The Second/シェイヴテイル 第6話
『それぞれの願い』
ナイト·ショートスピア。
短槍の刺先をまっすぐ、3人に向けて、言った。
「シェイブテイルのナイト。
しかも、トリオなんて、初めてだ。
ナイトはそれぞれの願いのために戦う。
子どもが何を願うというんだ?」
シンジは、まっすぐに前を見て答えた。
「友達の命を救う。
それが願いだ」
シンジの返答を聞いて、ナイト·ショートスピアは短槍を下ろした。
「友達の命か···」
そう言って、ナイトショートスピアは突然、変身を解いた。
黒いスーツが、蒸発するように消えていく。
変身を解いて現れた男。
長身ではあるが、病的にも見えるくらいの猫背。
その男の顔は、蒼白かった。
頬がこけていた。
カーディガンを着た、なで肩の痩せ細った男。
酸素供給装置にチューブをつなぎ、カニューラと呼ばれる鼻腔から酸素を取り入れる器具を使っていた。
携帯用の酸素ボンベ。
専用のキャリーカートに入れてあった。
右手がカートのハンドルを引いていた。
反対側の左手の手首には、白いバングル(腕輪)をしていた。
「おれ、いくつに見える?」
目の前で酸素吸入する男が、3人のナイトに尋ねた。誰もそれに答えられない。
シンジには、目の前の男が自分の父親以上の年齢に感じられた。
「おれ、24歳だぜ。
見えないだろ?
おれの肺。
もう、腐ってるんだ。
おれの願い。
それは、自分の命だ」
男の体が黒い球体に包まれた。
球体は回転しながら、小さく縮む。
ズンッ!
大きな音をたてて、球体が元の大きさに膨張した。
球体の質量に潰されて、地面が大きくへこんだ。
球体がスッと消えた。
さっきの生気の無い男は、そこにいなかった。そこにいたのは、屈強な体つきの黒い怪人。
ナイト·ショートスピアが短槍を高速で回転させた。左右に回転した短槍を振り回す。光刃がブンブンとうなっている。
リーチを利用して、接近戦を警戒しているみたいだ。
命をかけた戦い。
そんなの、初めてなのに、不思議に戦いの知識が湧いてくる。それぞれの武器が、それぞれの主人へ、戦い方をレクチャーする。
シンジは不思議にコワくなかった。ナイトの姿になってから、恐怖心というものが、無くなっていた。
ナイト·ショートスピアの正体を見ても、何も感じなかった。
「ぼくたちは、戦わなきゃいけない」
シンジはポツリとつぶやいた。
ダンが思い切り、戦斧を振りかぶった。テレフォンアタックもいいところ。そして、思い切り、ナイト·ショートスピアに向かって戦斧を振り下ろした。
斧は先端に重心があるため動きが鈍く、外すとスキが大きい。
しかし、ダンの攻撃はスピードとパワーが両立していた。
ショートスピアも受けるしかなかった。短槍を持ち上げるようにして構え、短槍の柄の部分を戦斧の柄の部分に当てて、攻撃をしのいだ。
ダンが力で押し切ろうと戦斧に力を込める。ナイト·ショートスピアは肘、膝を曲げ、こらえるしかない。
柄と柄の接触している部分から火花が散っている。
チャンスだ。シンジとハルト、2人、同時に動いた。
ハルトは背後から、ナイト·ショートスピアの右脇腹をクローで斬り裂いた。
シンジは右手のサイをクルリと回転させて、逆手に持った。走り幅跳びの選手のように空中を走るように大ジャンプして、弓なりに体を仰け反らせて、その仰け反りを戻す勢いを利用して、二本のサイをショートスピアの背中に突き刺した。
勝負あった。
ショートスピアは緑色の炎を上げて燃え尽きた。燃え尽きると同時に炎が消える。何も残らずに姿を消した。
ダンとハルトが勝利の雄叫びを上げた。
心底戦いを楽しんだ、戦士の勝鬨。
チリン、チリン。
手振りベルが鳴った。
軽やかで優しい音色。
ダンとハルトの左腕に白いバングル(腕輪)が出現した。
シンジの視界だけが、真っ白になっていく。意識が遠のいていった。
第7話へ続く
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