オーッホッホッホ、ところで「いせかい」ってなんですの

「さて、いきなりすぎて質問したいことがたくさんあると思いますが、先にこれだけは伝えておきます。貴女には異世界へ転生してもらいたいのです」



 あら? わたくしは先程までお紅茶を嗜んでいましたのに、ここはどこですの?

 わたくしはいつの間にか、白のような黒のような奇妙な色をした空間にいますわ。エレガントな雰囲気を放つオーブが、話しかけて来たのも相まってなんだかクラクラしますわ……。

 とりあえず、わたくしはオーブに話しかけてみることにしましたの。


「オーッホッホッホ、面白い提案ですわね。ところで、"いせかい"ってなんですの? あと、わたくしのことはおひいさまと呼んでくださいまし」


「現代日本人で異世界の概念を知らないうえに、呼び方を指定してくるなんて変わっているね、貴女……じゃなくておひいさま」


「あら、個性を貫き通すのは今の時代大切ではなくって?」


「そうかもしれませんが……。とりあえず質問に答えると異世界は、たとえば人間が火星で生まれたーとか、竜が実在するーとか、そんな感じのここの世界とは違う世界のことです」


「なるほど? おゲームの中のような世界、という認識でよろしくて?」


「うん、まあそんな感じ。おひいさまにはそういった世界に記憶を持ったまま、人の赤子として生まれて欲しいんだ」


 何となく“いせかい”とやらのことが分かってきましたわ。恐らく、あかちゃんの頃から記憶を持っている、ということで良さそうですわね。でも、まだまだ不明なことは沢山ありますわ。


「それは何のためにですの? あと、わたくしはどんな世界の、どんな方の元に生まれますの?」


「おひいさまには、ナイル文明が発達した世界で、平民に10年間転生してもらいたいんだ。そこで、言語や文明の発達具合を一通り見てもらってレビューして欲しい。他の神に発表するためのデータとして必要なんだ」


「あら、あなたって神様でしたのね。それにしても、神もレポート発表なんて大変ですわね」


「ちょっと無礼な発言があったことは水に流すよ。今、神の間では魔力というエネルギーがある世界と 

魔力がない世界のどちらが優れているか、武力も行使するレベルで争っていてね。私のような下っ端の神はそれに巻き込まれてるって訳さ」


 そんなことで神も争うならば、人間間での争いがなくならないのも納得ですわ。


「ところで、わたくしがそれをすることによって、何かメリットはありますの? あと、わたくしが転生をしている間、こちらの世界でのわたくしはどうなりますの?」


「おひいさまが転生している間は植物状態で目覚めず、老いないようにするよ。あと、報酬は君の月給を32万から46万に上げておくよ」


「ぜひ、わたくしにやらせてくださいまし!」


 そろそろ金欠で毎日紅茶を嗜めるか怪しくなってきていたので、これはとても助かりますわ!


「はい、それじゃあ契約成立です。私の信用にかけて、きちんと契約は守るから安心してね」


「了解ですわ」



 その日、お嬢様言葉で話す一般人が異世界へと転生したのであった。







 異世界転生を知らない一般女性が、ナイル文明が発達した世界に転生するお話。

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