第37話「福祉のある世界へ」
王都への旅は、七日間かかった。
街道を進むにつれ、景色が変わっていく。
田舎の風景から、少しずつ都会の雰囲気へ。
そして、七日目の朝。
「見えたぞ……」
バルドが、声を上げた。
馬車の窓から、巨大な城壁が見えてきた。
王都グランディア。
王国の中心であり、最大の都市。
「すごい……」
リリアは、目が見えないが、空気の違いを感じ取っていた。
「人の気配が、すごく多いです。魔力も、色々な種類が混じり合っている」
「王国中から、人が集まってくる場所だからな」
悠真は、王都を見つめた。
「ここで、俺たちは新しい歴史を作る」
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王都に入ると、悠真たちはカルロス卿の屋敷に案内された。
「よく来た、悠真殿」
カルロス卿が、四人を出迎えた。
「長旅だったろう。まずは、休んでくれ」
「ありがとうございます」
「明日、お前たちのために用意した場所を案内しよう。王都での活動拠点だ」
「拠点を、用意してくださったのですか」
「ああ。王家からの支援だ。存分に活用してくれ」
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翌日。
カルロス卿に案内されたのは、王都の一角にある大きな建物だった。
「ここが、福祉ギルド王都支部となる場所だ」
三階建ての石造りの建物。
広い庭があり、工房や訓練場を作るスペースも十分にある。
「立派な建物だな……」
ガロンが、感嘆の声を上げた。
「これなら、工房も作れる。弟子たちを呼び寄せれば、すぐにでも生産を始められるぜ」
「ああ。素晴らしい場所だ」
悠真は、建物を見上げた。
「ここから、俺たちの新しい挑戦が始まる」
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王都での活動は、すぐに始まった。
まず、悠真たちは王都の状況を調査した。
「戦争や事故で障害を負った人々が、どのくらいいるか」
「彼らが、どんな支援を必要としているか」
「王都の商人や職人たちと、どう協力できるか」
調査の結果、王都には多くの障害者がいることが分かった。
その多くは、貧困層に属し、社会から孤立していた。
「やはり、予想通りだ」
悠真は、調査報告書を見つめた。
「王都でも、障害者は切り捨てられている。俺たちが、救わなければならない」
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活動を開始して、一ヶ月。
福祉ギルド王都支部は、少しずつ形になっていった。
ガロンは、王都の職人たちに車椅子の製造技術を教え始めた。
「いいか、この軸受けが肝心だ。ここが狂うと、全てが狂う」
「はい、師匠」
王都の職人たちは、熱心にガロンの指導を受けていた。
リリアは、王都の薬師たちにポーション製造の技術を伝えていた。
「魔力のバランスが大切です。私のように感じ取れなくても、訓練すれば分かるようになります」
「すごい……こんな品質のポーション、見たことがない」
リリアのポーションは、王都でも高い評価を受けた。
バルドは、障害を持つ元兵士たちを訓練していた。
「足がなくても、腕がなくても、戦える。俺が証明してやる」
バルドの姿は、多くの障害者に希望を与えた。
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そして、悠真は王都の有力者たちと交渉を重ねていた。
「福祉ギルドの理念を理解していただきたい」
「障害者は、『役立たず』ではありません。適切な支援があれば、彼らも社会に貢献できます」
「それは、王国全体にとって利益になることです」
最初は懐疑的だった有力者たちも、福祉ギルドの実績を見て、考えを改め始めた。
「確かに、福祉ギルドのポーションは最高品質だ」
「車椅子も、素晴らしい技術だ」
「障害者たちが、こんなにも活躍できるとは……」
少しずつ、支持者が増えていった。
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王都での活動を開始して、半年。
福祉ギルド王都支部は、大きな成功を収めていた。
百人以上の障害者が、福祉ギルドの支援を受けて社会復帰を果たした。
車椅子とポーションは、王都中で高い評価を得ていた。
福祉ギルドの理念は、貴族や商人たちの間にも広まり始めていた。
「悠真殿」
カルロス卿が、悠真を呼び出した。
「王家から、正式な招待が届いた」
「王家から?」
「ああ。国王陛下が、お前に会いたいとおっしゃっている」
悠真の目が、見開かれた。
「国王陛下が……」
「お前の活動は、陛下のお耳にも届いている。福祉ギルドの理念を、直接聞きたいとのことだ」
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三日後。
悠真は、王城を訪れた。
謁見の間。
巨大な玉座に、国王が座っていた。
「福祉ギルド代表、悠真か」
「はい。お目にかかれて光栄です、陛下」
悠真は、深く頭を下げた。
「面を上げよ」
国王は、悠真を見つめた。
六十代の老人だが、その目には鋭い光が宿っている。
「お前の活動については、報告を受けている。興味深い取り組みだ」
「ありがとうございます」
「一つ、聞きたいことがある」
「何でしょうか」
「なぜ、お前は障害者を救おうとする。何が、お前を動かしているのだ」
悠真は、少し考えた。
そして、真っ直ぐに答えた。
「俺は、人の価値は障害があるかどうかで決まるものではないと信じています」
「ほう」
「誰にでも、何かしらの才能がある。それを見つけ、活かすことが、俺の使命だと思っています」
「それだけか」
「いいえ」
悠真は、国王の目を見つめた。
「俺は、この世界を変えたいと思っています。障害があっても、老いても、誰もが自分の価値を発揮できる社会を作りたい。それが、俺の夢です」
国王は、しばらく黙っていた。
やがて、微かに笑った。
「……面白い男だ」
「恐れ入ります」
「お前の夢は、大きい。だが、不可能ではないかもしれん」
国王は、立ち上がった。
「福祉ギルドを、王国の正式な機関として位置づけることを検討しよう。お前の活動を、国を挙げて支援する」
「陛下……」
「この国には、まだ救われていない者が大勢いる。お前の力で、彼らを救ってくれ」
悠真は、深く頭を下げた。
「必ず。この命に代えても」
---
王城を出た悠真を、バルド、リリア、ガロンが待っていた。
「どうだった、悠真」
「……俺たちは、国の支援を受けることになった」
「本当か……」
「ああ。本当だ」
悠真は、空を見上げた。
夕日が、王都を赤く染めている。
「俺たちは、ここまで来た。銀貨十枚で買われた盲目の少女と、荒れ地で始まった小さな組織が、今や王国の機関になろうとしている」
「信じられねえな……」
「だが、これで終わりじゃない。まだ、救えていない人がたくさんいる。俺たちの旅は、続く」
悠真は、仲間たちを見た。
「一緒に、行こう。福祉のある世界を、作りに」
「「ああ!」」
四人は、夕日に向かって歩き出した。
---
**一年後**
福祉ギルドは、王国全土に支部を広げていた。
王都支部、南部支部、東部支部、西部支部、北部支部。
各地で、障害者の支援活動が行われている。
元の拠点も、オルグたちが守り続けていた。
カイルは、バルドに負けないくらいの戦士に成長していた。
新しい仲間たちが、次々と加入していた。
リリアは、王国一の薬師として名を馳せていた。
彼女のポーションは、王家御用達となっていた。
バルドは、「車椅子の英雄」として、王国中に知られるようになっていた。
彼の下で訓練を受けた障害者たちが、各地で活躍していた。
ガロンの車椅子は、王国の標準装備となりつつあった。
多くの職人が、彼の技術を受け継いでいた。
そして、悠真は……
---
ある日。
悠真は、王都支部の屋上に立っていた。
眼下には、王都の街並みが広がっている。
その中を、車椅子に乗った人々が行き交っている。
「悠真さん」
リリアが、隣に来た。
「何を見ているんですか」
「街を見ていた」
悠真は、微笑んだ。
「あそこに、車椅子に乗った人がいる。あそこにも。あそこにも」
「はい。たくさんいますね」
「一年前は、一人もいなかった。だが、今は違う」
悠真は、リリアを見た。
「俺たちは、世界を変え始めている」
「はい……」
リリアの目に、涙が浮かんだ。
「私、あの日、森に捨てられました。『役立たず』と呼ばれて。もう、生きていても意味がないと思っていました」
「……」
「でも、悠真さんが来てくれました。私を買い取って、価値を見出してくれました」
リリアは、悠真の手を握った。
「悠真さんのおかげで、私は変わりました。今は、自分のことが好きです。自分の能力を、誇りに思っています」
「俺は、お前の能力を見つけただけだ。それを伸ばしたのは、お前自身の努力だ」
「でも、悠真さんがいなければ、私はここにいません。本当に、ありがとうございます」
悠真は、リリアの頭を撫でた。
「俺こそ、ありがとう。お前がいてくれたから、俺はここまで来られた」
二人は、並んで街を見下ろした。
「これからも、一緒に歩いてくれるか」
「はい。どこまでも」
風が、二人の髪を揺らした。
---
夕暮れ時。
悠真は、一人で日記を書いていた。
『今日で、この世界に来てから二年が経った。
最初は、何もなかった。銀貨十枚と、荒れ地の権利書だけ。
だが、今は違う。仲間がいる。拠点がある。王国の支援がある。
俺は、前世で叶えられなかった夢を、この世界で叶えつつある。
障害があっても、老いても、誰もが自分の価値を発揮できる社会。
それは、まだ完成していない。だが、確実に近づいている。
俺は、これからも歩き続ける。
仲間と共に。
福祉のある世界を、作るために。』
悠真は、ペンを置いた。
窓の外では、星が輝き始めていた。
「まだ、道は長い」
悠真は、立ち上がった。
「だが、俺は諦めない。最後まで、歩き続ける」
扉を開けると、仲間たちが待っていた。
バルド、リリア、ガロン、マルタ、レオン、オルグ、ハンス、ミーナ、カイル。
そして、新しく加わった全ての仲間たち。
「悠真、夕食の時間だぞ」
「今日は、祝いの席だからな。お前も来い」
「何の祝いだ」
「福祉ギルド設立二周年だろ。忘れたのか」
悠真は、笑った。
「そうだったな。行こう」
仲間たちと共に、食堂に向かう。
笑い声が、響いていた。
かつて「役立たず」と呼ばれた人々が、今は希望に満ちた顔で笑っている。
これが、悠真の望んだ世界だった。
そして、これからも、この世界は広がっていく。
福祉のある世界へ。
誰もが、自分の価値を発揮できる世界へ。
その道は、まだ続いている。
だが、悠真は知っていた。
仲間と共に歩けば、どんな道も乗り越えられると。
これは、終わりではない。
新しい始まりだ。
『異世界に福祉はありませんと言われたので、前世の知識で「最強のギルド」を作ります ~役立たずと追放された少女や老兵が、実は規格外の戦力だった件~』 えどりゅう @tarodragon
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