第2話 不名誉な発言

 隣に座っているコスプレ少女――否、本物の魔王は先程まで膨れ上がっていた怒りを静め、大人しく椅子に座している。一体何を企んでいるのか不安で仕方がない。


「……」


 母が作った朝食を食べながら、横目で彼女を観察する。あの長い名は一種の冗談らしい。本名は『レア・シチュード』と言うそうだ。


 母はどこかの国の子供だと勘違いしているそうだが、俺はそれが間違いだと知っている。


 創作の世界と現実が合わさって理解するのに少々時間を要したものの、アニメオタクである俺はこの状況を吞み込むに成功した。


「お母様。この卵に包まれた食べ物は何と言うのですか……?」


「あらレアちゃん、もしかして初めて食べるの?」


「そうなんです。私、この世界に来たのは初めてでして……」


「世界って、……ふふっ。レアちゃんは風変りで面白い子ね」


「……?」


 レアと名乗る魔王の見た目は現代で言う所の、小学一年生。親に買って貰ったピカピカのランドセルが良く似合う時期。


 だからこそ、違和感は小さな子供の愛くるしさによって打ち消される。しかし彼女の年齢は見た目通りではない。


 確かめたわけではないが、悠久ゆうきゅうの時を生きているに違いない。その方がオタクとしては気分が上がるというものだ。


「ねぇアナタ。卵の上に乗っている赤いソースは何かしら?」


「アナタって誰のこと――痛っ!」


「もぅ。意地悪なんだからぁ……」


 甘ったるい声に反してこちらを見る表情は険しい。聞き返そうものならすねを強く蹴られる。


 設定に付き合えということだろう。……ちょっと待て。


 レアは見た目通りの年齢ではないが、それを知らない人は子供と認識することだろう。ということは――、


「浩司。見損なったわ」


「違う!! 決してロリコンではない!!」


「大丈夫。分かってるから」


「目を逸らさないでくれ! 俺はこんな子供を好きになったり――」


「……………………………………………………」


「――俺はロリコンです!!!!」


 今の時代は多様性。だから、ロリコンでも良いよね?


 


 

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