く結斗(ユイ)。


そして──


ユイの身体を支えるように寄り添う、

小柄な女の子。


瑠維と海聖は、思わず一瞬、動きを止めた。


……なんだ、この子。


近づくほどに圧倒される。


顔が、あり得ないほど小さい。

手のひらに収まりそうなほど。

その瞳は湖みたいに透き通った青色で、

月明かりを反射して淡く光っていた。


肌は、積もったばかりの雪みたいに白い。

細くて、折れそうで──

けれど結斗をしっかりと支えている。


瑠維は無意識に息を飲んだ。


「……お前が、電話の……?」


声をかけると、

女はびくっと肩を震わせ、それでも結斗の腕をぎゅっと握ったまま、


「は、はい……あの……さっきは……」


震える声で答えた。


海聖も近づきながら、眉を上げる。

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