『another K·night/ASURA』第3話
『ASURA』
チリン、チリン。チリン、チリン。
金属製の手振りベルの音。
導かれるように、持ちビルの屋上へ。
わたしのバトルフィールド。
ナイト·ククリとの初戦···
今考えれば、泥仕合だ。
あれから、ククリを含め、9人のナイトを倒した。
今晩の10人目を倒し、最強のナイト、ブルーセーバーへ挑む。
わたしの願い。
“不能“を治す。
どんなに金をかけても、ダメだった。
愛する人間がいるのに、愛せない。
こんなつらいことはない。
心も体も、まなのすべてを愛したい。
開けた屋上。
そこにいたのは、1人の若い男。
かなり高めの位置までサイドを刈り上げ、頭頂部より後ろの位置で髪をお団子にまとめたマンバンヘア。
マンバンはうっすら笑みを浮かべていた。
おそらく、わたしも同じ表情なのだろう。
同じ臭いがする。
ナイトチルドレンの臭い。
生まれついてのナイトの素質。
潜在的な暴力性。
戦いを好み、求める。
これまでの戦いで、ナイトチルドレンと、そうではない2タイプのナイトを見てきた。
ナイトチルドレンは戦いを楽しんでいる。総じて、余裕がある。
しかし、そうではない者たちは、必死だ。自分の願いをかなえるためにもがくように、勝利をつかもうとする。
どちらが強いか。
一概には言えないが、余裕のある者に分がある気がする。
黒い球体に包まれる。
凝縮から爆発。
視界が晴れる。
ナイトに姿を変える。
マンバンも姿を変えていた。
造形が特徴的な柄を両手に持っている。
円盤状の柄頭、うねりのあるナックルガード、十字型の鍔。
インドの剣、タルワールだ。
タルワールとは一撃を加えるという意味。
柄から緑色の光刃が出現した。
幅の広い刀身。
柄からまっすぐ延びた刀身は先端に近づくにつれ、外反りになっている。
2本のタルワールを持つナイト。
ナイト·タルワールだ。
わたしは腰の背後にマウントされたビームライフルを手に取った。構え、タルワールに向けて、ビームを照射する。
タルワールがビームを避ける。
それを確認して、照射したビームを横走にさせる。
できるだけ、相手が遠のくように。
屋上の床面がビームで焼け焦げる。高速で移動するタルワールをビームで追うが、追いきれない。ビームの照射時間が限界を迎える。ビームが切れた。
ライフルのレバーを3点バーストに切り替える。
タルワールがこちらに向かって、迫ってくる。
3発間隔で速射する緑色の光弾で弾幕を張る。
タルワールが両手の光刃を円を描くように振り回し、光弾を弾きながら、向かってくる。
至近距離まで引き寄せたところで、ライフルを左手にかわし、右腰にマウントされたハンドガンを抜く。セレクトレバーを切り替える。
散弾。
ハンドガンから、散弾となった光弾を放つ。連射する。
タルワール、円を描いていた光刃を止め、急所を守る。だが、幅広の刃でも散弾は防ぎきれない。
散弾は一発、一発の威力は弱いが、ダメージは与えることができる。
タルワールが防戦となる。
散弾の連射。攻めきる。ハンドガンのトリガーを絞り続ける。
散弾が止まった。
オーバヒート?
いや、今までそんなことはなかった。ハンドガンを見ると、先端が斬られていた。
「何!」
防戦一方のタルワール。防ぐ2本の光刃とは別にもう1本の光刃が見えた気がした。
隠し腕?
ハンドガンを捨て、ライフルの銃口から緑色のビーム刃を形成させ、水平に振った。
銃剣は予想できなかったのだろう。タルワールは大きく後退して、それを避けた。
ライフルからビームを照射して、さらに後退させる。
できれば、銃剣はいざというときのために見せたくはなかった。しかし、背に腹は代えられない。ナイトの戦いはワンミス·ワンデスだ。しかも、あちらにも、不確定要素がある。長引かせてはいけない。
ケリをつけよう。
わたしは、ナイト·タルワールを左手で指差した。
「死ね」
『デスモード』
ビームライフルから合成音声が響く。
わたしのビームライフルが拡張を開始する。あり得ない展開と拡張を繰り返す。1本だった銃身が4本に。拡張に次ぐ拡張で出現したポッドのハッチが開く。開いたハッチには追撃機能を持った緑色の光弾が無数にひしめき、発射を待っている。
ナイト·ソルジャーの必殺技を発動させる。
『エンドオブワールド』
ビームライフルから必殺技の名前が、合成音声で発せられた。
「これで、終わりだ」
わたしは死のトリガーを絞った。
ライフルの全砲門が発射を開始する。4本の銃口からはビーム、ポッドからは光弾が一斉に発射される。
勝利の方程式。
一見、完全なるチート技。
しかし、この技は一度放つとその後、一切の火器が沈黙する。ハンドガンも例外ではないが、さっきそれを斬られたのだから、どっちにしろ関係ない。
ビームと無数の光弾がタルワールを強襲する。
勝った。
そう確信した矢先、タルワールに変化があった。両肩から腕が2本ずつ増えた。左右3本ずつ、計6本の腕。それぞれがタルワール剣を持っている。
6本腕のナイト。
『ASURA』
その姿は伝説の闘神、阿修羅そのものだった。
6本の腕のタルワール剣が空中のビームと光弾をなぎ払う。
エンドオブワールドは、ポッドの光弾を放ったあと、しばらく、断続的にビームを連射する。それも、6本のタルワール剣が応戦する。緑色の光刃が円を描くように舞う。
「アドベント!!」
タルワールから変化したナイト·アシュラがそう叫んだ。
アシュラの元々あった左腕の白いバングル(腕輪)が呼応して鈍く光った。
わたしの背後に衝撃が走った。
銃撃された。
わたしの両肩、右脚が緑色のビームで撃ち抜かれた。ライフルを落とし、倒れ込んだ。
どういうことだ?
回り込むように空中を移動する、3機の球体。
黒い艶消しの球体からは、1本の砲門が伸びている。砲門には照準用の丸いカメラアイが付属している。砲門は自在に動いている。
リモート式の移動砲台。
アシュラはさっき、これを召喚したのか。
わたしが言うのもなんだが、言わずにはいられなかった。
「···チートが過ぎないか?」
移動砲台の1台がわたしをロックオンした。
砲門がビームを照射した。
眉間を撃ち抜かれた。
目の前が真っ暗になった。
スマホの時計を見る。
待ち合わせの20分前だ。
思った以上に早く着いちゃったな。
スマホの画面が暗くなり、自分の顔が映った。
前髪が気になる。
待ち合わせの駅前のコーヒーショップの前。
大きなガラス窓に映った自分をチェック。
前髪を直す。
うん、完璧。
メッチャ、かわいい。
猛さん、まだかな?
カフェラテでも飲んで、待ってようかな?
いや、やめとこ。
きっと、もうすぐくるよ。
早く、会いたい。
髪ちょっと切ったの気づいてくれるかな?
きっと気づいてくれるよね。
辺りをキョロキョロ見渡す。
猛さん、早くこないかな♡
ヤバい、今、わたし、メッチャ乙女だ。
思わず、笑みがこぼれた。
第4話『樫尾 悠香』に続く
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