愛は多ければ多いほど
深々深
愛は多ければ多いほど
ぐずりぐずり、と胸の奥がざわめく。
別になんてことはないはずだった。
ただ単に、クラスメイト同士が手を繋いで歩いているのを見かけただけ。それだけ。
私の隣にも、一つ学年が上の彼氏がいて、一緒にスタバの新作なんか飲んだりしている。幸せだと思う。
でも、この感情が嫉妬じゃなくてなんだというの。
カップルの男の方は、半年くらい前に私に告白をしてきた男だった。
私は「あいにく彼氏がいるから」と断った。彼は「そう」とだけ言って、それまで通りの友達関係を続けた。
私は確かに、彼からの好意を感じ取っていた。それがLOVEからLIKEに変わったことも気づいて、それでも彼が私に好意を持っていることに、喜びを覚えていたのだ。
だって、誰でも、人から好かれるのは嬉しいでしょう?
その彼に、彼女ができた。
大丈夫、わかっている。彼の私に対するLIKEは変わらない。
私は彼の気持ちには応えられないから、だから彼が幸せになって良かったとも思う。
でも、私はやっぱり彼が取られてしまったように感じたのだ。そこにあるのは、紛れもない嫉妬だった。
私はなんとなく、愛されたときの幸せのようなものを、彼を見るたびに思い出していたんだと思う。
身勝手で、理不尽な嫉妬だった。
私は隣にいる、自分の恋人の手を握った。
「今度の日曜、映画にいこうよ」
いいね、行こう。そう言って笑う恋人の、全身から溢れる私への愛しさで、直視したくない醜い嫉妬を飲み込んだ。
飲みこんだこの嫉妬が、お腹の奥底に溜まるものだということを、私は知っている。
愛は多ければ多いほど 深々深 @Hukamishin
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます